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子育て感謝状をもらって逆に親育て感謝状を贈りたくなった日


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記事:飯髙裕子(ライティング実践教室)
 
 
「今日まで育ててくれたことに感謝して、子育て感謝状を贈りたいと思います」
 
幸せそうな二人が並んで、二人の両親である私たちに向けて語った言葉。
その思いを綴った手紙を聞きながら涙が溢れそうだった私は、最後に近づいた娘の言葉にハッとし、背筋を正したい気持ちになった。
 
子育てをしている人、子育ての終わった人、子育てはしていない人、どんな人も、自分が生まれて親の元を離れるまで、何らかの形で育ててもらった時間があるのではないかと思う。
 
その時間がどれくらいかを振り返ってみたことはあるだろうか?
人それぞれ、その時間は違うと思うけれど、ほんの数日ということはたぶんないと思う。
 
一年365日、義務教育の9年間だけを考えても5500日余りである。
娘たちが渡してくれた子育て感謝状に記された日にちは10546日だった。
 
数字にすると改めて長い時間を一緒の過ごしたんだなぁと感慨深いものがある。
娘が生まれて成長していく過程でも、いろんなことがあり、嬉しい事や楽しい事、辛いことや悲しいこと、その時々で、一緒に考えたり、支えたりして過ぎてきた時間である。
 
子育てをしているときは、夢中で気が付かなかったことや、わからなかったこともたくさんあったけれど、娘が読み上げた手紙には、私が思っていたことをちゃんと受け止めてくれた娘の気持ちが溢れていた。
「ああ、まんざら私の子育ても失敗というわけではなかったんだな」と少し安心したのである。
 
そんな風に私は親の気持ちを考えたことがあっただろうか?
自分が親になって子育てをするまで、あまり深く考えたことはなかったように思う。
ただ、やっぱり育ててくれたことに感謝をしたのは、結婚した時だったかもしれないなという気がする。
 
それは、今親に対して思う感謝とはまた少し違う子供からの目線で見た感謝であったかもしれない。
 
自分が子供を育てることになって、子供が成長するのと一緒に私自身も成長してこられたから今は、子供と親の両方の気持ちがわかる立場になった。だから今感じるのは、若い頃よりもう少し幅広くなった親に対する感謝なのではないかと思う。
 
子供から今までの感謝を伝えられるのは、なんだか気恥ずかしいような、それでいて今までの想いが蘇り、胸が詰まるような感情の高ぶりがある。
そんな涙が溢れそうな私をハッとさせたのは、娘のこんな言葉だった。
 
「何にでも一生懸命挑戦しているママの姿は私も頑張ろうという気にさせてくれる」
 
そうなんだ。と思った。
私が自分の人生を生きている背中を娘はちゃんと見ていたんだなと。
そして私が自分らしく生きることができたのは、娘がいてくれたからでもあるということに気づいたのである。
 
子育てというのは、子供がちゃんと一人で生きていけるように見守ってほんの少し手助けをしてきたにすぎないけれど、実は逆に、私たちは親になれるように、子供に育ててもらってきたのだということに改めて気づいたのだった。
子育て感謝状をもらう親として、その親にちゃんとなれたことを感謝しなければいけないのかもしれないと背筋が伸びる思いになったのである。
 
子供というのは不思議なものだと思う。
生まれたときから一緒に過ごすことで、同じような考え方をしたり似てるところがあったりする。けれど、それぞれ別の人間であり、違うところもたくさんある。
それなのにお互いに言葉に出さない信頼関係が知らず知らずのうちに出来上がっている。
 
だからこそ、私は、子供の気持ちを聞いてあげたかったし、言葉で自分の想いを押し付けることなく、私が生きる姿を見せたかった。
そしてその想いは娘の言葉で、なんとか渡すことができたとわかって本当に子育ても一区切りついたんだなぁと実感したのである。
 
 
新しい人生のパートナーとスタートを切った娘と、今までとはまた違った関係が築けそうで、なんだか少しわくわくする。
また、新しい経験をする機会に恵まれるかもしれないからだ。
その時はまた一緒に歩いていくことができるのかなと楽しみな気がするのである。
 
付かず離れずお互いに心地よくいられる距離を保ちながら、お互いの人生を自分が満足できるように生きていけることが、今の私の一番の願いでもある。
私は私の人生を、そして娘は娘の人生を後悔することなく生きていけたら最高だなと思っている。
だから、私は娘に贈りたい。
 
私たちを親にしてくれてありがとうと感謝を込めて「親育て感謝状」を。
 
今までも、これからも私たちが親子だということに変わりがないという幸せをかみしめながら。
 
 
 
 
***
 
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2023-05-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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