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メディアグランプリ

いつまでたっても「瞑想」の仕方がわからない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:パナ子(ライティング実践教室)
 
 
やってみたいと思えば思うほどそれから遠のいていく。
私にとってそれが「瞑想」だった。
 
ヨガの先生、YouTubeの占い師、Twitterで何万人ものフォロワーを抱えるインフルエンサー……面白そうと思って近づく人がこぞって瞑想を推してくる。なんでも瞑想には科学的にも解明されている効果があるとかで心身の健康にはもってこいなんだそうだ。
 
不眠解消・睡眠の質向上、ストレスや不安の軽減、集中力アップ、感情コントロールの向上……これだけ見ても子育てで乱れがちな私の生活に何としてでも取り入れたほうがいいように感じてくる。
 
ただ、私にとって瞑想は簡単にクリアできる代物ではなかった。
「瞑想 方法」をググるとこう出る。
黙って目を閉じ体の感覚に耳を傾ける。雑念が浮かんだり感情が昂ったりしてもそれらには反応せず平静を保つ、と。私にはこの雑念が浮かばない状態に持っていくのが至難の業なのだ。
 
目を閉じ深呼吸する。そして頭を空っぽに……
(あっ、そういえば生協の注文、今日が〆切だったわ……あと箱ティッシュが切れそうなんだよなぁ後でドラッグストア行かなきゃ……晩ごはんどうしようかなぁ昨日魚だったから今日は肉か……)
いかんいかん! 今考えなくてもいい雑念ばかりが浮かんでくる。
違う違う、今そんなことは考えなくていいんだってば!
よし、もう一回。
(……いいぞさっきよりはイケそうだな……あっ! 次男のスイミング振替しとかなきゃ!!)
ダメだ、頭を空っぽにすることがこんなに難しいなんて。
こうして私は憧れの瞑想生活からかけ離れたまま、日々を過ごすのだった。
 
そんなある日、思い立って近くの温浴施設に行くことにした。
日々子供と一緒に生活するなかで湯船にゆっくりとつかる事は難しい。久しぶりに毛穴がこれでもかと開くほど熱い湯にじっくり浸かりたい。子供たちがそれぞれ幼稚園や学校に行った後、いそいそと荷物を準備して車を走らせる。施設の中は、平日の午前ということもありいい感じに空いていた。これならゆっくりできそうだ。
 
いつもより入念に洗い上げると、早速大きい湯船にじわーっと入り体をギリギリまで沈める。はあ~、身も心もほぐれる。脚や腕を存分に伸ばしながら広いお風呂を満喫する。そうだ、ここにはサウナもあるんだ。
 
サウナの建物がある屋外に出るとそこは一気に森だった。サウナに続く小道の脇に高さの違う木々が茂っている。晴れた空から降り注ぐ木漏れ日のギフトも手伝って最高に気持ちがいい。
 
サウナの扉を開ける。先客が2人ほどいたが、みんな静かに佇んでいる。私は一番端っこにひっそりと座った。
 
おぉこれは! あまり無いシチュエーション!!
実はこのサウナ、よくある密室感満載の窓なしサウナとは違い、一面がとても大きい窓になっている。その窓からさっき通ってきた森の小道が見えるのだ。素晴らしきフォレストビュー!
 
普段浴びることのない勢いのある熱気に包まれ、体中の毛穴が目覚めたように開く。数分経つとじんわり汗がにじみ出てきた。通常はあまり意識していない体を隅々まで十分に感じながら外を眺める。大きな窓の外では風で木々がそよそよと揺れている。揺れる木々の間からは相変わらず太陽の光がキラキラ反射して綺麗だ。
 
その情景をただひたすら眺めてボーっとすること数分。
 
あることに気が付いた。体からポタポタ流れ出した汗も気にならないくらい、私の思考はストップしていた。完全に「無」の状態に陥っていたのだ。
 
あれ? もしかして……!! 私、今、瞑想に近いことしてなかった!?
 
瞑想のプロがいたらそんな邪道な! と怒られるかもしれない。
目も閉じてないし、体の状態には耳を傾けるどころかこの数分は無視していたといっても過言ではない。でも結果として頭のなかが空っぽになったことだけは確かだった。脳内にクリーナーをかけたみたいにスッキリ爽快な気分を味わうことができたのだ。
憧れるだけで全然近づけなかった瞑想と顔見知りの存在くらいには慣れた気がした。
 
いったん外に出て、水風呂に入る。(くーーーっ! 冷たい!)体にシャキッとした刺激を与え、私は再びサウナに吸い込まれた。
 
すると今度はスッキリした脳内に次々とアイデアが湧いてきた。
私は今、書店のゼミを受講して毎週エッセイを書いているが、その時書こうとしていた主人公の良さをどうやって表現するか、そのことについて様々な考えが浮かんだ。
(あのセリフを際立たせたら良さそうだな……ていうかあの店主ちょっと有名人に似てたからそれも描いて……あとは私の妄想とかも入れたら、あの時の緊張感が上手く伝わるかもしれない……)
こんな感じで、フーッと勢いよく吹いたストローの先からいくつものシャボン玉が飛んでいくようにアイデアが浮かび、私の頭は軽やかに起動しだした。それがとにかく楽しかったのだ。
 
私は確信した。
きっと一旦脳内がリフレッシュしたのがよかったんだ。
本当の瞑想の仕方はまだ全然掴めていないけれど、それに近い状態を体験した気がした。
よし! サウナでのボーっと過ごす時間を「ワタシ式瞑想時間」に認定いたします!!
誰も聞いてはいないけれど、私は心の中で声高に宣言した。
 
このサウナでの「ワタシ式瞑想時間」を体験してから、少しずつ意識が変わり始めている。
 
ベストじゃなくても、ベターでよくない?
憧れの何かに完全に近づけなくても、自分なりの「代替品」を見つけたらよくない?
わからないことがあっても今困ってなければ、一旦脇に置いておいてよくない?
 
もう自分の不得意は大体わかってきている。四十を過ぎた今、図々しさも手伝って良い意味で諦めがついたということかもしれない。だからといって人生そのものにおいて諦めたということでは決してない。
 
ベストにこだわらず、小さく楽しいベターを積み上げて行こう。
そしていつの日にか、それがオリジナリティあふれる自分にとってのベストな生活になっていたら最高だ。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2023-06-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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