良縁祈願に来た神社の恋みくじに「出会い しばらくなし」と書いていた
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記事:村人F (ライティング実践教室)
「出会い しばらくなし」
恋みくじには、確かにそう書かれていた。
良縁祈願に来た神社の、恋みくじに、だ。
書く、そんなこと?
いや、大凶でならまだわかる。
だが小吉。いちおう吉だ。
それなのに「出会い しばらくなし」だと?
来た理由の全否定じゃないか!
こちとら33歳の独身男性なのに恥に耐えて一人参拝に来たのだが?
こんな迷える子羊に日本の神はなんと辛辣な言葉を投げかけてくるんだ!
そもそもおみくじは無難な文言で済ませるのが主流じゃないか!
短い文言しか書けないから誰にでも当てはまるふんわりした感じにする。
それがルールのはずだ。
この空間で「出会いなんかねーよ」って直球ストレートをぶん投げて来るのは反則だろう。
しかも恋みくじだから結構な割合が出会い目的で引いているというのに。
なんという鬼畜。人の所業ではない。
いや神の言葉だから人ではないけれど。
しかし、なぜこんなキツい一言をおみくじに記したのか。
冷静になり作成者の目線で考えてみる。
そうすると考えたくなかった都合の悪い事実も見えてきてしまう。
なぜなら、おみくじの本質は自己反省にあるからだ。
表現できる文言は1トピックにつき10文字が限界である。
ほとんど意味のあることは書けない。
だからこそ記された言葉は読み手に対し、思考を呼び起こさせる類の方がよい。
それによって意味が何倍にも膨れ上がるからだ。
この目で見ると「出会い しばらくなし」のなんと優秀なことか。
イライラの中、自分の痛い所をどんどんほじくり返してしまうのだから。
出会いがない。
33年間ずっと愛用してきた彼女ができたことのない理由である。
しかし神はおみくじを通して指摘してくる。
出会ってはいるだろうと。
その通りだ。
小、中、高、大と学校は全て共学だった。
会社にも女性はいる。
なんならプライベートで知り合った女性だっている。
僕ですら100人くらいの方と出会っている。
それでなぜ彼女ができていないのか。
こちらから全然アプローチしなかったからだ。
ずっと受け身で過ごしており、いいなと思った人がいても何もしない。
デートに誘うこともできない。
それ以前に話しかける勇気すらない。
正直、高校時代にクラスの女子と会話した記憶が指で数えられるくらいしかなかった。
つまり原因は出会いがないことじゃない。
この事実からずっと目を背けていただけだ。
しかし、おみくじは告げる。
身の程を知れと。
貴様の軟弱な態度こそが数多くの好機を見逃した真因なのだ。
その精神性を改めない限り、望む出会いなど訪れるわけがない。
思い起こせば機会はあったではないか。
これらを見送った弱気な精神。
諸悪の根源はここにある。
いい加減に目覚めよ。
「出会い しばらくなし」
このたった9文字だけでここまで盛り上がってしまった。
確かに自己反省のきっかけと考えると凄まじい威力である。
反論や文句を言おうと記憶をほじくり返すと、大したことの書いていないおみくじでも重みが付与されていく。
もう神に対して「そこまで言うなら本気でアプローチしてやるよ!」とファイティングポーズまで構える始末だ。
ここまでのモチベーションアップを呼び起こしたと考えると、恋みくじとして大成功である。
そして、ここまで考えられるからこそ昔からおみくじが愛されてきたのだろう。
人類は全て、等しく悩み苦しんでいる。
だからこそ何かにすがるため、己の運を確認しようとする。
しかし答えなど、簡単に見つかるはずはない。
血の汗を流し、脳を極限まで回転させなれば糸口すら発見できないのだ。
だから曖昧な短文と運勢をきっかけに始めるのだ。
これまでの人生の反省と、改善点の発見を。
こうしてみると恋みくじとはいえ、強力な自己啓発の材料となる。
むしろ「恋」という俗な分野だからこそ、ビジネスにも応用可能な全方位に渡って思考を広げられると言えよう。
課題である消極性は仕事でも言えたことだから。
そういう意味では、恥に耐えて良縁祈願に来た価値は十分あったと言える。
せっかくだから絵馬も書いてみる。
おみくじで焚き付けられたせいか、知人に絶対見られたくない願いが漏れ出てくる。
途中でやらかした間違いも、むしろこちらの方が本音ではないかと思えた。
書き連ねた文字たちが本心からの望みであることが筆先から伝わってくる。
そして願いを込めた絵馬を掛け誓う。
おみくじで言われたように、本気出して戦いますよと。
33歳独身男性の良縁祈願から始まる物語。
とくとご覧あれ。
***
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