メディアグランプリ

至高の梅干しを目指して


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記事:工藤洋子(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「毎年、梅干しを漬ける」
 
と聞くと、なんてまた大変なことを、と思われる方も多いかもしれない。
 
しかし、梅干しを漬けることは実はそう難しいことではない。黄色くなった梅を買ってきて、塩漬けにした後、塩もみした赤しそを加えて、土用の頃になったら、干す。3kg程度の量の梅なら、特別なコツなど必要としない。梅干しは大量に食べるものではないので、それぐらいあれば一般的な家族構成のお宅なら十分だ。
 
しかし。
 
もし、あなたが至高の梅干しを作ろうと思ったならば、話は違う。果肉は梅干しなのにしっとりふわふわ、塩味と酸味は強烈なのに食べてみるとほんのりと完熟した果実の甘味を感じる。私の思う理想の梅干しはそういう梅干しだ。
 
そのためには、数々の関門を通過しなくてはならない。なんせ目指すは至高の梅干し、何事もおろそかにしては叶わない。
 
何と言っても大切なのは、梅を選ぶことだ。
 
「梅を選ぶと言われても、お店で売ってるのを買ってくるだけやん?」
 
という人がほとんどだろうが、至高を目指すなら梅の品種にもこだわりたいところ。私の経験では、
 
「南高梅」
 
がやはり梅干しとしては最高だと思う。
 
皮はそこそこしっかりしているのに、果肉はみずみずしく柔らかい。これは実際に梅を干すときに大きなアドバンテージとなる。皮が柔らかめの品種は、どうしても破れやすい。塩漬けにしている間や、実際に梅を干す時にどうしてもキズが付いてしまう。そうなると、せっかく干すことで旨みを濃縮しようとしているのに、一番美味しい肝心のエキスが無残にも流れ出てしまうのだ。
 
なんということだ!
これでは至高を目指せない。
 
だから、品種としては梅の本場、紀州和歌山県で生まれた南高梅がやはり最高である。
 
さて、梅の品種を選んだら、次は梅自体を選別していく。
 
至高の梅干しへの道は、すべてこの選別にかかっているといっても過言ではない。なぜなら、適度に熟した黄色い梅を、出来うることなら傷む直前の黄梅を漬けるのが、一番甘味が出るからだ。
 
しかし、ここが難しい。
 
買ってきた梅ならある程度同じようなタイミングで熟れてくれるのでまだよいが、梅の木から自分でタイミングを見計らって収穫しようとすると、1本の同じ木から取った梅でも熟し具合に差がある。まだ少し青みがかった梅を待っていたら、熟した梅が腐敗の海へこぎ出してしまうかもしれない。そうなってはアウトだ。だから、梅を平たいザルに並べては熟し具合を見計らう数日を過ごさなければならない。
 
早く熟したものは先に塩漬けに回し、残りは様子を見る。梅干しの季節はそんな日々が続く。青い時点ではきれいに見えたのに熟してくると傷みが生じる場合もあるので、注意が必要だ。
 
でもそうやって様子を見ていると、ふっと梅の香りが家の2階まで立ち登ってくるようなタイミングがある。そうなると、漬けどきだ。
 
そこまで残った梅は、まさにエリート・オブ・エリート!
すべての梅の中で最高のクオリティのもののみが選抜される。プロ野球のオールスターに選ばれるより難関かもしれない。
 
そんなエリート達を次は塩責め、もとい塩漬けにする。巷では減塩が叫ばれているが、ガブガブと食べる訳ではない梅干しに特に減塩の必要を私は感じない。塩分は梅の重量に対して景気よく20%つぎ込むのが私の塩梅だ。塩は保存料でもあるので、塩が少ないとカビてしまう。エリートもカビては形無しだ。以前、18%の塩でも湿度の高い梅雨の日々が続いた年にはカビが湧いてしまった。それ以来、20%一筋である。これでカビたことは一度もない。
 
次はエリートたちに赤シソのフレーバーをまとってもらうのだが、一般的な梅干しの作り方が載っている本を見ると、たいていは赤しそを塩もみした揉みシソを塩漬けした梅に先に入れる、と書いてある。
 
しかし、私は塩漬けした梅を先に干してから、赤しそを入れることにしている。これは親戚のおばさんがやっている方法を試したらなかなかよかったので続けているやり方だ。
 
梅もシソも一緒にお日さまに当てて、夜は夜露で濡らしてという作業を三日三晩続けてから両方を一緒に漬け込む。最低でも3年、できれば5年ぐらいは置いてから食べたいところだ。塩がこなれて角が取れ、まろやかな味になる。
 
人間も、ブイブイ言わせて尖ってる若い頃より、多少年齢を重ねた方が味が出てくるものだろう。新進気鋭のエリートが管理職ぐらいに昇進すれば落ち着きも出るのと同じように、梅干しも数年かけて深い味わいにある。
 
そうなれば、見た目よし、味よし、香りよし、の三方よしで至高の梅干しの完成だ。
 
シソについては、別に後から入れたからといって、格段に味がよくなる、という話でもない。だが、梅を干す時に揉みシソも一緒に干してから漬け込むことになるので、なんだか臭みが取れている感じがする。赤シソは塩もみするとかなり強烈なニオイを放つ。少しそれが緩和したような感じが私は好みなのだろう。
 
好みといえば、義父はもっと青い梅で漬けた固い梅干しの方が好みのようだ。考えてみれば、昔の人は至高だ、なんだ、といってじっくり時間を取って梅とにらめっこすることもなかっただろう。少しでも黄色くなったら、田んぼの草取りも忙しくなる頃だし、もう梅を漬け込んでいたのかもしれないな、と思ったりする。
 
そうなると、至高の梅干し作りなんて、ただの娯楽かもしれない。
 
実際、最初にも書いた通り、こんなこだわりのやり方をしなくても梅干しはできる。しかも塩分さえ適度な濃度に保って漬ければ、そうそう失敗するということもない。
 
それでもなお、今年こそさらに至高の梅干しを、と私は願ってしまう。そんな手作りオタクは、今年も至高を目指して梅干し作りにいそしむのだった。
 
 
 
 
***
 
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2023-06-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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