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多言語を話すのに絶対的に必要なものとは?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:メッツィンガー広美(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
人間は果たして何カ国語を話せるようになるだろうか?
Google検索によると、ギネスに認定されている多言語話者(複数の言語を話す人)はなんと58カ国語!を操ったハロルド・ウィリアムズ氏というニュージーランド出身のジャーナリストだ。
 
そんな馬鹿な……と言いたくなる。
「こんにちは」を58カ国語で覚えるだけでも、もう気が遠くなる。
彼のような人は非常に稀であることは間違いないと思うが、しかし今、私はドイツで暮らし様々な人と出会う中で、「3カ国語くらいならば、操る人は決して少なくない」と感じている。
 
私は母国である日本語の他、12年に渡る海外生活の中で韓国語、中国語、英語、ドイツ語の4カ国語を学んできた。日本語を含めて5カ国語だが、その5カ国語目となるドイツ語にはドイツ在住歴8年にしてもなお、大変な苦労をしている。
どのくらいかと言えば、私には4歳の息子がいるが、彼のドイツ語レベルは私をもうすっかり追い抜き、遥か彼方。一緒に買い物に行けば、私がなかなか言えない発音を彼が店員さんに伝えてくれるといった具合だ。外出するお供として心強いとすら思っている。
 
つまり、5カ国語目を学んでいるとはいえ、私は特殊な言語センスがある人間でもなければ、どんな言語習得にも通用する必殺技があるわけでもない。
 
でも、それなりにモノにできた言語とそうでない言語の間にある「明確な違い」に気づいたので書いてみたいと思う。
もしこの記事を読んでくださるあなたが、「外国語を話したい!」、「3カ国語目以上を習得したい!」と思っているならば、お役に立てるかもしれないのでぜひ読んでみて欲しい。
 
 
私が「外国語を話せている」という感覚を手にしたのは27歳、言語は韓国語だ。
 
在日韓国人である私は、韓国国籍でありながら日本生まれの日本育ち。家でも家族とは日本語のみを使用していたので、幼いころから韓国語は全く話せなかった。
苗字を聞けば韓国人であることが分かる人も多かったので「韓国語話せるの?」の質問は「出身地はどこ?」と同じくらい頻発し、それを聞かれるたびに心の中で自分に対する違和感を味わったものだ。
 
「このままでいいのか……」の自問を長年繰り返していたが、ふと思い立ったのが26歳。
 
「会社を辞めて韓国に住んでみよう」
 
ソウルにある語学学校に通うことにしたのだが、私は行く前に帰って来る期日だけは1年間と決めていた。おそらく学校には学生たちが多い中で、26歳である私はもう若くない。(今思えば全くもっとそうではないのだが)
そんな思いから、「遊んでいる暇はない!韓国語を、韓国文化を学びにいくのだ!!」と期限を課して社会人留学を果たした。
 
その結果、どうだろう。
1年後の日本帰国前には、私は晴れて韓国人と会話を交わし、生活に不自由もなくなっていた。
 
「外国語って話せるものなんだな」と私は手ごたえを感じた。
 
当時、英語は話せなかった。少なくとも中学校、高校で6年間も勉強したのに、単語帳はもうどこが大事なのか分からないくらいマーカーで線を引き、頭に叩き込んだはずなのに、全く使い物にならない。
 
英語と韓国語はでは文法の違いもあり、日本語話者にとって韓国語の方が習得しやすいのは事実だろう。
しかし、英語を学校で学んだ6年間と韓国語を学んだ1年間では明確な差があった。
 
それは「自分が主体か?」「期限はあるか?」だ。
 
私は韓国語を学びたくて、務めてきた会社を辞めることも、収入がなくなるので安い下宿で滞在することも、全て自分で決めた。自分で決めたのだから、もうやるしかない。
さらに期限を1年だけと決めていたので、大変でもこの期間は耐えてみようという気になったし、この期間で絶対に話せるようになりたいというモチベーションにもつながった。
 
そして、この「主体性」と「期限」という二つの重要さについてはこの後も証明される。
 
韓国留学中に同じ学校で勉強していたドイツ人の主人と出会った。(遊んでる暇はない!と言っていたのに?というご指摘は真摯に受け止める)
 
結婚後は主人の仕事の都合で中国、韓国へと移り住み、その後2015年にドイツに移住。
もちろんドイツ語は全く話せなかった。
 
ドイツ語をまたゼロから学ばなくてならない。
しかし当時の私は、それほど心配はなかった。
韓国留学での韓国語習得と同様、1年の中国滞在中に日常会話レベルの中国語も学んだし、自分には言語習得が向いているのではないか?とすら思っていた。
 
しかし、そんな思いも粉々に打ち砕かれる。
 
「話せない、話せない、分からない」
 
ビザ取得のための語学学校にも通い、きちんと勉強していたのに、ドイツ人の言うことが頭の中に入って来ない。
買い物に行っても言いたいことが言えず、店員さんに「?」のような顔をされてしまう日には、心の中は大雨。
自分の考えを伝えられないもどかしさと、覚えられない悔しさ……。
分かっている風の愛想笑いばかりが上達する。
なかなか習得できない無念さが、勉強からも遠ざけた。
 
正直に言うと、私はドイツ語に興味がもてなかった。
でも生活のため語学学校に通ったが、学校に通えば話せる、その国に住めば話せる、というようなものではないことがはっきりと分かった。
さらにドイツは主人の母国であり、これまで一緒にいた他国とは異なり、私は何かと主人に任せがちで、「自分でする」ということにかまけていた。言語もそれに伴って、困ったときの主人まかせ。
 
そう。まったく主体性がなく、これから長く住むドイツには期限がなかった。
 
 
「自分が主体か?」「期限はあるか?」
これから言語習得を目指すあなたにもぜひ意識してみて欲しい。
 
私自身、もう一度ドイツ語学習に期限を設けることにした。
自分の生活を楽しむために、少しは頼れる母になるために、ドイツ語を習得したいと思う。
 
 
最後に。
これからの時代はAIが発達して、いつか言語習得が必要ない日が来るかもしれない。
でも、AIが見事な翻訳や通訳をしてくれたとしても、やはり自分の言葉で話し、伝わったときのうれしさには代えられないと思う。
 
言語習得は難しい。
しかし、自分の声で、自分の想いを、直接相手の耳に届ける。
そのときめきを、外国語習得を目指す皆さんが感じられますように。
 
 
 
 
***
 
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