子どもの「自信」を育てる確実な方法
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:メッツィンガー広美(ライティング・ゼミ6月コース)
「ママ、もう一回!」
3歳の息子の発した言葉を聞いて、私は心の中でガッツポーズをする。
「よしっ!」
彼は46個のひらがなが一つずつ小さな厚紙に書かれた通称「ひらがなカード」で遊んでいる。
私が彼に一文字ずつ提示して「これは?」と聞くと、彼はぐっと右上に目線を動かし、ひねり出すように『た!』と答えるのだ。
そんな風にしてゆっくりと46個を終えたら彼は言う。
「ママ、もう一回! もう一回!」
これを聞けば、「え、またするの?」と思う方がいるかもしれない。
でも私は子育てする中でこの言葉を聞いたとき、本当にワクワクが止まらなくなるのだ。
その理由は私が喉から手が出るほど欲しい「自己効力感」というものに関係する。
人の幸せの基準はそれぞれだ。
この記事を読んでくれているあなたは何があれば幸せだと思うだろうか?
私はずばり「自己肯定感」と「自己効力感」が要だと思っている。
この2つをそれぞれ一言でいえば、「自己肯定感」は『自分はありのままでいいと受け入れられる感覚』、「自己効力感」は『自分ならできる! と思える感覚』と言える。
もしも「幸せ」に姿形があるなら、この2つは心臓だろうと思うほど私にとっては欠かせないものである。
今日はそんな心臓部のうち「自己効力感」の育み方について、私の不思議な体験と共に書いてみたい。
私がこの言葉を強く意識し始めたのは息子を産んでからだ。
息子にどんな人になって欲しいかを考えたとき、「自分の人生を自分で決めて楽しめる人」だと思った。そうなるためには、自分には何が向いているのか、自分が本当にしたいことは何かを追求していくために、どんどん新しい世界に挑戦していくことが求められる。
そしてこの挑戦に欠かせないのが「自己効力感」だ。
自己効力感は「根拠のない自信」と言い換えると分かりやすいかもしれない。
根拠のない自信があれば、何か大きな挑戦をするときにでも「なんだかできそうな気がする」「自分は大丈夫なんじゃないか」と思い、とりあえず踏み出すことができるのだ。
一方、自己効力感がないと、「自分にはできないんじゃないか」「また失敗してしまうのではないか」と恐れ、挑戦することができない。
私は自慢ではないが、自己効力感が非常に低い。
完璧主義という仮面をかぶり、準備が完璧じゃないと始められない。始めても自分が思う通り完璧じゃないと進まない……でも仮面の下を覗けば、ただ自己効力感に欠ける自分がいるのだ、ということに気付いた。
今は、そんな自分を克服しようと努力しているが、自分を信じてあげられない自分には長年悩んできた。
そんな私が息子に「自己効力感のある子に育って欲しい!」と願うのだから、それは私が息子にラグビーを教えるほど難関だ。方法も技術も経験も才能もないものを教えるのだから。
「でも何としてでも自己効力感だけは身につけて欲しい……」
自分だけでは途方に暮れていたそんなある時、育児本で出会ったのが自己効力感を育む「モンテッソーリ教育」という教育法だ。
2016年、史上最年少の14歳2カ月でプロ将棋棋士となった藤井聡太棋士が受けていた教育方法として日本でも話題になったので、ご存知の方も多いかも知れない。
ご存知ない方のために、本当に簡単に説明すると、「モンテッソーリ教育」は今から1世紀以上も前にイタリア人医師のマリア・モンテッソーリ博士が生み出した教育法だ。
その特徴は「敏感期」と呼ばれるもの。
子どもは「ある能力」を抜群に伸ばしやすい時期があり、それを敏感期と呼ぶ。敏感期はその年齢に達すると突然訪れることが多く、敏感期に入った子どもは大人が指示しなくても集中して学び、失敗してもへこたれることなく、その能力をどんどん身につけていくという。
私もそれを体験したことがある。それはとても不思議なものだった。
3歳頃からモンテッソーリ教育では「文字の敏感期」が始まると言われる。文字の敏感期に入った子どもはスポンジが水を吸収するように文字の吸収率が抜群に良くなるということだ。
それを知った私は息子が3歳くらいのときから、とりあえず文字に触れてもらうと洗面所にひらがな、カタカナポスターを貼っていた。もちろん息子は興味がない。ちらりと目もくれず、彼には見えていないんじゃないかと思えるほど、ポスターたちは毎日毎日無視され続けていた。
でもその時は突然やって来た。
「トイレに行って来る」と言った息子が帰って来ない。そっと見に行くと、ポスターをじーっと眺めているではないか。何が大発見をしたかのように集中している。
それから彼の文字の敏感期は始まった。
トイレの度にポスターを読んで欲しいとせがみ、文字の意味が知りたくて仕方ない。「ひらがなカード」を持ってきては何度も間違いながら読み直し、それでもへこたれなかった。
そしてこの敏感期のタイミングで、あっという間に彼はひらがなを吸収し読めるようになったのだ。
46個を初めてすべて読めた日の彼の目の輝きは忘れない。
大きくハイタッチ!!!
モンテッソーリは、自己効力感はこのような『小さな成功体験』を幼い頃から積み重ねることで培われていくという。仮に幾度か失敗しても最後にはやり切ったという成功体験が、「自分はできるのだ!」という自信を生むのだ。
私も息子がひらがな習得に取り組み姿を見てそれを確信した。
そして、そうであるならば、私が母としてできることは小さな成功体験を積める環境を与えてあげることだと気づくことができた。
自己効力感は一日二日では育たない。
それはまるでパズルのようで、小さいピースを探してはめることを繰り返しながら、少しずつ完成に向かうのだ。時に時間がかかったり、間違ったりすることがある。ピースの数も500だったり1000だったり、人によって異なるけれど、探すことを諦めなければいつか一枚の絵ができる。
だから、間違いを恐れず、失敗を恐れず、繰り返し、やり切ることが大切なのだ。
「ママ、もう一回!」
息子はそれと知らずに自分で自己効力感を育てようとしている。
なんとワクワクさせてくれる言葉なのだろう。
私は応援する。
彼の中で「自分はできた!」という感覚が芽生え、小さな成功体験をまた一つ積むまで。
何度でも、何度でも。
***
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