『はらぺこあおむし』の 〇〇〇 を食べてしまった話
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記事:清水優未(ライティング・ゼミ4月コース)
「う~(読んで)! う~(読んで)!」
1歳児が、かの有名なエリック・カール著の『はらぺこあおむし』を指さして、「読んで」と私にせがんでくる。
保育士としての仕事でなかったとしても、この子たちの願いは何でも叶えてあげたい。
そう思ってしまうくらい、どの子もみんな食べちゃいたいくらいの可愛さ。
しかし、しかしである。
いくら可愛いからといって、いくら名作の絵本だからといって、さすがに5回を超えてくると、しんどいです、ハイ。
例えば「私の前世は実は、あおむしを食べてしまった鳥でした」という状況なら、罪滅ぼしに頑張ろうと思えたかもしれない。
……もちろん、残念ながら私にそんな記憶はない。
冷静になると「なんで私は今こんなにも、腹を空かせたあおむしと向き合っているんだろう」なんていう問いが頭をもたげそうになる。恐るべし、エンドレスはらぺこあおむし。
だって、1歳児の絵本のせがみ方って、スパルタなのだ。(本人たちは無意識なんだろうけど、それがまたスパルタさを増す要因になっている。)
私がいくら絵本の世界観を味わいながら、読みすすめて、裏表紙を見せて、最後にゆっくりと「おーしーまいっ」と言っても。
そこに文字通り間髪入れずに、「ん、ん」と人差し指を立ててくる。
もう1回読んでくれということである。
いや、君たちがまだ喃語(=なんご:あー、うー等の言葉)が中心で、言語コミュニケーションが少ないのは理解している。
もう一回読んでほしいということはきっと面白かったんだろうな、嬉しいなとも思う。
それにしても味わう余韻がなさすぎる……
大人同士のやりとりで良いから想像してほしい。
渾身の力を込めて面白い話をした直後に、感想も何もなしに、「今の話をもう一度してほしい」と真っすぐな目で言われることを。
それが5回も6回も繰り返されることを。
ね? スパルタでしょう?
とはいえ、私も保育士の端くれ。
4頭身の可愛い子たちに負けるわけにはいかない。
今回は、1歳児に、同じ絵本の読み聞かせを、何度もお願いされたときの楽しみ方をいくつかお伝えする。
まずは、もちろん、そのまま読む。絵本へのリスペクトの意味も込めて。
それから、絵本に出てくる色を楽しむこともできる。
「これ何色?」と聞いたり、絵本に出てくる色と子どもの服の色で同じものがあれば、「同じだね」と指さしてみる。なお、子どもの服にあまり色みがない場合(笑)、「これはバナナの色だね」「これは葉っぱの色だね」と話を膨らませることで代替可能だ。
また、絵を見て名前を当てるゲームをすることもできる。だれがどう見たってりんごだが、「これなあに?」と聞くと、そんな茶々を入れずに「……りんご!」と本気で回答してくれるので1歳児は可愛い。ただ、子どもにとってあまり見慣れないものだと、びっくりする回答が飛び出してくる場合もあり、それもまた一興。
他には、わらべうたを歌うのも良い。ちょうちょが出てきたら「ちょうちょ~ちょうちょ~菜の葉にとまれ~」などを口ずさんでみる。余談だが、普段そんなに長文を話さない子が、意外とすらすら歌うこともある。長年歌い継がれてきたわらべうたの底力を感じる瞬間だ。
そして、触覚を想像してリアクションをとるのもいい。たとえば、サボテンを出てきたら実際に絵を触って「痛いっ!」と反応してみる。なんどか繰り返していくうちに、子どもたちも追随するようになる。ただし、どの方法にも言えることだが、子どもは繰り返しが大好きなので、一度何かの法則を作ってしまうと、次回からその法則を遂行しないと次に進めさせてくれないので要注意だ。
このように、1冊の絵本を繰り返し読む事態に陥ったとしても、これだけ色々な楽しみ方ができる。
そんなわけで実際、1歳児に『はらぺこあおむし』を何度もリクエストされた時も、(心の中で白目をむきながらであるが)私はどうにか楽しみを見出していた。
そして、何度目かの、はらぺこあおむしが誕生する直前の月夜のシーンで、
「おや はっぱの うえに ちっちゃな たまご」
おつきさまが そらからみて いいました
と読んだときである。
「パクっ!」
なんと、一人の子どもがあおむしの卵の絵を食べるフリをし始めたのである!
思わず「待って待って! それを食べるのはまずいんじゃないかなー?!」と読み聞かせを中断してしまう私。
1歳児あるあるで、ひとりが食べるフリをすると、みんな真似をしていく。そうなると、もう、止められない。
私はこうなってしまった理由を考えた。
『はらぺこあおむし』のその後のシーンで、ペロペロキャンディーやらチョコレートケーキ、ソーセージなどを立て続けに食べていくシーンがあり、繰り返し読んでいたため、「この本に書いてある絵は食べられる何かだ」とインプットしてしまった……のだろうか?
ああ、なんてことだ……! と頭を抱えそうになっていたら、近くにいた男性保育士があっけらかんと言った。
「みんなー? それ食べたらねー、うん、話終わっちゃうよねー(笑)」
私、思わず爆笑。(子どもたちはポカン)
そう、その卵を食べたら「はらぺこあおむし」は誕生せず、その場で物語はジ・エンドだ。
読み聞かせの楽しみ方に、もう一つ追加したい。
それは、たびたび子どもが繰り出してくるシュールな面白さを、近くにいる大人と笑い合うことである。
***
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