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4か月どころではない我が家のコロナダメージ


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記事:小川まき(ライティング・ゼミ6月開講コース)
 
 
ーコロナ禍を経験した5歳 平均で4か月余り発達遅い 京大など調査ー新型コロナウイルスの流行による生活の変化が幼い子どもの発達に与える影響について調査を行った京都大学などのグループは、コロナ禍を経験した5歳の子どもは経験していない子どもと比べて平均で4か月余り発達が遅かったとする分析結果をまとめました。
 
先月こんなニュースが流れて来た。この調査は京都大学の佐藤豪竜助教や慶応大学などのグループが行ったもので、2017年~2019年に1歳と3歳だった首都圏の認可保育所に通う子どもおよそ890人を対象に追跡調査を行い、コロナ禍となった2020年以降の発達状況について運動やことばでの表現、それに社会性などのおよそ140項目の指標で分析したものだという。
 
5歳児で「大人への社会性」の領域やことばでの表現などの領域で遅れが目立っていたとのこと。発達に重要な人との交流がコロナ禍で制約を受けたことが遅れにつながったのではないかと指摘されているとのことだった。
 
私には10歳の息子がいる。2020年の3月に保育園を卒業し小学校に入学した学年だ。卒園式は保育園の先生方が執念で万全の体制を整えて実施してくださったが、一緒に予定されていた発表会(学芸会)は中止になった。5月まで緊急事態宣言が続き、分散登校を経て、クラス全員が顔を揃え、入学を祝う会を迎えられたのは7月だった。
 
息子は控えめに言って4か月どころじゃないダメージを負った。年明けから練習してきた劇を保護者の前で披露することもなく、小学校の扉は5月まで開かなかった。表に出たらいけない、人と会ったらいけない、人とふれあってはいけない。集団生活というものを学ぶ時期の彼らにとって、その矛盾はあまりに重かった。
 
それから3年が経って、4年生になった。コロナ前のとおりとはいかないものの、通常通りの生活が送れるようになった。集団で学習することの意義、人と一緒に行動することを教えられた。だが、門がひらかれなかったことも覚えている、身体か心か両方がついていかなかった。
 
あの時、乳幼児、小学生、中学生、大学生、新卒・・とみんなが様々な立場で苦しんだ。他の子もその学年の苦労があったし、仕事上、高校生や大学生に授業をしに行くこともあったので、一部ではあるが彼らは見ていたし、新卒の方とのお付き合いもあるから、それも見聞きしている。それぞれの年齢で、世代で苦労した姿を見てきた。
 
だが、私たち社会人は在宅勤務という武器を手に入れたり、大学生であれば、場に拘束されることなく、学ぶことが出来た。不自由さと引き換えに手に入れた時間や場所で違うものを手に入れることもできた。3年間で便利に変化したものも多くあった。
 
しかし、彼らは自分自身で解決策を講じることは難しかった。集団行動や規律、全く新しい友人との出会い、そんな機会をすべて奪われてしまった。それ自体を学ぶべき時期に、学ぶべきものが否定された社会に放り出されてしまったのだ。
 
ミルクの頃から一緒にいた仲間たちと5つほどの学校に分かれ、新たな友人たちの出会う世界を描いていた。発表会でセリフをいう姿、最後までやり通す姿を親に見せる機会、それがすべてできなくなり、友だちと接触することさえ禁じられた。家庭毎の事情もあったし、保育園だったので、それぞれ親の勤務環境にも大きな影響を受けた。
 
もちろん、わが子だけがその憂き目にあったわけではない。冒頭の調査は当時1歳と3歳だったが、多分当時の6歳児も1歳児ではなく、3歳児に近い、負の側面の影響の出た世代だと思う。全国80万の子どもたちが同じような境遇にあった。「2021年度の小中学生の不登校 24万人で過去最多」の昨年10月に出ていた記事もその一端を示すものだろう。
 
とりわけ息子は、その時育むべき判断基準やルールというものをはぐくむことが出来なかった。彼自身もそうだし、彼を取り巻く同級生にとってもそうだった。そしてその矛盾を消化するのが人より苦手だ。
 
大人たちですら、戸惑いを何らかの形で消化させ、自分を納得させていたが、彼は飲み込むというが出来ない。納得出来なければ承服しないし、無理やり従わせられることも苦手だし、前後のつながりがないことも苦手だ。あの時にダメだったことがよくなったといわれても、そこに彼の納得できる答えがなければ、動きが取れない。「制度が変わったから」、「ルールが変わったから」では承知できるタイプではない。
 
正直なところ、低学年で身に着けておくべきことが身についていないことで、4年生で学ぶことが咀嚼できない悪循環に陥っており、現在進行形で、発達ダメージは蓄積している。加速度的に知識や能力が上がるのではなく、小数を掛けながら、進んでいる状態で、本人ももどかしい気持ちだろう。それでも人生はリセットすることもできないし、過ぎていくのを止めることもできない。自身で折り合いをつけることを後押しし、掛け算が小数でなくなるまで、安心して彼が成長できる状態まで対話をし続けることしかできない。私に出来ることはそれしかないが、彼が不安がなくなり、自分の人生を能動的なものにするまで、寄り添っていきたいと思う。
 
 
 
 
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2023-07-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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