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おならと自己肯定感


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記事:カナコ(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
一説によると、腸内環境は3歳までに定着した腸内細菌と共に、その後の人生を歩んでいくことになるらしい……。
 
お恥ずかしい話であるが、私のおならは臭い。皆さんが想像する臭さの5倍上をいくことに自信がある。
 
そのことに気付いたのは、高校生の時である。
 
私は6人家族であるが、全員臭い。なので、中学生までの私は「おならなんて、こんなもんだろう」くらいにしか思っていなかった。
 
高校生になり、バスケットボール部に入部した。全国大会に出るレベルだった為、毎日朝練があった。7時からの1時間、皆で列になって、順番にシュートを打ち続けるのである。そこには、当然先輩も混ざっている。
ある日の朝練で、私はジャンプをして着地した瞬間におならをした。しかし、音は出なかった。あまりの恥ずかしさに、素知らぬふりをした。
すると、先輩が「ねえ、誰かトイレ行っておしり拭いてない人いる?それぐらい、臭いんだけど」と笑いながら言った。皆も爆笑していた。私だけ、顔面蒼白だった。
「え、そんなに臭いのかな……。」
 
それからというもの、私の頭の中は、おならのことでいっぱいになった。
そして、やってはいけない一線を超える日が来る。
「通学中の電車内で試しに放つ」ということである。
最初は、おっかなびっくりだった。しかし、公共の場で放った時の周り反応を見て、本当に臭いのかをどうしても確かめたかった。私の中で、「放った直後に、私から人が離れていったら、相当臭い」と決めた。
何度やっても、人が離れていく。そこでやっと納得した。
「私のおならは、臭い」
 
それからは、人前で放たないように細心の注意をはらった。
 
しかし、生理現象である。いつでも我慢できるわけではない。
 
仕事を始めてからも、人が密集して座っている研修中や緊張する場面で、つい漏れ出てしまうことがあった。
勘が良い人はいるもので、何回か自分が放ったことがばれて、距離をとられたこともあった。
それからというもの、どうすればおならが出ないようになるのか必死に調べる日々が続いた。
 
そこで目にしたのが、「腸内環境は3歳までに決まる」という一文である。
目の前が真っ暗になった。私は、これからどうやって生きていったらいいのだろう。
 
結婚はできるのか。
仕事で良好な人間関係を維持し続けられるのか。
好きなものを食べられるのか。
これ以外にも、たくさんの不安が頭をよぎった。
 
その後、彼氏ができても、旅行に行くくらい仲が良い同僚と出会っても、ずっと焦燥感が付きまとった。一回でも失敗すれば、また距離を置かれるかもしれない……。
全力で楽しむことはできなかった。
 
数年間、その苦しみを抱え続けた。
ある時、幼稚園からの友人と旅行に行った時、ビジネスホテルで一緒に宿泊。
夕食は、油断して美味しいものをたらふく食べてしまった。
その夜、部屋の中で100%放ちきってしまったのだ。ついにやった。
怒られるかもしれない。呆れられるかもしれない。
黙って、友人の反応を待った。
そこで友人は言った。「ねえーー、臭すぎでしょ。まあ、換気すればいいけど」
その一言で、救われた。それからも、その友人とはずっと付き合い続けている。
「こんな私でも一緒にいてくれるんだ。本当に有難う」という気持ちでいっぱいだった。
 
それからというもの、私にとっておならは一種の踏み絵と化した。
 
これからもずっと付き合っていきたいと思える相手に対して、一定の関係を超える辺りで、放つことに決めた。
 
おならさえクリアできれば、きっと長く付き合っていける。
 
その踏み絵を通過して一生を約束したのが、今の夫だ。
 
付き合ってから、同棲をし始めて半年たった頃、一緒にいる空間で意図的に放った。
夫は、恐らく初めて出会ったであろう悪臭を目の前に、絶句していた。
私が必死に謝ると、「大丈夫だよ、次は気を付けて」と言ってくれた。
一発アウトの人だっている中で、こんなに温かい言葉をかけてくれるなんて……。
 
それからというもの、私は夫との関係がマンネリ化しそうになった時に、放った。
この人は、本当に私のことを好きでい続けられるのか……。
 
何度試してみても、夫は私から離れていくことはなかった。
 
お試し行動が繰り返される度に、私の夫への思いは深くなっていった。
そして、法律上の夫婦となったのである。
 
結婚生活が3年目になる現在も、私のお試し行動は続いている。
奇しくも、夫の嗅覚は過敏である。
少し漏れ出ただけで、すぐに気付かれる。
最近では、においから私が何を食べたかまで当てられるようになってきている。
 
誕生日には、腸内細菌を整える為の高価な酵素ドリンクやサプリメントをプレゼントしてくれる。それも効かないことが分かると、1ヶ月ごとに様々な種類のヨーグルトを買ってきてくれるようになった。
 
そんな毎日を過ごす中で、ふと考えるのである。
「私、すごく大切にされてる」
 
苦しみの渦に落とし込んだおならが、今の私にとっては自己肯定感の土台なのである。
 
 
 
 
***
 
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2023-08-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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