更年期太りの52歳、本気でダイエットに挑戦する
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記事：なつなつ（ライティング・ゼミ 10月コース）
「まぁ、そんなに太っちゃって」
手術室に運ばれる母が私を見て言った。
「え？ このタイミングで何を言ってるの？」
あまりのことに何も言えず呆然としている間に、母は手術室に消えていった。
40代後半になって私はどんどん太っていった。
今までと何も変わらない生活をしているのに、1年に２～３㎏のペースで増量した。
調べると、加齢に伴う筋肉量の減少（消費カロリーが減る）と、エストロゲンというホルモンが減少することで、脂質代謝や満腹中枢に影響が出たりするため、更年期に入ると太りやすくなるとのこと。
洋服も入らなくなり、写真に写る自分は肩が丸く、二重顎の中年太り。さすがにマズいと思い、先ずは筋肉量を増やすために月６回ピラティスに通い、通勤も片道20分歩くことにした。
それなのに体重は全く減らない。
２～30代の頃はこれだけやればすぐに痩せたのに、40代の脂肪は相当しぶとい。
食べるのが好きな私だが、食事制限もやってみようと思い、SNSをみて色々なダイエットを試してみた。
糖質制限や〇〇を食べるだけダイエット。スムージーやサプリメントや健康食品などなど……
１～２㎏は落ちるけれど、いつもの食事に戻すとすぐにリバウンド。
普段の食事を見直そうと、アプリでカロリー計算もしたけれど、面倒すぎて続かない。
水を飲んだだけで太るとよく言うけれど、まさにそんな状態だ。
ある日、かかりつけ医に「ちょいポチャくらいが長生きするのよ。今くらいがちょうど良いわよ」と言われて、もう痩せるのは諦めた。
52歳になって、その当時太りすぎと注意されていた臨月の時の体重になっていた。
コロナで久しぶりに見た娘のあまりのぽっちゃりおばさんぶりに、母も思わず「そんなに太っちゃって」と言ってしまったのだろうなと、手術が終わるのを待ちながらグルグルと考えた。
母の手術は無事に終わった。
しかし、翌日病院から電話があり、母が目を覚まさないと言うのだ。
股関節に人工関節を入れる手術だったが、精神科や脳神経科の先生にも診てもらっているが原因がわからないと、翌日もその翌日も連絡があった。
コロナで面会に行けず、状況が分からないまま時間が過ぎた。
病気ではなく、これから残りの人生の質を高めるための手術でこんなことになるとは……
手術なんてさせなければよかったと家族みんなで後悔した。
そして、私は母と交わした最後の言葉が「そんなに太っちゃって」になるのかと思ったら悲しくて仕方がなかった。
手術から１週間、もしかしたらこのまま目覚めないかもと、ようやく面会が許された日、母は目覚めた。
心からホッとした。
幸い1週間寝ていた影響もなく、すぐにリハビリが始まり、驚くスピードで回復した母。
洗濯物を交換するため病院に行くと、ガラスドア越しに「みっともないから痩せなさい」と毎回言われた。
自分のぽっちゃり姿にすっかり慣れてしまっていたけれど、そんなに太っているんだ……
本気でダイエットすることにした。
たまたま友人があるSNSのダイエットグループで食事を見直して1週間で2kg痩せたとアップしていたので、紹介してもらい、私も入会した。もうプロの力を借りないと無理だと思ったからだ。
そのグループで教えてもらったことの中で一番効果があったのが「手ばかり栄養法」というものだ。これはインターネットで検索するといくらでも出てくる食事法で、細かいカロリー計算をするのではなく、手を使って食べる量を計るというもの。
1食で糖質をグー１個分、たんぱく質を片手のひらの大きさ分、食物繊維を両手いっぱい分食べるというとってもシンプルな食事法だ。
家で食事を作る時はこのバランス通り作れば良い。
昼をコンビニで買う時はおにぎりかパン、肉か魚、それに野菜を手ばかりのバランス通り買う。
これだとマックだってセットのサイドメニューをサラダにすれば食べられる。
定食もごはんとたんぱく質の量に気を付ければ問題ない。
おやつを食べた時は夕飯の白米を抜いて、糖質のバランスを取った。
晩酌にビールを飲みたい時も白米を抜けば良い。
シンプルな上に何かを我慢する必要がないので、続けられる。
これで、4カ月で8kgスルスルと無理なく痩せた。一緒にこの食事法を始めた夫もズボンのウェストに拳が入るくらい痩せた。そして1年経った今も2人ともリバウンドしていない。
昨年までCがついていた人間ドックの結果もAが並び、健康も取り戻すことができた。
今までSNSやテレビで沢山のダイエット情報を仕入れては試してみたのに痩せなかったのが、「バランス良く食べる」という一番基本的な方法であっさり減量できた。
情報に振り回されるのではなく「先ずは基本から」ということだろう。
まさに中年太りは生活習慣病。関節を痛めない程度の適度な運動とバランスの取れた食事が健康的に適正体重を維持する秘訣なのだと痛感した。
母もようやく不安なく歩けるようになり、そろそろ旅行に出たいと言っている。
これからは80歳になった母と沢山でかけて、一緒に写真を撮りたいと思う。
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