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人生のしまい方


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記事:なつなつ(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
「おばあちゃん、亡くなった時に遺言書を枕元に置いていたんだって」
母が言っていたのを思い出した。
 
92歳で亡くなった祖母は、最期は施設で暮らしていた。病気で弱り、意識もあまりなく、動けない状態だったのに、亡くなった時に枕元に遺言書があったのだそう。どこからどうやって出してきたのか分からないけれど、自分の死期を悟り、最後の力を振り絞って自ら置いたのだろう。
 
祖母らしいなと思った。
 
私が小さい頃の祖母の印象は「怖い人」
年に数回しか会わないけれど、礼儀作法は厳しくしつけられた。
プロレス好きでテレビを見ながら大きな声で「いけ!」と応援していた。
投資が好きで株価のラジオを聞いている時は話しかけても答えてもらえない。
強烈な印象しかなかった。
 
しかし、私が大人になってからの祖母の印象は「一本筋が通ってカッコいい女性」に変わった。
 
やしきたかじんと上沼恵美子が大好きなザ・関西人。
思ったことはズバっと言うところは相変わらず怖かったが、80代でも最新の情報を仕入れて頭の回転が速く、話していて勉強になることが多かった。
 
10年ほど家で祖父の介護をしていたが、早朝に起きて「おじいちゃんに素顔は見せられない」と化粧をしていたり、腰が曲がってO脚になると洋服をかっこよく着こなせないと、90歳になっても家でトレーニングをしたりしていた。
 
祖母の若い頃の話もよくしてくれた。
写真に写る祖母は本当におしゃれで美しかった。
あの時代に一人で満州旅行に行ったり、お嬢様育ちで兄妹一人一人にばあやがついているような生活だったが、このままでは人間がダメになるとサラリーマンと結婚したり、当時ではかなり大胆な行動を取っていたようだ。
その祖母が終活を始めたのは祖父が亡くなった直後からだった。
 
祖父がコレクションしていた美術品や書籍など、祖父の持ちものをすべて処分した。
祖父の写真まで処分しているのを見て、母や叔母たちは「相変わらず怖いわぁ」と言っていた。
 
「これは残す者の責任やから」という祖母の言葉がとても印象に残っている。
 
親の死後、相続をめぐって残された家族がドロドロするのは残す人がちゃんと自分の意志を示していないからだと。娘3人にはずっと仲良くしていてもらいたいという、祖母の大きな愛を感じた。
 
祖母はどんどん不要な物を捨てて、暮らしをコンパクトにしていった。
家の権利や、大好きな投資で築いた財産の分配も、娘たちと話し合って決めていった。
娘3人で、お墓を継ぐ人がいないからと、祖父や叔父の墓じまいをして「みんなでマンションに住むわ」と自分が入る分も含めて納骨堂に移した。
葬儀も生前に自分ですべて決めて、葬儀代もすでに支払われていたそうだ。
80代、1人でよくここまでできたと思う。
 
そして、最後は遺言書を枕元に置いて亡くなった。
 
もう、あっぱれだ。
最後までカッコいい、私のロールモデルだ。
 
祖母亡き後も3人の娘たちは仲良く、にぎやかに過ごしている。
祖母の家を処分する時、不動産屋さんに「こんなに仲良く笑いながら相続の話をするご家族はそうそうないですよ」と言われたそうだ。
 
たしかによく話題になる「空き家問題」も、家の相続の決着がつかずに長く放置されて、結局誰が持ち主だか分からなくなっていることが多いと聞く。
まわりから実家の処分の大変さを聞いたりもする。
 
実際、父の実家が中の物もそのままの状態の空き家になっているが、処分できずに残っている。
その上私の実家も物であふれているので、両親が亡くなったらどうなるのか考えたくもない。
 
80代になった両親は大量の物と向き合う気力がないと言うので、大切な物だけどこかにまとめておいてくれと伝えてある。それ以外の物は遺品整理業者に依頼するから、その資金も残しておくようにお願いしてある。
 
親の持ちものというのは本人が生きている時はただの物だが、本人が亡くなった後は思い出となるため、更に処分しづらくなる。母の書道の作品とか、父のスケッチブックとか、見始めたらキリがないと思う。
だから自分はもう見ないで遺品整理業者にお願いしようと決めている。
 
私も50代になり、時々祖母の「残す者の責任」という言葉思い出す。
 
我が家は子どもが一人だし、そんなに残す財産もないけれど、祖母のように物の処分や葬儀代や墓など、負担になる事は極力自分たちでどうにかしておきたい。万一認知症になった時のための準備もしておきたいと思う。
 
自分たち亡き後、子どもが幸せに暮らすために、そして「お父さん、お母さんありがとう」と言ってもらえるために、子どもに何を残して、何を残したくないだろうか。
リストを作って、まだ頭がしっかりしていて体が動くうちに少しずつ準備しはじめたいと思う。
それが子どもへの最後のプレゼントになるから。
 
 
 
 
***
 
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2023-11-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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