メディアグランプリ

サッカー元日本代表、小野伸二の前世は鳥だった!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ともとも(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
前半22分、選手交代のサインが出た瞬間、スタジアムは大きな拍手に包まれた。
 
2023年12月2日、Jリーグコンサドーレ札幌VS 浦和レッズ戦において、小野伸二は26年間のプロ生活を締めくくった。
 
ベンチに下がる際には、自チームの選手たちはもちろん、対戦相手で古巣でもある浦和レッズの選手たちもピッチ上に一列に並び、花道をつくって見送った。
 
スタンドで見ていた両チームのサポーターの目にも涙が浮かんでいる。浦和レッズのサポーターである私も、もう彼のプレーを見ることができないという寂しさと、これまで数々の素晴らしいプレーを見せてくれた感謝の気持ちで涙があふれ、何も見えなくなってしまった。
 
「天才」
 
サッカーの天才と呼ばれる名プレイヤーは、今までにもたくさんいる。
リオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウド、ネイマール。日本人なら、中田英寿、本田圭祐、中村俊輔などが思い浮かぶ。
 
しかし私にとっての唯一無二の天才は、小野伸二なのだ。彼の引退は、多くの浦和レッズサポーターにとって、一つの大きな時代が終わったと感じたにちがいない。
 
サッカーにおける「天才」とは一体何をもって「天才」なのか?
切り口は色々あると思うが、今回は「アスリート型の天才」と「アーティスト型の天才」に分けてみることにする。
 
「アスリート型の天才」は分かりやすい。生まれ持った身体能力が高いのだ。スピード・パワー・ジャンプ力などに優れている。それはサッカー以外のスポーツでも力を発揮できるだろう。典型的な選手を挙げるなら、クリスティアーノ・ロナウド、中田英寿、本田圭佑などが該当する。誰が見ても理解されやすい天才だ。
 
しかし「アーティスト型の天才」はサッカーでのみ生きる能力である。テクニック・パスセンス・ポジショニングセンス・視野の広さなど、サッカーのために必要な技術に関する才能と、判断の早さ、戦術理解力などの目や頭脳に関する才能にさらに分かれるかもしれない。
 
これらはサッカーをあまり見ない人には伝わりづらい能力だ。しかし逆に言えばサッカー好きにしか分からない稀有な才能であり、多くのサポーターを熱狂させることができる才能なのである。
 
そして小野伸二は、後者の典型的な天才である。
 
サッカーの技術の基本は、ボールを止める、蹴る、運ぶ(ドリブル)の3つの動作がある。しかしやってみるとこの3つの動作が非常に難易度が高いのだ。そもそも普段から足でモノを扱う習慣がないのだから、ボールを自由に扱うのは相当の練習量が必要である。
 
それを彼はとても自然体でやってのけてしまう。飛んでくるボールのスピードを一瞬で殺してピタッと足元で止め、ゴール前の味方にやさしいパスを出すのだ。
 
しかもパスを出すために常に味方の位置を把握しているので、360度自由自在にパスコースがある。プレーしている選手やサポーターの予想の上の上を行くパスだ。
その度肝を抜かれるパスコースに、相手選手は舌を巻いているに違いない。サポーターも「ここにパスを出せるのか! なんという視野の広さだ!」と思わず立ち上がり、ますます彼のプレーに熱狂してしまう。
 
そして驚くことにゴールシーンを見ると、シュートを打つ際に全く力んでいないのだ。特に脚力が弱い日本人にありがちなのが、ゴール前に力んでしまい、ボールコントロールの抑えが聞かず、シュートがポストのはるか上に外れてしまうシーン。日本代表の試合などでも、何度も見かける。どんなに冷静な選手でも、ゴール前で力んでしまうのは「あるある」なのだ。
 
しかし、「ゴールにパスを出すイメージでシュートを打った」と彼はよく発言している。左右の足がどちらも同じぐらいの精度を持っており、シュートを打つ際に全く無駄な力が入っていない。なので一見スピードも威力もないシュートに見えるのだが、ボールは見事にゴールポストに吸い込まれていく。しかも、ゴールキーパーの位置をよく見ており、ちょっと外したタイミングで「ここしかない」というコースに、確実に打ってくるのだ。これをゴール前で見せられたら、熱狂せずにはいられないではないか!
 
しかし、彼のキャリアは順風満帆ではなかった。
1999年のシドニー五輪アジア1次予選フィリピン戦で、相手選手から悪意に満ちたタックルを食らい、左膝靭帯断裂という重傷を負ってしまった。それがその後のキャリアにも大きな影響をもたらすことになってしまったのだ。怪我から復帰した後も、感覚の違和感はとうとう消えなかったそうだ。
 
そんな怪我を抱えながらも、センス溢れるボールさばきと、フィールドを俯瞰したかのような、広い視野を持つプレーでサポーターを熱狂させた。彼の前世は、鳥だったに違いない。そんな心に残るプレーを見せてくれた彼に、感謝の気持ちでいっぱいだ。
 
引退後も、サッカーに関わる仕事を続けていきたいという彼の今後の活躍を、永遠のサポーターとして楽しみにしている。
 
 
 
 
 
小野伸二(44歳)
出身:静岡県沼津市
ポジション:ミッドフィールダー
所属チーム:浦和レッズ、フェイエノールト(オランダ)、VFLボーフム、清水エスパルス、ウエスタン・シドニー・ワンダラーズFC、コンサドーレ札幌、FC琉球
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2023-12-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事