周囲の目が気になってしまう人こそ着物を着ようではないか
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:宮島 浩美(ライティング・ゼミ12月コース)
嗚呼! 素敵!
彼女が現れた瞬間、目が釘付けになってしまったのです。
数年前、ある学びの場で3か月間の成果を発表する最終日の朝。
そこは、学びの場とはいえ
短期間で成果を出すための場でもあり、
出会った20人ほどの仲間達と
悩んだり落ち込んだり、励ましあったりしながら、
文字通り全身全霊で駆け抜けた結果、
二度とできない貴重な体験と
大きな成果を手にすることができ、
私にとってのターニングポイントと言っていい場でした。
そんな仲間の中でも、
彼女はいつも前向きで行動力があり、
笑顔がとても魅力的で、
彼女のようになりたいと思っていた存在。
そんな彼女が、なんと着物で現れたのです。
本格的な夏が始まろうとしている7月の中頃。
白地に蝶があしらわれた小紋が
なんとも涼し気ないで立ちです。
着物に身を包んだ彼女は
さらに磨きをかけて美しく、
凛としていて、
彼女の周りだけ輝いて見えました。
彼女にも、そして着物にもすっかり魅了されてしまった私。
その日から、とにかく着物のことが
頭から離れなくなってしまったのです。
興味が湧いたものはすぐに調べないと気が済まない性質なので、
さっそく着物や着付けのことを調べてみる。
ふむふむ、
着物は新品だとそれなりにお値段が張るものなのね。
それなら、リサイクルだったらどう?
洋服を買うのと、さほど変わらないんじゃない?
着付けは教室に通うとなると
10回くらいのところが多いのね。
2,3か月はかかりそう。
うーーーん。
フルタイムのワーキングマザーは
自分のことに使える時間が限られている。
この時は月に数回、母の介護で実家にも通っていたので、
着物にはあこがれるけれど
ハードルが高いわね。
と諦めてしまっていました。
仕事と介護と家事育児に追われて
慌ただしく日々が過ぎ、
着物のことをすっかり忘れた頃にはもう一年が経っていました。
でも、こういうのって縁なのでしょうかね。
介護の末に母を見送り、
妹と遺品を整理した結果、
なんと、着物と羽織と帯などが数点、
私の手元にやってきたのです。
私と母は身長が10センチ以上違うので、
袖丈が短すぎて着ることはできないけれど、
まるで母が私の気持ちを知っていたかのように思えて
処分する決心ができないでいました。
なんとか着れないかしら?
お出かけはできなくても、家の中でなら……
仕事もテレワークが半分以上
テレビ会議は上半身だけよね。
しかも肩から上しか映らないのだから、
袖丈が多少短くてもわからないわよね。
”着物で仕事”
ちょっとかっこいいんじゃない?
なんて思ってしまったのです。
それ以来、
着物でお出かけする私、
着物で仕事をする私、
着物で家事をする私、
ワクワクする妄想が止まらない。
着物のことで頭がいっぱい。
YouTubeの履歴が着物と着付けで埋め尽くされて、
とにかく着たくて仕方がない。
画像や動画だけでは物足りない!
実物をみて羽織ってみたい!
遺品の中から1着を選んで
合う帯を探しに行き、
なぜか一目惚れした小紋を買って帰る始末。
こうなってしまうともう止められない。
毎日動画を観ながら脳内でエア着付け。
繰り返すこと数日、
とうとう我慢できず
夜中にゴソゴソ……
なんとか完成!
超感動!
子供の頃、お正月は祖母に着物を着付けてもらっていたことや、
毎年浴衣を仕立てもらっていたことを思い出したりしました。
母から譲り受けた帯は
昭和に流行った真っ赤な紅葉柄だし、
背中心も合ってなかったけれど、
初めての、ひとりでできた! に大満足。
浮かれた私は調子に乗って、
夫の前でくるくる回って見せる。
「どう? いい感じに着れてる?」
深夜1時をとうに回っているにもかかわらず、
私の扱いを心得ているのか、
同意以外の返答を許さない圧を感じたのか、
「いいね~。きれいに着れてるんじゃない?」
と、100点満点の反応。
きれいなんて言われ、気を良くして浮かれる私に、
「結婚記念日のランチは着物で行けるね。」
と衝撃の一言。
おおっと!
今、着るのに2時間かかってますよ。
結婚記念日は2週間後ですよ。
草履もないし、今は2月も終盤に差し掛かろうというところ。
防寒着なしには外を歩けませんよ。
でも、その一言を聞いた時、
ばっちり浮かんでしまったのです。
”銀座を着物で歩く私。”
かなりハードルが高い。
いきなり銀座か!
でも、でもでもっ!
いったん浮かんでしまうと、
もう着物以外は考えられない。
最低限、おかしくない程度に着付けられればいいんじゃない?
誰だって最初は初心者だし、
結婚記念日まで2週間。
毎日練習すれば、あと13回は着ることができる。
着付け教室も10回コースとかあったから、
10回着ればきっと大丈夫。
そうと決まったら、
草履とコートを選ばなくっちゃ。
何て愉しくて楽しい時間なんでしょう。
2週間、毎日練習していざ銀座へ!
着物警察のマダムに緊張しながらも、
銀座を着物で歩くのはとってもいい気分。
自然と背筋ものびて、
自分がちょっとだけ品のある大人の女性になったような、
くすぐったくも誇らしいような、そんな感覚。
きっと、洋服ではここまで気持ちがあがることはなかった。
“着物沼にハマった”
その瞬間でした。
心配していた着物警察なんて人はいなくて、
ランチに行った料亭の方もとても親切。
記念写真を撮ってもらい、
素晴らしい時間を過ごさせてもらいました。
50代になって、着る服に困ることが増えた私にとって
着物は、自分をちょっとだけ上げてくれる、
”ちょっとだけ、とっておきの服”
始めのうちは、
一人で出かける時や
電車に乗る時、
周りの目線が気になっていたけれど、
それも最初の1,2回のこと。
いまでは全く気にならなくなりました。
気にならなくなったというよりも、
“誰も、私が着物を着てるからって注目なんかしない”
ということがわかったのです。
そう!
「他人は、自分が思っている程、
こちらのことなんて見ていない」
のです。
全人類、等しく1日24時間しかないのだから、
自分が愉しめること、
自分を心地よくしてくれることに
時間を使わないともったいない!
私を着物沼に落とした彼女とは、
一緒に着物でお出かけする仲になりました。
そうだ、久しぶりに彼女を誘ってお出かけしよう。
さてさて、次はどこに行こうかしら。
***
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