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がん患者は今日も知的好奇心を満たすのにいそがしい


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記事:そらいぬ(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
私は、知的好奇心旺盛なタイプだ。
自分の知らないことに出会うと、どんなことであれ、もっと知りたいと思う。専門外の化学記号がたくさん出てくるようなことでも、できるだけ知りたい。「わからないと思うよ」と言われても、「例えばこういうことができる、ということですか」と食い下がる。すると相手は、しかたなく、かみ砕いて説明してくれたりする。とはいえ所詮素人なので、知識は、広く浅くになるが、知識欲が満たされるのは楽しい。
 
がんに罹患しても、この特性は変わらない。
私は昨年の夏、乳がんであることがわかり、抗がん剤治療を行った。予定通り脱毛した。ツルツルではなくて髪の毛がポヤポヤと少し残っているが、地肌は見えている。ちょうどダチョウの頭のようだ。

脱毛が落ち着いたのは、初秋だった。外に出ると、日差しが頭皮に直接当たって、刺すように熱かった。以来、ベランダで洗濯物を干したりするときは、必ず帽子をかぶるようにした。
冬になると、今度は頭と首筋が、とても寒い。あたたかな服を着こんでしっかりと防寒しても、頭のてっぺんと剥き出しの首筋に、冷たい空気が容赦なく吹き付ける。風がなくても、吹きつけてくるような寒さを感じる。だから、室内にいても、ネックウォーマーと帽子を常に身にまとっている。
「ううー、寒っ」と身体を震わせて、いつも考えるのは、頭髪少なめの男性のことだ。
 
50代以降の男性の、男性型脱毛症の発症割合は約40%だという。なかには若い頃から、自ら髪を剃っている人もいるので、髪がない男性は珍しくはない。だけど、そんな彼らから、「夏はめちゃくちゃ熱くて、冬とても寒いんだよ」という話は聞いたことがない。みんな平気な顔をして過ごしている。だから女性の場合であっても、髪の毛がないことに、見た目以外の大変さがあることは想像だにしていなかった。
 
脱毛症の人は、「しかたがない」と諦めているのかもしれないが、自ら頭を剃った人なら、「熱くて寒くて大変だった」と再び髪を伸ばしそうなものだ。それくらい、地肌の熱い寒いは強烈だ。しかし、私はそのような人に会ったこともない。だからこそ、彼らに聞いてみたい。
「熱くないの? 寒くないの?」
でも、聞けない。外見に関することは、傷つけてしまう可能性があるデリケートなことだから。
 
実は、私の友人の夫は、若い時分に僧侶のように自ら頭を剃ってしまっている。その時、頭から油がぼとぼと流れてきて大変だったと、友人は語った。「だからあなたも、脱毛するときは、そうなるかもよ」と。
でも実際は、私の場合は、油が流れ落ちるようなことは起きなかった。その代わり、とてつもない痛みがあって、夜も眠れなかった。そして、ますます疑問は募った。
男性脱毛症や自ら頭を丸めた場合と、抗がん剤の副作用による脱毛は、違うのだろうか。女性と男性では、同じ脱毛といっても、違いがあるのだろうか。
 
「頭、熱くないんですか? 寒くないんですか?」
「もし思ってたより熱かったり寒かったりしてるのなら、なぜまた髪をのばさないのですか?」
と男性に率直に聞いてみたい。いったん剃ったものを伸ばせるものかと、意地を張っているのだろうか。でも、やっぱり聞けない。私自身は、とてもまじめに頭をひねっているんだけど。
 
こんなふうで、がんになったら、ますます疑問に思うことが出てきて、おちおち休んでいられなくなった。情報過多の現代であっても、調べてもわからないことが、意外にもあるものだ。先に書いた、脱毛の際の激しい痛みについても、自分がそうなるまで、全く情報がなかった。
もちろん調べたらわかることもたくさんあるから、今日も私はせっせとネット検索をする。治療方法のこと。薬の副作用のこと。夏になって帽子やウィッグで頭の中が蒸れるのはかなわないから、髪の毛はいつ頃から生え始めるのかも気になる。そういえば、抗がん剤を使うと誰もが脱毛するのかな。医療用帽子をかぶっているときに、見栄えするメイクってどんなのかしら。ウィッグ代を安くする助成金とか、ないのだろうか。体力回復に適した運動は? 免疫低下時には、どんなものを食べるのがいい?
 
調べ物をして、今日も知識が増えていく。また賢くなった。知的好奇心が満たされて、心が弾む。
 
知的好奇心といえば、死ぬ直前まで、読書を楽しむ人は多い。老い先短くて、新たに得た知識を生かす場面などなさそうでも、人は本を読み、新たな知識を得ようとする。
そういえば、車いすで散歩していても気になる花があれば、「あれは何という花かしら」と尋ねる。ベッドに横たわっていても、窓の外から聞きなれないさえずりが聞こえれば、「あれは何という鳥だろう」と疑問を抱く。
ひょっとすると、答えを得ることよりも、知的好奇心をもつことそのものが大切で、それこそが人としての生きがいなのかもしれない。
 
いや、本当にそうなのだろうか。そのようなことを言っている前人は、いないだろうか。確かめたい。こうしてがん患者の私は、またもやネット検索に浸るのだ。いそがしい。
 
 
 
 
***
 
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