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噛みつき猫


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ともとも(ライティング・ゼミ12月コース)
※この記事は、フィクションです。
 
 
僕の名前は「むぎ」
この家に来てもうすぐ1年になる。
僕は全身に麦色の縞模様が入った、素敵なコートを着ている。
だから、みんなは僕のことを「むぎちゃん」って呼ぶんだ。
 
僕は1年前、ママと3人の兄弟で幸せに暮らしていた。晴れた日には、どこかの庭の芝生で、みんなでかけっこをしたし、お腹がすけばママのおっぱいを飲んだ。満腹になったらみんなで「猫団子」になってお日様の下でお昼寝。ご機嫌の毎日だ。
 
雨の日はびしょびしょに濡れて寒くてつらいけど、それでも家族で楽しく暮らしていたんだ。
 
なのに、不幸は突然やってきた。
いきなり知らない人間たちがやってきて、僕たちを網で捕まえ、ママや兄弟と引き離されて、知らない家に連れていかれてしまったんだ。僕はまだほんの赤ん坊だったのに。
 
僕は寂しくて怖くて、暗いケージの中で何日も泣き続けていた。「ママ―、どこにいるの? 兄ちゃん、どこにいるの? 怖いよー おなかすいたよー ニャオーン ニャオーン」
 
そのまま何も食べずに、1週間ぐらい泣き続けていただろうか。もうお腹がすいて、限界だった。力も出ない。人間は信用できないが、目の前に置かれたご飯をひと口食べてみる。
パク。う、うまい! これは大好物のマタタビの匂いじゃないか……? おかげで僕は一気に全部平らげた。
 
この家の人間は、パパとママと子供の3人暮らしだ。昼間はみんな出かけているので、ご飯をもらったお礼に、家中のパトロールをすることにした。
南の掃き出し窓には、たまに野良猫がやって来る。西の窓からは、鳥やリスが家の中を覗きに来る。だからパトロールが大変なんだ。いつテリトリーを荒らされるか分からないからね。 ここの人間たちは、家を守っているのは僕だということに、気が付いているんだろうか。
 
これは後から聞いた話だが、人間たちがなぜ僕たち兄弟を捕まえて引き離したのか、その理由がわかった。僕たちがあまりにも走りまわるから、そのうち車に引かれてしまうんじゃないかと、近所の人がかなり心配していたらしい。それで飼い主を探した結果、兄弟はそれぞれ別の家に引き取られたというわけだ。そして僕は今この家にいる。
 
この家の連中は悪くはないが、たまに無理やり抱っこしようとするのがウザイ。そんな時は、「僕に甘えるな! シャー!」ってはっきり言ってやる。それでも離さないときは、思いっきり噛んでやるんだ。
 
この間も僕は気分じゃないのに、無理に触ろうとするから、ママの手を思い切り噛んでやった。僕の犬歯は鋭く尖っていて、人間の皮膚なんか簡単に穴をあけることができるんだ。そうしたらママの手は血だらけになって、ミミズ腫れになっちゃった。怒られるかな、と身構えたんだけど、ママは「痛い!」とだけ叫んで、悲しそうな顔でどこかに行ってしまった。
 
僕がママに甘えたい時は、ママは忙しい。でもママが僕に甘えたい時は、僕はそういう気分じゃない。気持ちがすれ違うから、イライラしてつい噛みついちゃうんだ。分かってほしい。
 
ある日、ママが夕方帰って来たのに、夕飯の支度もせずにベッドで寝てしまった。顔が真っ赤で、喉が痛いらしい。まるでゆでだこのように、ぐったりしていたんだ。パパと話しているのを聞いていると、ママはどうやら新型コロナウィルス感染症にかかってしまったらしい。コロナウィルスと言えば、亡くなる人もいるという、恐ろしい病気だ。
 
ママは家族みんなにうつらないようにと、部屋を別にして、真っ暗な部屋で一人ぼっちで寝てた。コロナウィルスはとても感染力が強いから、病人を「隔離」しなきゃいけないらしい。でもママは寒さでブルブル震えているし、とてもつらそうだ。僕は、一人ぼっちになることのつらさを誰よりも分かっている。
 
そうだ! 僕は猫だから、もしかしたら人間の病気はうつらないんじゃないか?
それに、病気のママを一人で放っておけない。僕は何もできないけど、ママのそばにいることはできる。ママが起きられるようになるまで、パパの代わりにそばにいてあげよう。
それから三日三晩、僕はまるで家族のように、ずっとママのそばに寄り添っていた。
 
四日目の朝、やっとママはベッドから起き上がることができた。すると、パパがママの部屋を覗き込みながら言った。
「ママが寝込んでいる間ね、ずっとむぎちゃんがママのそばに寄り添ってくれていたんだよ。」
 
「え、むぎちゃんが……!」
 
そして僕の姿を見つけるや否や、
「むぎちゃん、病気の間ママに寄り添ってくれて、ありがとうね」と言いながら、むぎゅっとしてきた。
 
そんなにむぎゅっとされたら、苦しいじゃないか。やれやれ、人間の面倒を見るのは大変だ。……けど、感謝されるって悪くないな。
 
これを機に、夜寝るときは、パパとママの大きいベッドの真ん中で、川の字になって寝ることにした。枕と枕の間にすっぽりと体が入るから、ちょうどいいんだ。ここで寝ていれば、病気になってもすぐに面倒みれるしね。それに二人の間にいると、何だか安心する。
 
それから数年がたち、僕は4歳になった。最近では、僕は人間に噛みつくことが減ってきた。怖い思いをした時にはパニックになって、ついママを噛んでしまうけど、ママは決して怒らない。ママは、僕が怖い思いをしたことを理解してくれているんだ。
 
僕は死ぬまでずっと、この家にいることにした。
 
 
 
 
***
 
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2024-02-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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