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なかなか切り分けるのが難しい親子の境界線問題


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記事:なつなつ(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
「お母さんからお子さんに話しかけるのをやめてください」
当時小学校3年生だった息子が不登校になり、自分の子育てを見直そうとお願いした先生からの最初の指導だった。
 
息子から話しかけられたら「うん」「そうね」など相槌をうつけれど、自分から話しかけないようにというものだ。
 
一日家に居る息子と同じ空間にいるのに、私は貝のように口を閉じた。
 
しかし、数時間でもう苦しい。
「ご飯食べる?」「そろそろ爪切ったら?」「どこか遊びに行く?」などなど先回りして色々と聞きたくなる。
 
びっくりするくらい息子のことが気になって口出ししたくて仕方がない自分に気づいた。
 
これでは息子も家に居ても落ち着けないなと思った。
 
先生の指導の目的は、子どもとの境界線を引き、子どもが自分の課題を自分で解決し、自立すること。要はお母さん、早く子離れしなさいということだった。
頭では分かっているが、なかなか出来ない。
 
母親は子どもをお腹の中で育てていたわけだから、ほとんど自分の一部として親子関係がスタートする。
生まれてからも泣き声でお腹がすいたのか、おむつが濡れているのか、抱っこしてほしいのか察して対応する必要がある。
 
それを「境界線を引きましょう」と言われても、今まで自然に反応して、無意識のレベルでずっとやってきたことだから難しい。
見守る子育てをしたいと思っても、ついつい口出しして落ち込む母親がどれだけいることか。
 
更に私はとてもせっかちで常に先回りして「〇〇しろ」という父に先々を読んで動くよう子どもの頃から叩き込まれていた。
2,3手先を読んで準備したり、根回ししたり、会社員になってこの資質は助けになり、磨きがかかった。
 
ちなみに、私が出会った不登校のお子さんのママ達も気が利いて先回りしがちな人が多かったように思う。
 
息子が小さい頃から私は子育てで苦戦した。
とにかく自分の意思をはっきり示すし、こだわりが強い。いつものルーティンから外れると大騒ぎなので、事前に子どもに説明するなど、先回りして対応していた。
癇癪を起さないように常に準備していた。
 
幼稚園、小学校と子どもが成長しても、忘れ物がないように、勉強でついていけるように、失敗しないように、常に先回りして「あれ持った?」「宿題やったの?」と細かく口出ししていた。
私の中では先を読んで準備する大切さを伝えたくて言っていた。
 
しかし、子どもからすると常に先回りされて、あれをしろ、これをしろと指示命令ばかりで考える余裕もない。とにかく言われたからやったけれど、なぜそれをやらないといけないのか分からない。操り人形状態だったのだと思う。
 
更に、失敗しないように口出しされて育ったので、極端に失敗を恐れる子になってしまった。
0か100思考でできそうにない事は挑戦しないし、学校でできないことがあると極端に落ち込んだ。
授業参観でのグループ発表は泣いて座り込み、運動会も嫌がった。
 
私が良かれと思ってしていた声がけが息子を追い詰めていたのだ。
 
ついに息子は不登校になり、私は自分の子育てと真剣に向き合うことになった。
 
自分から子どもに話しかけないという苦行。
色々なことに気が付き、先回り癖がある自分。息子がまた癇癪を起すんじゃないかと不安になっている自分。思い通りに行かない子育てへのイラつき。このまま子どもが引きこもりになるんじゃないかという不安。色々な自分と向き合った。
 
私ってめちゃくちゃ重い女じゃないかと思った。
こんなに重い女と一緒に居るのはしんどいだろうと思い、昼間はパートに出て息子と物理的に距離を取った。
 
そして、私の指導が始まって4カ月経った頃、小学校4年生になった息子は学校に戻った。
私が先回り癖を手放すのには1年ほどかかったが、息子は休まずに学校に通うようになり、色々なことにチャレンジするようになった。
 
小学校5年生になる頃にはクラスのまとめ役ですと先生から評価をいただき、小学校6年生では運動会の実行委員として全校生徒の前で朝礼台に乗って話をした。担任の先生からは「息子さんの成長が職員室で話題になってます。お母さん今度講演会をしてもらえませんか?」と言われたほどだ。
 
私が子どもを導かねばとやっていた先回りが、子ども自身の育つ力を奪っていたのだ。
私が子離れしてコントロールを手放したことで子どもがどんどん本来の力を発揮するようになって行った。
 
失敗しても立ち直り、前に進めるようになって行った。
 
子どもが小学生の時に、苦しい思いをしてでも子離れをして本当に良かったと思う。
中学校1年生、思春期真っただ中の息子は、今では私が忙しい時には代りに夕食を作ってくれるくらい親思いに育っている。
 
親という字は木の上に立って見ると書く。
そんなイメージでこれからも子どもを見守り、成長していく様子を楽しみたいと思う。
 
 
 
 
***
 
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2024-02-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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