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【キラーワード】一人旅は“移動式引きこもり”なのか?移動式陽キャとの折り合いのつけ方


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記事:宮下佳英 (ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
“一人旅”という言葉のイメージは一人歩きしている。先日X(Twitter)で以下の文言が目に入った。「一人旅は移動式の引きこもりである」と。この殺し文句を見るのは、実は初めてではない。数年前にも当時のTwitterで見かけたことがあり、大層共感したものだ。私以外にも共感する者が多いから、数年の時を経てバズった(拡散した)のだろう。しかし、この文言の意図するものはなんなのか。
このツイートの全体は「一人旅が趣味と表明するとアクティブと言われるが、そんなことはありません。移動式の引きこもりなんですよ」と一人旅経験者あるあると、それに対する心中を、移動式引きこもりというキラーワードを使って表明している。誠に僭越ながら、私自身も海外20か国近くを一人旅してきた経験者として、この問答は「あるある!」と脳震盪を起こすほど首を縦に振りたい共感度だ。
一人旅をしたことがない人からすれば、一人旅という行為はアクティブと捉えられがちだ。この印象を持たれる背景には、行動そのものだけでなく、現地の人間や安宿で出会った仲間と交流するコミュ力(社交力)抜群なイメージに引っ張られている事が往々にしてある。現に私自身も一人旅が趣味と話すと「やっぱ友達現地で出来るの?」と屈託のない笑顔で聞かれたことがある。いや、出来んわ! と本当は大声で言いたかった。勿論、私とて全く他人と喋らないわけではない。成り行きで出会った人と連絡先を交換することだってある。しかし、宿は予約時点で一人部屋を死守するし、旅先で連絡先を交換した人とその後に会うことは、まず無い。どれくらい予定を詰めるかは個人によるが、一人旅とは誰に気を遣うこともなく好きに移動することこそが醍醐味だ。急に引き返して何気ない路地の写真を撮っても良い。有名な観光地が思ったより並んでいたら、誰に断るでもなく予定を変更する。この移動を他者との接点、調整ゼロで行えるのが一人旅だ。思うがままに好奇心を満たす。その為に移動しているうちに移動自体が目的になったりもして……“移動式引きこもり”という単語はその矜持と習性を端的に言い表す秀逸な言語化だ。
だが、この話の難しい点は一人旅をする人間も2種類いること……つまり、本当にコミュ力抜群で人との交流を何より求めるタイプもいるのである。移動式陽キャ(陽気なキャラ)とも言える彼らの存在は、我々移動式引きこもりと似て非なるものだ。推測になるが、一人で動く理由が移動に制限や忖度が無いから、という点は両者とも一致していると思われる。しかし移動式陽キャは、ドミトリー式の宿に泊まり、向かう先は路地ではなく現地のBARやクラブだ。
学生だろうと社会人だろうと、日常のコミュニケーションは雁字搦めだ。上司と同行すれば機嫌を伺いながら昼食の店を選ぶ。友人や家族と過ごしていても、予め決められた場所にしか行けない。移動式引きこもりはそんな日常から一時的に離れるために、逃避行動に出る。対して移動式陽キャは、新たな繋がりを求めてハンティングに出る。
調査をしたわけではないので一人旅というジャンル内でのそれぞれの占める比率は不明だが、一人旅のパブリックイメージは移動式陽キャが表に出ているのは確実だろう。沢木耕太郎『深夜特急』の影響だろうか、所謂“バックパッカー”のイメージを体現しているは陽キャだ。むしろ、一人旅をしない人の漠然とした期待に応えるからこそ目立つのかもしれない。一人旅という言葉には2種類の人種が含まれる。全員が人との繋がりを求めているわけではないし、逆に全員が引きこもりでもない。一人旅とは○○であると一言で言い表すことは出来ないというのは皆々様に知って頂きたいことだ。
だが、一見相反する性質を持つ両者とも、非日常への渇望という原点においては同じだ。むしろお互いに尊重し合い、行動を真似し合うべきなのではないか。移動式引きこもりと名乗ってはいるが、コミュニケーションそのものを拒否している訳ではない。自主的に人の輪に飛び込まないとはいえ、一人でタクシーの交渉や現地ツアーのやり取りなど行うのだ。そこで事務的な話だけではなく、多少パーソナルな領域に踏み込んでも良いのかもしれない。クラブは怖くても、観光地化しているBARくらい行って悪いことにはならない。“旅の恥はかき捨て“この有名な言葉を真摯に受け止め直してみようじゃないか。移動式陽キャの皆様も、敢えて一人部屋の宿を取り、部屋に現地のスーパーで買った総菜とビールを持ち込み、孤高の時間を過ごしてみるのも良いのではないか。時には話しかける距離から一歩引いて、人々の営みや街の呼吸をカメラに収めるのも良いだろう。この話題を取り上げておいて言える口ではないが、白か黒かで割り切れない現代、自分のスタンスに固執せず良い所取りをしていく姿勢が大事なのだと思う。
 
 
 
 
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2024-02-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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