メディアグランプリ

天狼院ライティング・ゼミで見つけた、たった一つの頑張れること


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:下村未來(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
また日曜日が来てしまった。カーテンの隙間から外を見ると、3月の澄み切った青空が広がっている。
 
「あ〜〜〜〜〜やりたくないやりたくないやりたくない!」
 
何をやりたくないのかというと、まさしくこの文章を書きたくないのである。
 
「そんなに毎週毎週、書きたいことなんてあるわけがない。そもそもこんなに天気の良い日曜日くらい、どこかにお出かけがしたいのに!」
 
私は12月から天狼院ライティング・ゼミに通っている。これは4カ月間にわたり隔週で土曜日に1時間半の講座を受講する講座である。そして、任意で課題として毎週月曜日に2,000字程度のコンテンツを提出するという、社会人にとってはなかなかハードな講座である。その内容がコンテンツとして成り立っていたらWEBに掲載され、成り立っていなければ不掲載。一生お蔵入りだ。
 
この講座との出会いはかれこれ1年以上前のこと。私は、あらゆる企業の社内報を作る企業広報ライターという少し変わった仕事をしている。そこで勤め先から「自分のスキルアップのために、ぜひ受講してみませんか?」と案内が出たことがきっかけだった。
 
当時の私はまだライターになりたてで、ようやく二足歩行ができるようになった赤ちゃんくらいのスキルしかなかった。先輩たちが「やります!」と意気込んでいるのを遠目に見ながら、「いえ、わたくし、そんなどころじゃありませんので」と思っていた。
 
それから半年が経ち、この12月コースへの参加が案内された。
 
「ついに来てしまったか、決断の時が……」
 
大々的に言うことでもないが、私には努力の才能がない。毎日何かをコツコツ積み上げたり、苦手なことに地道に向き合っていく忍耐力は、持ち合わせていない。特に高校生の頃は暗記科目が苦手で、あらゆるテストで赤点を取りまくっていた。
 
「なんで努力しないんだよ。暗記が苦手なら、苦手なりに人よりも2〜3倍の努力しないと。そうだろ?」
 
世界史のテストで100点満点中20点というひどい点数を取り、先生から叱られたことがある。「いや、アウグスティヌスが何をした人かなんて、私の人生にほとんど関係なくないですか?」という心の中の対抗心とは裏腹に、私はひたすら首を縦に振っていた。
 
机の隅っこに置かれた解答用紙の束に目をやると、Sちゃんの65点の解答用紙が一番上に重ねられている。平均点は50点台なので、きっとSちゃんは「よく頑張ったね」と褒められただろう。私の視線に気付いた先生は少し表情を歪め、Sちゃんの解答用紙を太い腕の下にそっと隠した。そしてアウグスティヌスには申し訳ないが、今でも彼が何を成し遂げた人物かよく分かっていない。
 
その他にも、苦手なことは山のようにある。数学は毎回のように赤点だったし、水泳だって平均7mしか泳げない。走るのもクラスで一番遅い。バレーやバスケットボール、テニス、バドミントンも全て苦手。ボールやラケットを上手く操れる人は魔法使いか何かだと思う。小さい頃から習っていたピアノの練習だって、苦手なパートに出くわすたびに「もういい! 今日の練習はやめる!」と癇癪を起こして諦めてきた。
 
「何も頑張れない私だから、きっと大変な4カ月になるだろうな。投げ出したくなるだろうな。でも……」
 
ライティングは、私が一生をかけて突き詰めたいことだ。このタイミングを逃すと、もう二度と思い切れない気がする。同期のMちゃんからも「私は受けてみる」と聞き、あえて講座の内容をほとんど見ずに「私も参加します!」と声を上げたのだった。
 
「毎週月曜日に2,000字の課題を提出してもらいます。計16回です」
 
それを聞いた時、「え、毎週……? しかも全部で16回……?」と絶望したのを覚えている。
 
書く、書く、書く。
たかが2,000字、されど2,000字。
書いては消して、書いては消してを繰り返す。
 
あまりに進まないのでチョコレートを食べる手が止まらない。友人と会う回数も一気に減り、ただ引きこもって文章を書き続ける。一言も発さずに頭をフル回転させ、数時間かけてようやく書き終える。書き終えた時は達成感があるが、後から見返してみると「なんてしょうもない内容なんだ」と我に返って絶望する。
 
「う〜ん、何かちゃうくない? あんまり何が言いたいか分からんわ。前の方が好きやったなあ」
 
ひと通り仕上げたら母に見てもらい、一般の読者としての意見を聞くようにしていた。母のチェックはかなり厳しく、「いいんちゃう?」の一言がもらえるまで、何度もラリーをする。そんな時間を過ごしていたら休日はあっという間に過ぎて、また月曜日が始まり、今度は仕事の原稿を書き進める。なかなか進まず、発狂しそうになる。
 
そんなふうに、ずっとパソコンに文章を書き連ねる日々が4カ月続いた。羽田空港駅のホームで、提出時間ギリギリに鬼の形相でパソコンに向かい、自分のあまりの必死さに笑えてしまう日もあった。
 
脇目も振らず、ひたすら目の前のことに向き合っていたら、早くも最後の課題を迎えた。きっと人生もこんなふうに、目の前のことに向き合っていたら、あれよあれよと一瞬で過ぎていくのだと思う。
 
振り返ってみても、やはり私は、自分に努力の才能があるとは思えない。しかし、たった一つだけ頑張れることを見つけた。それがライティングだ。
 
これから一生涯にわたって、私にとってのライティング・ゼミが始まる。
最初の記事は何にしようか。早速、ネタ探しに近くの公園に出かけよう。
 
たった一つでも頑張れることがあるなら、それで十分だ。
 
 
 
 
***
 
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2024-04-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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