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ヘビがワンコになったワケ


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記事:関谷陽子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「お母さん、僕な、来月のお誕生日にはコーンスネークが欲しい。飼っていい?」
いくら可愛い次男とはいえ、流石に即断することはできなかった。念の為に確認したが、「コーンスネーク」とはヘビのことに間違いなかった。
当時、小学5年生。小学2年生で不登校になり、3年が経過したある日の出来事だった。
 
 
ヘビ。格別好きではない。かといって、見た瞬間に悲鳴をあげて逃げるほど嫌いなワケでもない。
だがそれをペットとして飼いたいかと言われると、別の話だ。
にも関わらず無下に断れないのには理由がある。
動物が大好きな次男のお願いで、我が家では2年前からハムスターを飼っていた。ただ、1代目のハムスターが亡くなったあと、次男はひどく落ち込み、2代目のハムスターをあまり可愛がることができていなかった。
私自身、子ども時代に飼っていた犬とお別れをしたあと、似たような経験をしたことがあったので、気持ちは痛いほどわかった。
 
その次男が、最近少しずつ、2代目ハムスターと遊ぶようになっていた。
少しずつ心の傷が癒えてきたのかな。そのように思っていた矢先の、先ほどの「ヘビが飼いたい」発言だった。
 
不登校初期の落ち込みや、やる気が喪失した時期を知っているだけに、次男の「したい」は尊重したい。
でもなぜ、よりによってヘビなのか。
 
 
苦し紛れに「お父さんに聞いてみたら?」と伝えると、「お父さんは、お母さんが良いなら、良いって」と返ってきた。10歳にして、外堀から埋める作戦を決行するとは。
それだけではない。
「コーンスネークってな、ヘビの中ではお世話もラクやねん。他の変温動物と違って、温める機械もいらないねん。値段も8000円くらいで手頃やし、寿命も10年くらいあって、長いねん。エサも10日に1回くらいやから、じいじやばあばの家にお泊まりに行っても、放っておけるねん」
なんと言うことだろう。普段の飼育だけではなく、遠方に住んでいる祖父母の家に帰省した時のことまで考えてある。さらには寿命や値段という、親がまず気になるところもクリアになっている。
10歳まであと1ヶ月程度の歳で、こんなことまで考えられるとは、完璧ではないか。
それなら飼ってもいいかもしれない。そんな気持ちにさせられるプレゼンだった。
だが、日々のお世話を想像する中で、どうしても気になることがあと1つ残っている。
エサだ。
次男を信じないわけではないが、子どもにとってこの世界は誘惑に溢れている。
いくら、今は自分が全部世話をすると言ったところで、忘れてしまうことは十分に考えられる。その時にヘビの世話を行うのは、私になる可能性が非常に高い。
一体、ヘビは何を食べるのか。ハムスターに買ってあげているような、ペレットのようなエサがすぐに手に入るのだろうか?
 
そんな疑問に対して、次男は誇らしげに答えた。
「エサも調べてんで。冷凍マウス。ネットで簡単に買えるみたい」
 
 
その瞬間に私の中の迷いはなくなった。むろん、却下である。
さらに詳しく聞けば、ヘビは変温動物のため、冷凍のまま食べると体調を崩してしまうらしい。そのため、人肌程度の温度まで、湯煎で解凍する必要があるらしい。
 
無理だ。
 
家族の食料品が入っている冷凍庫で保管する、冷凍マウス。それを、料理をするキッチンで、湯煎で解凍する?
 
無理すぎる。
 
可愛い次男の願いは、全部叶えてあげたい。でも、どうしたって無理なことはある。
 
かわいそうだが、諦めてもらうしかない。でも、動物が飼いたい今の気持ちは大切にしたい。そのため、私は代替案を沢山提示した。
最近よく動画で見ている、チンチラはどう? もしくは、ハムスターをもう1匹飼う? 前に、リスが可愛いって話もしていたよね。
インコや文鳥もいいんじゃない?
 
そんな話をしていたら、次第に次男の顔は曇り、ついには泣き出してしまった。
これは困った。私は次男に泣かれるのが本当に弱い。
これはもう、本当に腹をくくって、ヘビをお迎えするしかないのだろうか。だが、最後の最後に、もう一度だけ、次男の気持ちを確認しよう。
そう思い、一番飼いたいペットは本当にコーンスネークなのか聞いてみたところ、驚くべき答えが返ってきた。
 
なんと、本当に飼いたいのは犬だと言うではないか。
ではどうして最初からそう言わなかったのか聞いてみたところ、「お父さんが、犬が嫌いだから無理だと思った」そうだ。
確かに夫はヘビに限らず、あまり動物が好きではない。潔癖症に近いところがあるので、毛が抜けるのも嫌だし、手などを舐められるのも嫌いらしい。
確かにハムスターの世話をする私の姿を見ては、「ハムスターはケージの中にいるし、毛も抜けないし、何より僕は全く関わらなくていいから、ラクだ」と頻繁に言っていた。
 
次男なりに、ハムスター以外の動物が飼いたくなったけれど、動物が嫌いな夫のことを考えた上での、ヘビという結論だったようだ。
 
それがわかればこちらも対処が変わってくる。ヘビのために冷凍マウスを湯煎で解凍するよりも、犬を飼うように夫を説得する方がラクだ。
 
すぐさま仕事中の夫にラインでメッセージを送ると、ヘビのことが気になっていたのだろう、すぐに既読がついた。そうして、
「ヘビよりも、ワンコの方が我慢できる」
という返事が返ってきた。
 
 
そこからの、私の動きは早かった。次男が一番飼いたいと言うポメラニアンのブリーダーを検索した。すると沢山の子犬が並んだ写真から、次男が白いポメラニアンに一目惚れをし、次の日には見学に行くことに決まった。
次男の誕生日の頃に、その子犬が引き渡し可能な月齢になることもわかり、これはもう運命だと思った。
 
このような流れで、今我が家にいるポメラニアンは、我が家に引き取られてきた。
驚くべきことに、動物があまり好きではないと言っていた夫が、一番ワンコを甘やかせる存在になっている。最初は嫌だと思っていたことも気にならないくらい、ワンコが可愛いらしい。
ああ、ワンコになって本当によかった。ヘビではこうはいかない。
もしかすると、全てが次男の計画だったのではないかと思うこともある。だが、そんなことはもはやどうでもいい。
ワンコは今日も、平和そうな顔をして、テレビを見る次男の膝の上で昼寝をしている。
 
 
 
 
***
 
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2024-04-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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