自分のカラダを愛したい-私のゆるダイエット史
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:前田三佳(ライティング実践教室)
『太らない体のつくり方』
『1日2分で姿勢美人 やせヨガ』
『ダンベルフィットネス』
『ずぼらダイエット』
『耳のツボで痩せる』
『夫も痩せるつくりおきおかず』
出てくる、出てくる。まだありそうだ。
これらはリビングの私の書棚に並ぶダイエット本の数々だ。
気の毒な本たちは結局最後までまともに読まれることもなく、肩身が狭そうに書棚の隅でシンと並んでいる。
いっそ処分してしまえばいいものを、背肉が邪魔して着られなくなったお気に入りのワンピースのように、いつか日の目を見る気がして捨てきれない。
いったいお前の痩せたい願望は本気なのか? と自分に問うてみる。
はい本気ではありませんでした、先生。
この腹や背中のグワシとつかめる肉がその結果です。
私は本屋に行くとついふらふらとダイエット本コーナーに足が向いてしまう。
まるできら星のように、引き締まったカラダの美しい女たちがポーズをキメる表紙の数々。
『一週間で勝手に痩せていく』『下腹ぽっこり解消ダイエット』……。
なんて魅力的なタイトルなんだろう。
この本を真面目に読んで、真面目に実践したあかつきにはこんなスレンダーボディになれるのだろうか?
頭の中で夢想する。
いやいやお前、1冊たりともまともに読んで実践してこなかったろうが!
そうでした、そうでした。
そもそも根気がないこの性根が問題なのです。
でももしかしたら、この本なら続けられるかもしれない……。
かくして私の書棚にはもう1冊のダイエット本が鎮座することになるのだ。
私は還暦をとうに過ぎた女だが、生まれてこのかた「痩せた女」になったためしがない。
つねに「ぽっちゃり女」なのだ。
顔はまるく胸もある方なので、少々痩せても全体的にぽっちゃり感が否めない。
若い頃はそれでも9号サイズだった。あの夢の9号に戻りたいと思いながら、人生も終盤戦にさしかかってしまった。
だがこんな私でも過去に1度だけダイエットに成功したことがあった。
それは40代だったろうか。
ある日、いつも通っているスポーツジムで「ダイエットモニター募集」の張り紙を見た。
某化粧品会社が新商品としてダイエットクッキーを売り出すため、モニターとして3ヶ月協力するというものだった。
ジムに通ってはいるが、一向に結果が出ない私はこの企画に飛びついた。
3ヶ月間は運動を積極的に続け、1日3食のうち1食だけはそのダイエットクッキーに置き換える。
集められたメンバーはモチベーションを保つためグループ分けされ、グループ毎に結果を競う企画だった。
元々運動が苦手で好きではないが、痩せたくて通い始めたジムだ。
いつもはなんとなく筋トレ器具を使い、初級ヨガクラスに参加し、ちょこっと泳いで帰る。
それで痩せようという方が図々しい話だが、このモニターになった時ばかりは違った。
それまで参加したこともなかった「エアロビクス中級クラス」や「ズンバ」とやらにも参加してみた。
激しすぎてついていけないし、鏡に映る自分はめちゃくちゃかっこ悪いが構わない。
自分の汗がフロアに滴り落ちる様を私は初めて見た。
これが燃焼するということなのか。
その後トレッドミルで30分ウォーキングするか、クロールで500m泳ぐ。
私は取り憑かれたように、時間の許す限りジムに通った。
ただ辛かったのは置き換えダイエットだ。
ジムの休憩室で、ランチ替わりにボソボソ不味いダイエットクッキー6枚とプロテインを摂る。
ああ、いっそ隣のお蕎麦屋さんで鴨南蛮を食べて帰りたい。
ガストでとろりチーズがはみ出るハンバーグも素敵だぞ。
我慢すればするほど、いつもは普通に食べていたランチたちがまるで憧れの君のように頭をよぎる。
だが私はぐっとこらえた。
自分には甘いが、責任感だけは人一倍強い私はチームの足を引っ張りたくなかったのだ。
長い長い3ヶ月が過ぎた。
気がつけば私は痩せていた。
3ヶ月で6キロの減量だ。
3キロくらいだと人は気がつかないが、6キロの効果は大だ。
「痩せたね~」「キレイになったんじゃない?」
あんなにも欲しかった言葉を私はたくさん浴びた。
それだけで有頂天だったが、さらに思いがけないことがあった。
主催の化粧品会社の本社に呼ばれ表彰を受けたのだ。
チーム毎に落とした体重や体脂肪率、その他諸々の結果で総合的に判断された結果、なんと我々のチームが優勝だった。
頑張った甲斐があったというものだ。
社長から直々に盾と記念品を頂く。
記念品の袋はズッシリと重かった。
(きっと化粧品の詰め合わせだわ。これで当分買わなくて済む)
私は内心ほくそ笑んだ。
だが家で包みを開けてみると、中には化粧品ではなく小さなダンベルが2つ入っていた。重いわけだ。
笑った。
これぞ「取らぬ狸の皮算用」だ。
さらに盾だと思って開いた2つ折りのファイルには、ダイエット前と後の自分のレオタード姿の写真がA4サイズで貼ってあった。
少し痩せたとはいえ、モデルでもない普通のおばちゃんの直立不動のレオタード姿。
これ以上恥ずかしいものがこの世にあろうか?
私は即刻その写真を破り捨ててしまった。
これは現実を直視して、さらに頑張れというメッセージなのか?
私は無理だった。
己れのレオタード姿を直視することも、これ以上置き換えダイエットをすることも。
その後私の体重は1年ほどで緩やかに元へと戻り、その後は加齢とともにさらに燃焼しない身体へと突き進んだのだった。
そんな日々に新たなる刺激が訪れた。
「秘めフォト」撮影会だ。
私はスタッフのひとりとして、カフェオーダーを受けながら撮影を見学することができた。
どの女性も驚くほど大胆にカメラの前に素肌をさらす。
次々とポーズをキメる表情は底抜けに明るく楽しそうである。
この日のために腹筋を作ってきたという方もいれば、少しふくよかな方もいる。
それでもどんどん大胆に肌を晒していく姿は、誰もが間違いなく美しかった。
彼女たちと私が決定的に違うのは「自分のカラダを愛しているか否か」だ。
私は私のカラダに謝りたくなった。
親から授かり、怠惰な私を長い間見限りもせず動いてくれたこのカラダ。
見た目はともかく、意外と丈夫で大きな病気もしたことがない。
まずはこのカラダを認めて愛してあげなくてどうするのだ。
いっそこの先、一生ぽっちゃりでもいいのかもしれない。
痩せるよりもっと大事なこと。
それは1日でも長く健康で動けるカラダであることだ。
早足で海岸をウォーキングしながらそう思った。
やわらかな潮風に吹かれて歩けば、遙か遠くに富士が見える。
「やっと気がついたね」
神々しく光る山も海も空も、まるで私にエールを送っているかのように輝いて見えた。
***
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