メディアグランプリ

コンテンツクリエイターは料理人


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:服部達哉(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
 大量生産・大量消費ということが言われだしてどのくらい経つのだろうか? 大量生産・大量消費は豊かさだけでなく、環境問題や資源不足などの問題も引き起こし、持続可能な社会の実現に向け、国単位で取り組みが必要なほどの全人類的課題になっている。
 
一方、インターネットの普及によって、コンテンツの大量生産・大量消費もますます増える一方だ。消費すらされない、つまり最後まで読んでもらえない、聞いてもらえない、観てもらえないというのがクリエイター泣かせな、全クリエイターが取り組む課題の一つだ。
 
 「フードロス」ならぬ、「コンテンツロス」が起きているともいえる。フードロスは食べ残しもあれば、食べられる前に廃棄されてしまうものも含まれるそうなので、まさにコンテンツロスとは途中までしか消費されない、そもそも消費すらされないコンテンツということだ。ちょっと読んだ、聞いた、観たけど、最後まで読む・聞く・見るまでもない、というコンテンツと定義できそうだ。
 
 コンテンツの消費のされ方を考えるといよいよ食べ物との類似性が浮かんでくる。ジャンクフードという身体に害を与える食べ物に対し、何の役にも立たない情報、ジャンクコンテンツとでもいうもの定義できそうだ。ただ、身体に悪いものはおいしい! というのもまた事実であって、その点、ジャンクコンテンツも耳ざわりは良かったりする。
 
また、現代はコンテンツの大量生産・大量消費だけでなく、コンテンツの少量化・短時間化と加速消費が普及しているのも特徴だ。少量化・短時間化というのはX(旧ツイッター)のような短文のSNSや、ショート動画などのコンテンツ自体の分量が少なく、短時間で消費できるもの。食べ物でいうところのファーストフードや小腹が空いたときのおやつのようなもの。加速消費というのはオーディオブックや動画をx倍速して視聴することとここでは定義する。こういった加速消費は、再生時の映像や音声の不自然さを解消し、視聴しやすくする技術あってのことであり、現代的な消費のされ方だろう。コンテンツも早食いされてしまうのだ。
 
 生まれたときからインターネットが普及していたデジタルネイティブ世代は、他の世代が驚くようなコンテンツ消費をしている。彼らはドラマや映画など、本来ゆっくり観て楽しむようなものも倍速再生は当たり前で、結論・結末だけ視聴、なんてのも普通だそうだ。SNSではショート動画を高速にスワイプで仕分けていく。冒頭数秒、コンマ何秒のレベルで見続ける価値があるかどうか判断し、価値無しと判断したら次へ、次へとスワイプ、スクロールするそうだ。またはサムネイルだけで判断されてしまうこともあるので、コンテンツクリエイターとしては、サムネイル、冒頭数秒、コンマ何秒の戦いなのだとか。
 
 ただ、コンテンツの少量化・短時間化と加速消費というのはどの世代にも共通している部分があるといえる。ここでも食べ物との対比で考えてみると、コスパ・タイパという観点で語れそうだ。食べ物の場合、コスパ、つまりコストパフォーマンスが良いというのは、値段の割に美味しいだとか、値段の割に栄養価が高いだとか、値段の割に腹持ちが良いだとかが考えられる。一方で、加速再生によって短い時間でコンテンツを視聴できるため、タイパ、つまりタイムパフォーマンスのよいコンテンツ消費ということになる。
 
 何をするにも忙しい現代人にとって、時間術、タイムマネジメント、ライフハック、生産性向上などは人気のテーマである。現代人はやりたいことがあるのに時間がない、やりたいことのためにどうにか時間を捻出しようとするのだ。
 
 そんなに加速再生して捻出した時間で何をしているのかというと、他のコンテンツを消費していたりしないだろうか? とても視聴しきれない量のコンテンツがあふれかえっている現代では、加速再生、加速消費して次のコンテンツ、次のコンテンツとただただ消費を続けている人っていうのも案外多い気がする。これではコンテンツの暴飲暴食状態だ。
 
 暴飲暴食が身体に良くないのと同じように、コンテンツの暴飲暴食では果たしてそのコンテンツは心に響いているのか? 学びを得られているのか? 人生の糧になっているのか? と思えてくる。人生の糧、という言葉でも食べ物との類似性が浮き彫りになるが、お金や時間をかけて消費するコンテンツは自分の人生の糧にしたいものだ。ストレス解消のための娯楽コンテンツはもちろん必要で、消費すべきでもあるが、学びを得ようと思って視聴するコンテンツであればこそ何らかの学びを得たいもの。創る側からしたら、消費してくれた人の人生に何らかの影響を与えたいものだ。
 
 このような現代にあって、文章というコンテンツは最も消費に時間のかかるコンテンツの一つだろう。個人差はあれど、読むという行為はなかなか高速化が難しいものであるし、ただインプットしただけではダメで、食べ物を消化・吸収するように、インプットしたコンテンツは思考によって自分の脳に染み込ませる必要がある。
 
 消費(摂取といってもよい)に時間のかかる文章というコンテンツを最後まで読んでもらう、それもある程度の長さのあるものを。それはコース料理のようなもので、最初から最後まで流れがあり、順番に意味があり、残さず食べてもらうためには創意工夫が必要だ。母、彼女、妻などの手料理的な、特定個人に向けた文章。万人受けする行列のできるレストランの料理的文章。いずれにしても、届けたい、食べてもらいたい人(読者)を想像することが必要な点でも、食べ物とコンテンツ、その製作者である料理人とコンテンツクリエイターの共通点は多い。コンテンツクリエイターは料理人なのだ。願わくばコンテンツロスを招かないコンテンツクリエイターになりたい。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



関連記事