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情報の食べ放題、いつでもどこでも24時間営業中


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:庭田涼平(ライティングゼミ・4月コース)
 
 
気付けばいつからだったのだろう、食べ放題というものに魅力を感じなくなったのは。いや、嘘を付いた。正直に言えば、先日ある野球場へと行き、野球観戦を楽しむ中で体験したハイクオリティな食べ放題はとても楽しかった。野球を観ながらシェフが作る美味しい料理を好きなだけ楽しめるあの体験は、是非とも色々な方にその魅力を伝えたい。その一方で、私が魅力を感じない食べ放題というのは、さほどクオリティが高くも無いのに食べ放題コースを用意して、「ほら、お腹いっぱいにしなさい」「時間制限があるから急いで沢山食べて」と圧を掛けるような食べ放題。そんな食べ放題に行くと、ある程度は楽しめるのだが、食後に残るのは過度な満腹感とカロリー過多による罪悪感。そんな後ろめたさを感じることをこれまでの約30年で何度繰り返しただろうか。何度も罪悪感に苛まれ、へこまないお腹周りに促され、ようやく食べ放題からは卒業しつつある。けれども、私達はどうして「情報の食べ放題」からは卒業出来ないのだろうか?
 
スマートフォンの通知、際限なく次の作品がやってくるyoutubeのshorts動画、まとめサイトの記事、パーソナライズされて表示されるおすすめ記事。私もこうしたコンテンツを供給する側に立つこともあるが、現代はこういった情報で溢れかえっている。そしてこうした情報は、私達がアクセスしようと手を伸ばさずとも、情報の方から勝手に私達の元へとやってくる。まさに現代は、「情報の食べ放題」がそこら中に24時間営業しているようなものだ。
 
情報が多く供給されることで、選択肢が沢山手元に与えられることは良いことではある。だがそれが一つの罠であるように思うことがたまにある。例えば、私が自分の自己肯定感の低さに悩み、それを解決する答えを求めて検索エンジンに適当な単語を2,3つ放り込んで情報を探す。すると、企業が運営するサイトや個人が運営するアフィリエイトブログなどが、それぞれページにアクセスさせるために工夫を凝らしたページのタイトルが沢山目に入ってくる。すると私は、食べ放題のバイキングで料理を取るかのように、とりあえず目を通してみるかとそのページの大半を開いて読んでみる。ざっくりと読んでみてみると、なるほど、どれも言っていることはそれぞれ少しずつ異なるが、妥当なことを言っているように感じる。どの情報もそれなりに有意義なのである。そこで、その情報の山の中から吟味する作業を経て、自分が受け取る情報を得る。こうした作業を経て得られた情報は、自分の発想よりも客観的で妥当性のあるように見えるのだ。形は違えど、我々は毎日大量に供給される情報を受け止め、それら一つ一つに判断を下して取捨選択をしているのだ。
 
だが、これでいいのだろうか? と私はたまに思う。というより、気が付くとこの情報の食べ放題に苦しめられていることが多いのである。スマートフォンやパソコンの画面越しに見る情報はどれも妥当なように見えて、自分視点の意見をあっという間にかき消してしまう。正しい選択を下すために情報を集めていたはずが、次第に情報を集めることが目的となってしまい、いつまでも本来の目的が果たせない。際限なく情報が得られるが故に、もっと良い情報は無いのかと、本当にあるかも分からない完璧・ベストな情報を探し続けてしまう。知識欲の刺激や報酬系の活性化によってページを開く手が止まらなくなる。私はしばしばこうした状況になるのだが、この文章を読むあなたも心当たりがあるのではないだろうか? 食べ放題では腹八分に抑えておこうと賢く立ち回れる人でも、情報の食べ放題の前では、飽きるまで延々と、頭がパンクする寸前まで情報を詰め込んでしまう人が一定数居るのではないだろうか。情報を食べ物に置き換えて考えてみても、あまり幸せな状況ではないとよく分かるだろう。
 
しかも、この情報の食べ放題は一つだけではなく、私達の生活の中で何度も遭遇するものである。気を抜くと情報を無限に出してくる店に入店させられ、お腹いっぱいになるまで情報を食べさせられる、そんな状況が1日の中で何度も起こり得るのだ。そうすることで、私達にとって重要なことに向き合う時間や、自分の意見や心を大事にする余裕を奪っていく。情報に自らの心身と時間を捧げるうちに、情報でお腹いっぱいにさせられる。しかも、肝心な自分の人生は何も変化していないのだ。私もここ数年、自分の苦しい人生の状況を何とか打破すべく、人生を好転させるための一手を求めて情報の海に何度も飛び込んだ。だが、どの情報も妥当なように見えて、何が正しいのか分からず無駄に時間を費やしたのみだった。色々なことへの対処は上手くなったが、状況はさほど好転していない。
 
結局、「情報の食べ放題」とも言える現代の情報供給の状況は、人々を幸せにしているわけではなく、むしろ多くの人間を幸福から遠ざけている場合の方が多いのではないか。この状況下で幸福へと近づけている人間は、きっと情報を適度に遮断して、必要な情報を必要なだけ得る術を身に着けている人間が多いのだろうと私は推測している。食べ放題も情報のインプットも、「腹八分目」が宜しいということだ。私もこれからは腹八分で満足する脳みそを育てたい。あなたも、身の回りに溢れる情報との付き合い方を再考してみてはいかがでしょうか? 
 
 
 
 
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