ストリップで目を背けた部長から飲み屋でもらった不適切な名言
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記事:和福耳(ライティング・ゼミ4月コース)
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今から20年以上前、私が新卒で入社して数年が経った頃の出来事だ。
当時の私は、上司や先輩に恵まれ運良く早い段階で実績を上げることができていた。周りの同期に比べて重要な仕事を任せてもらい充実していた。ただ、上司や周囲から高い評価を得て自信がついてくると、若さゆえ次第に調子に乗っていった。気乗りのしない仕事については、上手に手を抜くことを覚えていた。自分の能力を過信し、仕事に対する真摯な姿勢を失いつつあった。
そんなある日のこと、会社の飲み会が開かれ、私は20歳以上年上の部長と隣同士で座ることになった。普段から人望が厚い部長が、いつもとは違う衝撃的な話を始めた。
「若手の頃に先輩に連れられてストリップ劇場に行ったことがあるんだ」
私は内心では部長が酔っ払っているのではないかと思ったが、ストリップに行ったことがなかったので、興味津々に部長の話に耳を傾けた。
「ストリップ嬢が目の前まで近づいてきてパフォーマンスを披露してくれたんだよ。でも、その時は恥ずかしさのあまり、思わず目を背けてしまったんだ」
「せっかくのチャンスなのに、もったいないですね」
と私が冗談めかして言うと、部長は笑いながら答えた。
「その通りだよな。あの時は、せっかくのチャンスを全力で楽しむべきだったよ。それに、こちらが全力で応えないと、ストリップ嬢は頑張りがいがないよな」
部長のまさかのエピソードを楽しく聞いていた私に、予想外の質問が投げかけられた。
「ところで、お前はストリップを全力で楽しめるか?」
ストリップに行ったことのない私は少し考えてから、なんとか質問に答えようとすると、不意に部長に遮られた。
「遊びに限った話ではないよ。仕事でも同じことが言えるよ」
部長の眼差しが明らかに変わった。まさかの話の急展開に意味が分からず驚いていると、さらに衝撃は続いた。
「お前は、与えられたチャンスを全力で楽しもうとしているのか? 仕事を任せる側の気持ちを考えているのか?」
部長の問いかけは、当時の私の胸に深く突き刺さった。
上手に手を抜いて仕事をこなしているつもりでいたが、部長にはお見通しだったのだ。今から考えると若手の雑な手抜きなど見抜かれて当然だが、当時の私にとっては驚きだった。
ただ、この問いかけは驚き以上の深い気づきを私に与えてくれたのだった。ストリップの体験談をもとに、私の仕事への姿勢を鋭く、そして分かりやすく指摘するための問いかけだった。せっかく期待して仕事を任せてくれる上司や先輩たちの気持ちを、私は裏切っていたのだと気づかされた。チャンスが目の前にあるのに、選り好みして全力で取り組まない私を戒めてくれたのだと目が覚めた。
たしかに部長は仕事にいつも全力に取り組んでいた。と同時に、部署の飲み会やバーベキューなど遊びの場でもいつも全力で楽しんでいたのだ。その結果、仕事は忙しく要求も高い職場だったが、部長は周囲からの人望は高かった。そして、部署は好業績で雰囲気も良かった。全力で楽しむ大切さを部長本人が体現していたのだった。
部長のストリップ体験談は、一見不適切に聞こえるかもしれない。現代の職場で同じ話をすれば、セクハラ行為として問題視される可能性がある。しかし、部長の真意は私の仕事に対する姿勢を正すことにあったことは間違いない。そして、姿勢を正すために直接的な説教をして私を戒めることはなかった。ストリップ体験談という衝撃的なフィルターを通して伝えたからこそ、私の心により深く響いたのだと感じている。
あれから私は仕事でも遊びでも、与えられたチャンスには全力で楽しむことを大切にしている。楽しみや喜びの感情を相手にしっかり伝えるように心がけている。
全力で楽しまないと、本当の楽しさや魅力が理解できない。全力で楽しむから、成長と成果につながると自信をもって人に伝えられるようになった。全力で期待に応える姿勢が、周囲との信頼関係を築くことを何度も経験してきた。
あの夜の部長との会話から20年以上が経った今、私は部長の名言を胸に刻み、日々仕事にも遊びにも取り組んでいる。そして、後輩たちにも真意を伝えることで、彼らの成長を支援していきたいと考えている。部長の言葉は、私だけでなく、多くの人々のキャリアと人生に良い影響を与えることができるはずだ。
今でもストリップには行ったことはない。これからも行く予定もない。
だが、ストリップは私の人生に大きな影響を与えてくれた。部長の一見不適切な体験談は、私にとっては適切すぎる名言として今も心に刻まれている。
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