メディアグランプリ

50代主婦、バンド始めました。


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:亀子美穂(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「バンド、やってみたい」
 
50代のおばさんが思いつくには、少し唐突すぎる願いでした。
それまで、バンドなんてやったことない。
若いころにロックにはまって、ライブやフェスに行きまくっていたというわけでもありません。
むしろ、厳しい親に、「ロックは不良が聞く音楽。ポップスや歌謡曲は低俗な音楽。クラッシックだけが正統な音楽」というゆがんだ音楽観を植え付けられ、バッハやベートーベンを聞いて育ちました。
 
そんな私がロックに目覚めたのは、50歳を過ぎてからです。
 
その頃の私は、人生に行き詰まりを感じていました。
 
「私は何のために生きているんだろう?」
思い悩んで、カウンセリングに通ったり、スピリチュアルの世界にのめりこんだり、占いにはまったりしました。
 
でも、どこか違う。
 
そんな中、たまたま動画で見た、ロックバンドのライブの様子に、心を奪われたのです。
激しいリズム。ひずんだギターの音。叫ぶような歌声。
それと一体になって揺れ動く観客。
久しぶりに胸が高まる自分がいました。
次々とネットでロックの動画を漁りました。
色々なバンドのいろいろな曲を聴いて、ライブにも足を運ぶようになりました。
 
そんな中で湧き上がってきた思い。
それが、自分もバンドをやってみたいという事でした。
 
観客でいるのも楽しい。
曲に合わせて見知らぬ人と一体になって気持ちが高まる感じはまさに爽快。
 
でも、それだけではなく、自分も何かを発信したい。
何かを表現したい。
 
でも、バンドってどうやってやるの?
全くの未経験の50代おばさんがバンドなんてできるの?
大体、どうやってメンバーを探すの?
 
学生なら部活があります。でも、社会に出て40年近い大人は? バンドをやっている友人がいたらいいのかもしれませんが、あいにくそういう知人もいない。いきなり暗礁に乗り上げた私。
 
わからないことは、ネットで調べよう。
調べたところ、ネットにはバンドメンバー募集のための掲示板のサイトがいくつかあることが分かりました。この他にも、地元の情報掲示板サイトでもバンドメンバーの募集をしています。どのサイトにもバンドが「ギターできる人募集」というように、足りないパートの人員を募集する掲示板と、バンドに入りたい人が「ギターでバンド加入希望」というように自分がやりたいパートを登録して、それを見たバンドからの勧誘を待つ掲示板があります。
 
ところで私、何のパートをやりたいの? カラオケが好き。でも、それだけでは難しい…子供の頃、ピアノを習っていて、大人になってからも何か趣味がやりたくて習ったことがあるのを思い出し、ボーカルとピアノ・キーボード希望で登録。この他の情報として、年齢と好みの音楽のジャンル、住んでいる地域などを登録しました。
 
私の登録を見たバンドからの連絡が数件、ありました。どのバンドも、キーボードの募集。私、一応キーボードって書いたけど本当は弾ける自信がない。ボーカルがいい…一件だけボーカルでお誘いがあったけど、「あなたのすばらしい声を求めていました! 僕はどんなジャンルの曲も書けます。二人で頂点を目指しましょう」とかいう大阪の男性で、明らかに怪しすぎる。やっぱり自分で入れそうなバンドを見つけるしかなさそう。
 
そこで、バンドのメンバー募集掲示板で、自分が入れそうなバンドを探しました。そこにはバンドのやっている音楽のジャンル、活動地域、プロ志向か趣味のバンドか、初心者OKか、メンバーの大体の年齢層などが書かれています。私と同じ年代の人のバンドも結構多くて、少し安心。若いころにやっていて、仕事や家庭に追われて辞めてしまったけど、定年近くなって老後の楽しみを考えてまた音楽をやりたくなった男性が多い。そういう人たちは、お金に余裕もあるので、若いころにあこがれていた高いギターとか機材を買っているというのは後で知った話です。しかし、これだけの情報で自分に合ったバンドが見つかるのでしょうか? でも、動かなければ何も始まらない。
 
とにかく、応募してみよう。
 
というわけで、募集しているバンドのうちの一つに応募。これから立ち上げるバンドで、女性ボーカル募集。みんなで一から成長していきたいというコメントに惹かれた。で、練習に行ってみたら、ドラムしかいない。マジか? 仕方なく、スタジオにあるキーボードで音を拾って、ドラムに合わせてほぼアカペラ。その後掲示板で声をかけたというベースが加入。こいつがとんでもない奴で、「ボーカルは華がないと」という理由で勝手に知り合いの若い女性を連れてきて、私は知らないうちにキーボード担当にさせられてしまいました。バンド内の雰囲気も悪くなり、連絡用のグループラインにはドラムとベースの罵詈雑言が飛び交うようになり、バンドはギター加入を待たず空中分解してしまいました。果てしない疲労感。もう、バンドは懲り懲り。
 
でも、これじゃ、バンドやったことにならない。
 
せめて全パートそろって演奏したい。できればライブもやってみたい…散々な目に合った私ですが、いや、だからこそ、意地になったところもあります。そうでなければ、今までやってきたことが無駄になってしまう。まずはバンドでライブをすることを目標に、考えを少し改めました。
 
まず、ボーカルにこだわらないことにして、キーボード募集で声をかけてくれたバンドの一つに、入れてもらいました。キーボード以外のパートはそろっていたので、全パート揃って演奏するという希望はすぐに叶いました。
しかし、キーボードには自信がなかった私は、思っていた以上に弾けない自分に愕然としました。しかしそこは練習あるのみ。今度のバンドのメンバーは生暖かく見守ってくれました。
そしてとうとうライブにこぎつけたのです。
小さいライブバーで、冷や汗をかきながらも30分ほどの出番を終えた時、何かをやり遂げた達成感に、全身で喜びを表している自分がいました。
 
そして、私はバンドを続けています。
へっぽこなキーボードも少しずつ上達しているように感じます。
これからどうなっていくのかわからないけれど、続けていきたい。
 
何かやりたいと思ったらまずは始めてみよう。
やらない理由はいくらでも考え付くかもしれないけど、やってみたら意外と簡単に乗り越えられる壁なのかもしれません。
最初に思い描いていたようにはいかないかもしれないけど、そこには確実に新しい体験が待っている。
それはきっと、ワクワクできる新しい道。
まずは一歩、踏み出してみよう。
 
 
 
 
***
 
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2024-06-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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