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新人仲居さんだからこその、魅力溢れるおもてなしを受けて


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:izmy(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 
初心者マークから連想することは「未熟」「不完全」だったりするが、その発想を見事に裏切られるようなサプライズを秘めていて、最も魅力的なのが「新人」なのかもしれない。
 
私を驚かせた「新人」さんに出会ったのは、静岡県の東伊豆エリアにある北川(ほっかわ)の高級温泉旅館。口コミも好評で、外観も落ち着いた素敵な佇まい。宴会場やエステルームなど人々が行き交うパブリックエリアにあるお部屋がこの宿で一番安い宿泊料金だったので予約した。
 
この旅館は、お部屋ごとにお迎えや配膳のお世話をしてくれる仲居さんがいる。おもてなしの旅館文化を大切にしており、仲居さんの存在をフィーチャーしていた。
仲居さんがいる格式の旅館には、これまで泊まったことがない。
心付けを渡したりするものなのだろうか……チップに慣れていない究極の日本人としてはドギマギしてしまう。ベテラン女性がてきぱきと働く仲居さんの様子を思い浮かべながら、ウェルカムドリンクを飲んでいると、やってきたのは名札に小さな初心者マークをつけた20代の小柄な女性だった。
「安いお部屋だから新人さんにあたったか」と少しがっかりしてしまった。
 
初々しさを残しながらも満面の笑みで明るく挨拶してくれた彼女は、俳優の福原遥さん似でとても可愛らしかった。荷物カートを押しながら、大浴場の場所や館内で催されるイベントを案内してくれる。頭の中で夕食までの過ごし方をシミュレーションする。「なんだか夕食まであっという間ですね」と話しかけると「いろんなサービスがあるので、どれも行きたくなっちゃって、忙しくなっちゃいますよね!」と笑顔ですかさず共感してくれた。
 
2階の客室は、以前は小さな宴会ルームだったのかもと思わせるシンプルな畳部屋だった。大きな窓に広がるのはどんより曇って少し灰色がかった海。お部屋から海が続いて見え、インフィニティプールのようだった。
 
仲居さんがお部屋にやってきて、夕食の配膳を始めてくれる。
北川温泉は、夕刻から夜にかけて、月明りが海を照らすムーンロードが有名である。ぜひとも拝みたいと、満月の日を狙って訪れたのだが、あいにくの雨。
「ムーンロードが見れず、残念」と話しかけると、仲居さんは眉毛をハの字、目じりを下げて、一緒に残念がってくれた。その後、場が明るくなるようにと笑顔で料理を紹介してくれたおかげで、すっかりお料理とお酒に気持ちが移った。品数も量も多く、おなかは120%だ。
「たくさんのお料理、全部食べてくださって、ありがとうございます! こんなに食べてくださる方に出会えて嬉しいです!」と空のお膳を下げながら褒めてくれる。
 
締めのごはんにさしかかるころ、仲居さんがお盆をもってやってきた。「綺麗に食べてくださるのが嬉しくて、料理長に喜びを伝えにいったら『ぜひこれも』と特別に作ってくれました! もうお腹いっぱいかもしれませんが、よかったら召し上がってください!」
 
料理長からのサービスは、伊勢海老の鬼殻焼きだった。
とても驚いたが、香ばしい香りで立派な焼き姿を目の前に、食べないという選択肢はない。身がたっぷり、甘みとコクを感じながら、人生で一番美味しい伊勢海老だ! と舌が喜んだ。
 
翌朝、仲居さんは「よくお休みになれましたか?」と笑顔で朝食を運んでくれた。
相変わらず灰色の海を眺めながら「海が広く見えて、晴れていたらもっときれいなのでしょうね」と話しかけると、
「私、このお部屋が一番好きなんです! 高層階も良いのですが、ここは、大きな窓にバーンと海が広がって、とっても素敵なんです」
すべての客室を知っている仲居さんの目線でも、このお部屋からの景色は格別らしい。館内で一番安いこの部屋を好きと言ってくれたことで、部屋のグレードがぐんと上がった気がした。
 
仲居さんが厨房に戻ったタイミングで母に話しかけた。
「仲居さん、すごくいい感じだよね。心付け渡したいけど、ポチ袋もってこなかった……」
「素で渡すのもあれだから、ティッシュに綺麗に包んで渡そう」
財布の中から一番綺麗なお札を取り出し、ティッシュに丁寧に包んだ。
 
仲居さんがお茶を持ってきたタイミングで
「ティッシュでごめんなさい、でも、あなたのおかげですごく楽しい滞在になったから、心ばかりですが……」
「わー! ありがとうございます。こちらこそ、優しくたくさん話してくださって、楽しかったです」
母はニコニコしながら「私も、もうひとり娘ができたみたいで楽しかったよ」と伝える。
ほんとだ。とても愛らしくて気の利く妹がいてくれたようだった。
 
完全に私たちのほうが高級旅館の初心者であった。あれから2年経った今、旅の思い出で真っ先に思い出されるのは仲居さんの笑顔。対応もスムーズで丁寧。きっと、新人さんだからこそ「目の前のお客さんを笑顔にしたい」とひたむきな気持ちで、ひとつひとつの会話を大切に、必ずポジティブ返しをしてくれていた。経験年数は関係ない。心からのおもてなしで、一緒にひとときを過ごしてくれたことを嬉しく感じた。
私も、感謝の気持ちを美しく伝えられるようになりたくて、次の旅先で素敵な仲居さんに出会えたときのために、和紙づくりのかわいいポチ袋をトランクに忍ばせている。
 
 
 
 
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