師走という贈り物──忙しい日々が教えてくれること
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:内山遼太(ライティング・ゼミ9月コース)
街を歩いていると、どこからか流れるクリスマスソングが耳に入る。商店街にはイルミネーションが輝き、手には大きな紙袋を抱えた人々が急ぎ足で通り過ぎていく。その光景をぼんやりと眺めながら、ふと気づく。「今年ももう終わりなんだな」と。師走──それは「忙しさ」という言葉が街全体を覆い尽くすような、不思議な季節だ。
あなたは年末になると、どんな風景を思い浮かべますか?カレンダーを見て「もうこんなに日が過ぎたのか」と驚く瞬間。それとも、家の中に漂う大掃除の匂いや、慌ただしくすれ違う人々の顔でしょうか。私たちはそれぞれの形で年の瀬を感じ、そして「忙しさ」の中に身を置きます。この時期、私はまるで駆け込み乗車をしているかのように、毎日を走り抜けている気がするのです。
仕事の締め切り、年賀状の準備、忘年会、大掃除。それに、家族や友人との年末行事も加わり、スケジュール帳は見るたびにびっしり埋まっています。時間に追われる日々の中でふと気づくと、カレンダーの残りがあと数枚しかない。そんな瞬間、一年の終わりを実感する。そして同時に、この慌ただしさこそが「年の瀬」という季節の象徴なのだと感じるのです。
なぜ師走になると、ここまで忙しさが増すのでしょうか。その理由の一つは、「区切り」を意識するからではないでしょうか。一年という時間をひとつの箱に詰め込むように、年末までに「やり残したこと」を終わらせたいという気持ちが、私たちを急かすのです。普段なら翌月に回しても問題のないタスクも、「年内に片付ける」というプレッシャーがかかると、急に緊急性が増すように感じられます。仕事だけでなく、プライベートでも同じです。「今年中に会いたい人」「今年中に感謝を伝えたい人」をリストアップし、次々に予定を詰め込んでいく。この一連の行動が、師走特有の「忙しさ」を生み出しているのかもしれません。
この季節の忙しさは、特別な風物詩と深く結びついているように思います。先日訪れた近所の商店街では、店先に門松が並び始めていました。普段は見慣れた街並みも、こうした飾りつけを見ると「年末が近い」と感じられるものです。買い物ついでに立ち寄った和菓子屋では、正月用の鏡餅が山積みにされており、その光景に心がほっこりと和みました。また、スーパーで流れる大売出しのアナウンスや、除夜の鐘の音が聞こえる頃には、忙しい中でも「非日常」を感じられる瞬間が訪れます。
忙しさが最も感じられるのは、やはり年賀状の準備です。今年も例年通り、机に向かって一枚一枚手書きでメッセージを添えました。最近はパソコンやスマートフォンで作成する年賀状も増えていますが、私はどうしても手書きの温かさにこだわってしまいます。一枚一枚名前を書きながら、今年お世話になった人たちの顔を思い浮かべるのは、ちょっとした感謝の儀式のようなものです。
書き進めていると、ある名前で手が止まりました。それは長く会えていない旧友の名前でした。忙しさにかまけて連絡を怠っていたことを思い出し、胸がチクリと痛みます。けれども、丁寧に文字を綴りながら、かつて一緒に笑い合った日々の記憶が蘇り、不思議と心が温かくなりました。その手紙をポストに投函した瞬間、何かを一区切りつけたような達成感を覚えました。
忘年会の帰り道、ふと立ち止まりました。久しぶりに再会した同僚たちと語り合い、笑い合った時間を思い返していたのです。「今年もお疲れ様」「また来年もよろしく」と交わした言葉には、何気ないけれど確かな絆が込められていました。寒空の下、街灯に照らされた商店街を一人歩きながら、その場の賑やかさと対照的な静けさが心地よく感じられました。忙しさの合間に訪れるこうした瞬間が、年の瀬ならではの特別なものだと気づかされます。
師走の象徴とも言える大掃除も、私にとっては一つの儀式のようなものです。今年はキッチンを重点的に掃除することにしました。冷蔵庫の奥に眠っていた調味料を処分し、油汚れがこびりついた換気扇を磨き上げます。手が冷たくなり、腰が痛くなりながらも、ピカピカになったシンクやガスコンロを見た瞬間、疲れが吹き飛びました。昼下がりの冬の光が窓から差し込み、綺麗になったキッチンを照らしています。その景色を眺めていると、忙しさの中に静かな充実感が生まれました。こうして一年の終わりをきちんと迎える準備が整うのです。
私が実践しているのは「年末リスト」を作ることです。一年間を振り返りながら、やり残したことや感謝の気持ちを書き出し、それを具体的な行動に落とし込んでいきます。今年のリストには「親への感謝を形にする」という項目がありました。私はささやかながら、両親を誘って年末の特別な食事を準備することにしました。当日、料理が完成したテーブルを囲み、笑顔で語り合う両親を見た瞬間、この一年間の忙しさがすべて報われたような気がしました。
師走の忙しさは、決してただの負担ではありません。それは新しい年を迎えるための準備のリズムであり、心のアルバムをめくるような時間でもあるのです。このリズムの中で、人は一年を振り返り、次の目標に向かうエネルギーを蓄えることができます。もちろん、忙しさに押しつぶされそうになる瞬間もあるかもしれません。しかし、その忙しさの中には、一年分の「ありがとう」や「頑張ったね」という気持ちが詰まっています。
忙しさの中でふと立ち止まり、目の前の一瞬を愛おしむこと。それが師走を充実した時間へと変える鍵なのだと思います。街中の賑やかさ、ふとした静けさ、そして除夜の鐘の音──そのすべてが私たちに「新しい年が始まるよ」と語りかけ、希望の扉を開いてくれるのです。
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