メディアグランプリ

その道は、自分が楽しいと思う道なのか?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:中川文香(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
 「でも結局、自分が“こうあって欲しい”と思うようなことを、やっていくしかないんだと思いますよ」
 その言葉を聞いて、頭をがんと殴られたような、本当にそうだよなぁ、とじわじわしみてくるような、文字にしてみると両極端だけれど実際感じた感情はそんなものだった。
 
 二年くらい前だろうか。少し寒くなり始めた頃だった気がするから、一年と少し、前くらいの話だったかもしれない。
 とある講演会に出るために、私は急いでいた。
 始まる前に別の用事があって、「開始時間ギリギリになりそうだな……」と少し焦りながら。
 地方に入り込んで、その土地で色々なことを仕掛けている方々のお話が聞ける会。
 ネットで見つけて、さんざん迷って当日に申し込んだものだった。
 
 「直前になってすみません」と言って駆け込むと、受付の担当の方がにっこり迎えて下さった。
 10人、20人いないかくらいの人が、長机のまわりを囲むように座っていた。
 空いている席に座る。
 間もなく、始まった。
 
 それまで私は、あまり講演会というものに参加したことが無かった。
 もっと言うと、20人くらいが定員の規模の小さめな会に出るということはなかった。
 そういう会では必ず発言しないといけないような、そんな圧迫感みたいなものがありそうで、「人前で自分の考えたことを話すのが苦手だ」と思っていた私にとっては、そこに行くまでにいくつもの高い壁がそびえ立っているように感じていた。
 そんな風に思っていた私が、なぜ「行こう」と思って申し込み、実際に開始時間が迫るのに焦りながら、それでも駆け込んだのか。
 それは、今思うと「何かを変えたい」と強く思っていたからに他ならないと思う。
 
 20代も終わり頃を迎えていて、私は何か色々なことに焦っていた気がする。
 
 仕事はがむしゃらにやってきたから、責任のあるポジションを任されるようになってきていた。
 求められることをひたすらやってきて、「よりよくする為にはどうするか」を工夫して進むことを大切にやってきていたけれど、だんだんとそれが二の次になっていき、気付いた頃には「なんとかこの仕事を納期内に終わらせること」が優先になり、「毎日の“やらねば”をこなしていくこと」がミッションになっていた。
 毎日をこなしていくのに必死だった。
 完全に、「自分で考えてやる」という仕事の仕方ではなかった。
 
 仕事に加えて、“このままここで生きていくのか”ということを、ぼんやりと考えるようになっていた。
 大学進学と共に地元を離れた私は、これからもこの生活を続けるのか、というのを30歳を目前にしてぐるぐるしていた。
 田舎から出てきて、都会の消費過多の生活に少し疲れを感じていたのかもしれない。今だったら分かる。
 
 そんな気持ちが奥底にあったからだろう。“ローカル”というキーワードに惹かれたのは。
 
 3人の登壇者のそれぞれの取組み、なぜその土地で活動しているのか、どんな気持ちで動いてきたのかがトークセッション形式で進み、私は聞き入っていた。
 3人共、自分たちでやりたいことを突き詰め、周りを巻き込み、3人それぞれが行きたい方向へ進んでいるという熱が伝わってきた。
 
 トークセッションが終わり、交流会となった。
 「今聞いた話がこんな風に面白かった」、「普段はどんなことをされているのですか」などと、登壇者や参加者とひとしきり話して、私はどうしても一人、お話してみたい人がいたので、思い切ってその人に話しかけてみた。
 イベントを主催していたAさんだった。いったいどんな人がこのイベントを企画したのか。
 
 「今回参加出来て本当に楽しかったです。私の地元も寂れてきていて、若い人が市外に流出していて活気が無くなってきています。どうやったら、人であふれて元気のある土地を作れるのでしょう?」
 
 そんな問いかけをして、返ってきたのが冒頭の言葉だった。
 
 “これが良い”と思うものは人それぞれ違って、例えば自分が良いと思うものを、他の人は嫌だと言うかもしれない。
 地域を活性化させようと思ったときも、「なんとかして元気のある状態にしたい」と思う人がいる一方で「このまま、今のままが良い。下手にかき回さないで欲しい」と思う人も必ず、一定数いる。
 何かをするにあたって、全員が全員満場一致なんてことはありえない。
 「“こんな町になったら良いな”という自分の理想に向かって歩いていったら良いんだと思いますよ。そうしたら、賛同する人たちがだんだんと周りに集まってくる。自分の味方が増えて、自分の良いと思う町になっていく。そうすれば、自分の考える“住みやすい、元気な町”になりますよね」
 
 あぁ、そうか。
 そうなんだ。
 なんでこんな簡単なことに気が付かなかったんだろう。
 
 自分が楽しいと思う町でないと、まず自分が住みたいと思わないではないか。
 自分の“こうあって欲しい”を追求していけば良いんだ。
 そうしたら、自分が心からおすすめできる町になる。
 自分の身近な周りから、手の届く範囲から整えていけば良いんだ。
 
 それは別にまちづくりに限った話ではなくて、仕事でも何でも同じだ。
 「何が求められているか」ばかりを追求するのではなくて、「こうあったら面白い」という自分の感覚を信じて進んでみること。
 自分の頭で考えて、気持ちを入れて、手足を動かして進んできた道だからこそ、「これが良いんだ!」と言えるようなものになるのだ。誰のものでもない、自分の責任で歩いてきた道だから。
 
 それから二年ほど経った今、私は地元にUターンして「面白そう」と思ったことに片っ端からチャレンジしている。
 あの講演会に参加した時には想像もしていなかった未来を今、生きている。
 ただ言えることは、あの言葉が私の中に大きなものとして残っていて、それを自分に問いかけながら進んでいるということだ。
 「それは、私が面白いと思うことなのか?」と。

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2018-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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