メディアグランプリ

お店作りで自分を観ること


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【9月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:横瀬 公紀(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
お店作りは本当に面白い。自分の取り組みが全てダイレクトに反映される。これが1番の醍醐味と言える。
今年の3月で某牛丼チェーン店の店長としてのキャリアを終えた。2015年から約3年。大学在学中の計5年(留年を含む)のアルバイトを合わせれば約8年にもなる。大学入学して程なく「自分の好きなまかないが食べられるところがいい!」と息巻いてラーメン屋とすし屋の面接を受けるも立て続けに落ちてしまい、自信をなくしつつもなんとか3つ目で拾ってもらった。
 
「お客様がご注文してから、最低1分以内で商品提供を求められること」が1つの指標でもあるからだろうか。他の飲食店で働いたことはないので比較対象はないのだが、さすがに牛丼チェーン店、入店して数ヶ月間はお店の運営スピードについていくのがやっとだった。お客様のご来店、注文取り、配膳、提供、会計、清掃と次から次へと場面が変わるのだ。同じ状況下でも先輩たちは平然とこなしていくが、私にはそのスピード感で処理できるイメージが全くなかったため続けていける展望が見えなかった。
よりによって覚えも悪く店長にも先輩にも呆れられて半年間ぐらいは叱られた記憶が大部分である。ただそんなこんなでもめげずに続けていくと変化もあり、できることも徐々に増えていく。時折お客様にお褒めの声をかけて頂いたり店舗のメンバーにも「良くなってきた」と言ってもらえるようなこともあった。
 
また3年ぐらい続けているとさらに状況は変わってくる。1つは環境。出来る先輩たちも大学卒業と同時に退職し、怖かった店長たちも人事異動でいなくなる。もう1つは私自身の成長。続けてきただけで自然と私がアルバイトの中でもトップリーダーとしての役回りが回ってくるのだ。私が運営の舵を取る。店長からは意見を求められる。主体性を発揮して関われることの面白さを知った。
 
この頃からアルバイトが面白くなりすぎて非常に力を入れていたように思う。面白いと感じるのは素敵なことで、努力したり頑張ることが耐える要素を含んでいるとするならば、そんな感覚でもない。「もっともっとこんなことできるようになりたい!」とマニュアルを熟読したり、オペレーションの技術を磨いたり、食材の知識、店長の仕事に対する考え方なんかにも関心がでて、シフト時間以外でも自分を前に前に打ち出して多くのことを吸収させてもらった。
 
すると次には何が起こるか。会社から声がかかり始める。「うちで働かないか?」と。出逢った社員さん(職位問わず)には全員からお誘い頂いた。これは単純に嬉しかった。ただの不出来なアルバイトが周囲から逆に必要とされるなんて思ってもみなかったからだ。丁度進路選択のときであり、どうやって生きていくか迷っていたが、1つの選択肢として意識し始めた。店長になるということは、店舗を持つこと。人、モノ、カネを任せてもらうこと。そう考えるとアルバイトながら、もっと変えたいことややりたいことがどんどん出てきた。しかし今の職務範囲ではできない。この想いを叶えるべく店長になる決断をした。
 
入社して研修期間と副店長の期間を経て、実際に店長として店舗に関わる上で明確に変わったことがある。それは店舗で起こる全ての問題には、店長が起因しているということである。鏡が自分を正確に映し出すのと同じで、店舗にも自分の姿は正確に映し出される。
つまりはどういうことか。前提としてアルバイトは店長のことをこと細かく観ている。一挙一足といってもおかしくないぐらいである。店舗の長は1人であるし、アルバイトにとって正解は店長だ。
 
例えば私の「いらっしゃいませ」の一言でも店舗は変わる。一言でもだ。お客様がエントランスにさしかかる第一声を狙って発声する。大きくはっきり少し声を高くして気持ちよく発声したときと、小さくぼっそり声も低く覇気がないときと。第一声に引き続きその他のアルバイトも発声するのだが、本当に面白いことにみんな釣られる。個人差はあれど、店長に釣られるのだ。極端な話、前者と後者の発声を交互に繰り返しても店内に響きわたる声は変わる。8時間の勤務時間元気に過ごしたときと、大変さを全面に出し過ごしきったときもアルバイトは同じようにその通りになる。店長が1人のアルバイトに対して言ったこともそれは店長の教えとしてお店に広まる。「店長言ってましたよね」という風にだ。正解に近付けようとアルバイトも頑張ってくれるので、結果的に行動から数値変化にまで繋がるということになる。お店という鏡を通して自分を見せられているような気がしていつも身の振り方を考えさせられていた。
 
この事実に気付いたからといって、どのお店でも全てがうまくいったわけではない。うまくいかないことのほうが多かったようにも思えるが、今でも最高の経験をさせてもらえたなと心から思える。最後のお店は一か月半で任期を終えた。本気も本気で取り組んだからか、毎晩のようにアルバイトたちと飲みに行っていたからか、寄せ書きをプレゼントしてもらい送別会まで開いて送り出してくれた。その日の送別会の終了間際、学生の女の子に言われたことがある。「店長はありがとうという言葉をよく使いますよね。そのせいかお店の雰囲気も良くなるし、楽しく運営できました。私もこれからはありがとうマスターになろうと思います」と。最後の最後にもお店作りから自分を観ることについて再確認させてもらった。

 
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

http://tenro-in.com/zemi/57289

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



2018-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事