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人生を変える趣味〜吹きガラスのススメ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:深井沙織(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「あれってさ、吸ったらどうなるの?」
私の趣味が何かを聞いた後、「へ〜!」と言って、この言葉を言う人はああ、経験がないのだということがわかる。
 
実際に目の前にしたら、それを吸ってみようなんて気にはなるはずがない。
2メートルほどの長さの鉄の棒は、半分から先を触ったら確実に火傷をする。その「吹き竿」と呼ばれる鉄の棒の反対の先には、1200度にもなる真っ赤になった溶けたガラスが巻き取られている。その竿が口元に来たら、吸うという選択などないとわかるだろう。
 
そう、私の趣味は吹きガラスだ。
もしかしたら、旅番組かなんかで見たことがあったりするかもしれない。
私も、初めて出会ったのは、箱根に旅行に行った時だった。
その時に作ったまるっこいグラスが愛おしくて愛おしくて、こんなに愛おしいものを自分で作ることができたら、さぞかし幸せなのではないか。
そう思って、吹きガラスを趣味にしようと決めた。
 
吹きガラスの体験をした人だったらわかるかもしれないが、体験だと、本当に簡単にステキなグラスが出来上がる。
ベンチに腰掛けて、口元まで運んでもらった竿を「はい、吹いてください」と言われたら吹き、「はい、もうちょっと吹いてください」と言われたらまた吹き。
「では、形を整えますね」と言われたら、軍手をした手の上に乗せた水を含んだ新聞紙の上を持って待っていると、その上を軽くガラスが転がる。「はい、口を広げるので、この道具をこんな感じで持っていてください」と長くて先の細いトングみたいなその道具(後にそれをハシと呼ぶと知る)を持って待っていると、グラスの口に当たる部分がその道具に触れ、そうすると狭かった口の部分がすーっと広がっていく。そして、あっという間に見本で置いてあった通りのグラスが出来上がったのだった。
 
これに気を良くして趣味にしようと意気込んで行ったガラス工房で、現実を知る。
 
そして、悟る。ああ、観光地の体験でのガラスの創作は、インスタントラーメンだったんだと。
 
お湯を注いで簡単に美味しいラーメンができたから、ラーメン屋になっちゃおう! って思った人くらい私は浅はかだった。
 
グラスを作るという全ての行程を自力でできるようになるのには、毎週通って2ヶ月ほどかかった。
 
溶けている1200度のガラスは、竿に巻き取った直後には、竿を回転させていないと水飴のように下に垂れていく。温度によっては水飴よりもっと早い。ゆっくり、同じ速度で回転しないと偏りができてバランスを崩し、制御不能になりやはりガラスは下に垂れる。
 
一番最初の練習として、丸い形のペーパーウエイトを作ったのだけれど、丸にならずに、ひどいものだった。
「箸」という道具で、竿に丸く巻き取ったガラスを竿から切り離すためにくくるのだけれど、いくらお手本の先生のようにやろうと思っても、全くできず。
丸ではない、変な筋の入ったガラスの塊を量産していた。
 
多分、私はセンスがなかったのだと思う。
 
初めて作ったグラスは、口が当たるところは分厚く、底はとても薄くて、安定の悪いとてもブサイクな代物だった。もちろん愛することなんでできない、そして使うこともできないものだった。
 
それでも、毎週通った。
通わずにはいられなかったのだ。
 
正直に言うと、ちょうどその時、私は人生のどん底を味わっていた。
どうしようもなくてなんとかしたくて、旅に出て、その旅先で、やっとつかんだものだった。純粋にやってみたいと初めて思ったものだった。
 
吹きガラスを始めて、私の人生が変わっていった。
お教室に通う仲間を通じて、現在の仕事につながっている学びを知ってその世界に入っていったし、友人に作ったガラスをプレゼントすることで、その友人のサロンで個展を開催させてもらえたし、その個展に来てくれた友人に誘われて、パリでガラスを展示販売し、現地の人に買っていただくということも経験した。
 
吹きガラスを趣味にしてからもう10年以上になる。
先生には「深井さんは、ちっとも上達しないけど、一番楽しそうにやっているね」と言われる。
 
ガラスは、実際に手に触れて加工することはできないけれど、工夫次第でどんな形にもなると言われている。
人生も自分ではどうすることもできないことはあるけれど、工夫次第で、どのようにもなる。
吹きガラスを作り始めてから、私の人生も創られていったように思う。
 
店は出せないけど、「なんかたまに食べたいから作ってよ、あのラーメン」くらいにはなれたんじゃないかな。
 
もし、あなたが人生を変えてみたいと思うなら、ぜひ、吹きガラスを体験してみて欲しい。その後どんな人生が形作られるのか、経験してみてください。

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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2018-09-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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