異国の空港に33時間閉じ込められたからこそ、得たもの
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記事:浅野純也 (ライティング・ゼミ平日コース)
この時は、仕事でロンドンに行き、帰る途中であった。日本と違い、ベタベタし過ぎない適度なサービスと人間関係が海外のいいところだなと思いつつ、電車の中から外の風景をみていた。
電車から見える、しんしんと降り続ける雪は、赤いレンガの屋根も灰色の地面も白く染めていった。ロンドンで雪が降るなど、珍しい。帰国の日に、このきれいな雪景色が見える幸運に感謝した。その後、不運に見舞われるとも知らず……。
空港に着いた。手続きをし、荷物を預けて、出国審査へ向かった。時間があったので、カフェで休んでいた。どうやら、雪で便が遅れているらしい。本を読みながら、ゲートが決まるのを待った。しばらくして、ボードを見に行った。さっきより、欠航が増えている。少し嫌な予感がした。
気が付くと、長蛇の列が見えた。最初はIの字だった。その後、恐ろしい事にUの字が出来ている。どんどんUが大きくなっている。とうとう私の便も欠航が決まり、私も急いで列に並んだ。入ってから6時間後の事である。7時間並んだ。夜中の0時が近い頃である。前の方で騒ぎ出した。警官のような人たちもいる。私の近くでも列から離脱が出ている。何かが起こっていると思いその憤慨している人に聞いた。
「何かあったのですか?」
「今日はもうクローズだから、ここから出て入国手続きのところへ行けって言ってる」
「ホテルか何か手配してもらえるのですか? 電車は?」
「さあ!?」
これは大変な事になった。どんどん列から離れているのは、そのためだとわかった。空港の人に聞いても、「もう終わりだから出て」といった事しか言わない。ひどい扱いである。日本であれば、少なくとも食事のチケットはくれる。私は列に並んでいたので、お昼から夜中まで何も食べていない。唯一食べたのは、カバンの中にあったポッキーだけである。その後も食べれないのだが、この時はまだ知る由もない。
その後も、入国手続きで並んだ。あまりにも、混んでいたので数時間後に通路の隅に行って、地べたに寝た。床がひんやりと冷たかったが、眠気の方が強かった。2時間寝て、また並んだ。翌日も朝の4時から並んだ。カウンターが開くのが4時なのである。結局、空港に33時間いることになり、そのうちの約半分弱くらいの時間は並んでいた。
英国航空がひどいのか、英国の空港がひどいのかわからないが、とんでもない目にあった。まともな食事もほぼ24時間できなかった。唯一食べれたのが、ずっとカバンに入れっぱなしになっていたポッキーだけであった。これほど、ポッキーに感謝したことはない。また、これほど英国航空を嫌になった事もない。もう二度と乗るものかと思った。
日本の航空会社のサービスの良さをこの時ほど、感じたことはなかった。結局、予定していたチケットの代替で乗るには、更に半日待たなければいけない事がわかり、そのチケットをキャンセルして、日本の航空会社にチケットを取り直したのであった。費用はかかるが仕方ない。日本で外せない会議があったので、それに乗らないと間に合わなかったのである。
特に日本の会社のサービスの良さを実感したのは、帰ってからである。予想したとは言え、スーツケースが戻ってこないのである。しかも帰ってきたのは、結局1週間後であった。ロンドンの空港に荷物が何千個とあり、荷物が見つかるのに4-5日かかったのである。これもまたひどい話である。すぐにでも、付け合わせしてほしいぐらいであったが、恐らく自分たちのペースでやっていたのであろう。列に並んでいる時も、「昼休みだから、カウンターも休み」とブーイングを無視して、勝手に閉じる。何時間も続く列があるのにだ。このような英国のサービスには、あきれるのを通り越して、あきらめていたのだが、そこへ来てこの日本のサービスである。
日本の航空会社は、そんな中も毎日進捗状況の連絡をくれた。まじめに毎日くれた。自分たちは、悪くないのに、いつも謝罪をしていた。英国の航空会社と日本の航空会社の違いの大きさを知ることが出来た一件であった。
海外で、あのような対応になれれば、そんなものかと思うのであろうが、日本のサービスを知ると、日本のサービスの素晴らしさが身に染みる。日常の中では、時々しつこいと思う時はあるが、このような困った時は、本当に感謝である。
改めて、日本のサービスが世界でも有数の素晴らしいものであるといった事を再認識したが、そのために33時間空港に缶詰め、16時間は立ちっぱなし。チケットも取り直しと、踏んだり蹴ったりであった。
でも、今でも思い出すのは、英国職員の「終わりだから出てって」と言う冷たい言葉と、日本の職員の「本当に申し訳ありません」と電話口で謝る言葉であった。海外に出てこそわかる、当たり前になっている日本のサービスの素晴らしさであった。《終わり》
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