メディアグランプリ

家に小さなスティーブ・ジョブズが舞い降りたと思ったら、大きなスティーブ・ジョブズまで現れた


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:加藤 智康(ライティング・ゼミ木曜コース)
 
 

8月も終わりに近づいて、子供たちがソワソワし始めたころのことだ。
例年よりも暑い日が続いていた。
エアコンもフル稼働で電気代もすごいことになっていた。
外は危険な状況だったので、外出も控えていた。
ところが、子供はせっかくの夏休みなので、外に出て遊びたくてしょうがないようだった。
 

子供って本当にすごい。暑い中近くの市民プールに出かけたり、児童館にでかけたり、底知れないエネルギーがうらやましい。しかも、遊ぶ時の集中力なんて半端ない。
体力も気力の充電期間も、大人のわたしに比べれば200%のスピードチャージだ。
疲れて寝ていても、ごはんの時にしっかり起きて元気もりもりで遊び始めるからだ。
 

そういえば、2週間前ぐらい前から、わたしに好きなジェットコースターを聞いてくる。
友達は〇〇遊園地に行ったとか、話題が遊園地に集中していた。
ご丁寧に、テレビではいつ録画したのか知らないが、お化け屋敷や絶叫マシンの話題ばかりが流れている。花火もあったと思う。
 

子供たちは純粋に、行きたいところ、やりたいことをアピールしてくる。
でも、簡単にそれをかなえてあげてはいけない。
世の中は、そんなに甘くないことを教えなければならないと思っている。
そのため、こちらからは、月末に遊園地に行こうか、なんて言うつもりはなかった。
うすうす気づき始めていたが、気づかないふりをすることにした。
しかし、直感的にわかりやすいアピールは気持ちがいい。
純粋な気持ちが前面にでていて、好きだ。
 

そして、しばらくすると気が付いたことがある。
子供が抜群の操作性を備えて進化していたことに。
コーヒーを作ってというと、すぐさま返事してコーヒーを作ってくれた。
こんなこと言うと良くないけど、この操作性は只者じゃないと思った。
動きもキレキレだ。よほど、何かを隠し持っていると思い、警戒していたのを覚えている。
 

さりげなく妻に聞いた。
 

「あいつらどうしたの? 」
 

すると妻は、「夏休みの思い出に、パパとどっかにでかけたいみたいだよ」と笑顔で答えた。
 

ここまでキレキレであれば、行きたいのは遠くにあるねずみランドか、はたまたUランドか。
 

本当に、このアピールがずっと続いてくれないかなと思った。
切れ味のするどい動きで、掃除もするし、お手伝いもする。
プロフェッショナルな動きに見えた。子供ながらに必死さが伝わってくる。
 

子供たちの本格的なアピールが始まって2週間ぐらいたったころのことだ。
スマートホンの動画も見せてきた。よくできたもので、音楽も流れているし、編集されている。文字も入っていて、実にわかりやすいプレゼンだ。
 

「夏の思い出作りで遊園地がいいと思うんだけど」
 

動画の中の子供たちが笑顔で歌をうたいながら、アピールしてきた。
まるでスティーブ・ジョブズのプレゼンのように思った。
直感的にわかりやすいし、子供のキレキレの動きも見たことのないレベルだった。
最近のスマートフォンのようだった。
 

自分も行く気になってきた。これだけ一生懸命アピールされたら、NOとは言えないと思った。
 

「よーし、遊園地行こう。どこがいい? 」
 

と、子供に聞いてしまった。でも、近くの遊園地だった。妻もニコニコして聞いていた。
意外に感じたのは、動画はもっと遠くの有名な遊園地の動画ばかりだったからだ。
 

それでいいの? と聞いたら、子供たちは乗りたいジェットコースターがあるから、近くの遊園地がいいという。日頃から親のお財布事情も考えてくれる子供たちは、気を使ってくれた。
いじらしくてジーンときた。かなり、覚悟していたのと、これまでのお手伝いの様子を見ていると、ねずみランドに行くのがふさわしいとさえ思っていたからだ。
 

子供たちは、「遠いと出費も大変だから、近くでいいよ。乗りたいジェットコースターもあるし」と言ってくれた。気遣いのある笑顔に、感動していた時だった。
 

妻が、どさっとテーブルの上に何かを置いた。
ねずみランド旅行計画表と書かれた紙の束だった。
 

え?
 

見ると1泊2日の旅行行程がびっしり書かれていた。
子供たちもそれを見て驚いていた。
「え、ママ、ここお金沢山かかるよ」
 

「いいのいいの、パパはもう行く気になっているから大丈夫」とこちらを見てウィンクをしてきた。ニヤリとした笑顔に見えた。
 

とまどいを隠せなかったが、すべてのからくりが解けた気がした。
前々からねずみランドに一番行きたがっていたのは、妻だった。
妻が子供たちをそそのかしてプレゼンさせて、わたしをその気にさせたとしか思えない。
そうであれば、全て納得できる。見事に作戦は成功だった。
 

真のスティーブ・ジョブズは妻だった。わかりやすい子供を使ったプレゼンに、最後にサプライズを隠していた。くやしいけど、この計画に乗りたくなっていた。
これも、わたしが賛成しやすいようにうまく段取りしてくれたことだと思う。
あくまで、決断したのはパパってことにしてくれたことに感謝しかない。
 

「よーし、ママの計画表どおりに、ねずみランドに行こう」
 

「わーい、パパありがとう。大好き」
 

みんなの一番の笑顔が見えたときだった。
***

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2018-11-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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