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なんか知らんけど、結婚30周年


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記事:けんもつ(ライティング・ゼミ土曜コース)
 
 
平成元年、私の両親は結婚した。
今年で結婚30周年、真珠婚と呼ばれる節目の年だ。
 
そんな両親の娘である私には、これから結婚を考えているパートナーがいる。だから、夫婦が長続きする秘訣をぜひ知っておきたい。
先日、母に「夫婦円満の秘訣は?」と聞いてみたのだが「なんか知らんけど、よく続いたなぁ〜」と、気の抜けた返事が返ってくるばかりだった。
 
本人たちが気が付かないほど、お互い自然体でいられる関係だから30年も続いた、と一言で片付けてしまえば、それまでだ。だけど、やっぱり何か秘訣があるに違いない。そこで、結婚生活30周年夫婦の円満の秘訣を、娘の視点から推察したいと思う。
 
・夫の姿勢は「スルーと忠誠」
父は、事あるごとに母に怒られている。それも、子供のような理由で。
この間は、糖尿病の気があるのに、買い物カゴにバナナをまるごと一房忍ばせたのがバレて怒られていた。
 
今日も今日とて、母の怒号が飛ぶ。けんもつ家の日常だ。
 
怒られた父の反応は、大抵「スルー」だ。完全なる無視というよりは「そう?」とか「なぁに?」とか、形だけ反応を見せつつのスルー。なかなか高度な技術である。
そんな父の態度を、母は「のれんに腕押し、馬の耳に念仏」と半ば諦めつつある。
 
でもこのコミュニケーション、第三者から見ると意外と健全だなと思う。母にとっては、受け入れられるかどうかは置いといて、不満を我慢せず口に出して相手に伝えているわけだし、父は持ち前のスルースキルのおかげで「また怒られる」などのストレスは一切なく、自分の好きなように生きているだけだ。
 
父を表現するとしたら、良く言えば仏。
悪く言えばキャパが無限にあるサンドバッグ。
これらが適切な表現だと思う。
 
ただ、父の名誉のために言っておくが、彼の態度のベースには「忠誠」がある。
 
母が「迎えにきて」と言えば、父はすぐさま車を走らせるし、「ここに一緒に行こう」と言えば返事は必ずYESだ。
 
ベースに忠誠があるからこそ、母も普段のスルーに関して「そういうものだ」と諦めがつくのでは無いだろうか。
 
・コミュニケーション好きの妻
我が家は父、母、兄、私の4人家族だが、おそらく家族の中で母が1番よくしゃべる。
最近あったおもしろ話や、テレビで仕入れた情報を家族に報告し、テレビにすら話しかける。いつだったか、母がどのくらい無言でいるかをこっそり計測していたのだが、1分と待たずに何か言葉を発していた。
 
母はコミュニケーションが好きだ。
そう言うと、知らない人にもガンガン話しかけるおしゃべり好きなオバちゃん、とイメージされかねないが、決してそういうタイプではない。
信頼を寄せる人に対しては、積極的にコミュニケーションを取りたいタイプなのだと思う。
 
父はというと、元々バリバリの営業マンだったので、初対面の人や関係の浅い人に対しても世間話ができるイメージだ。ただ、家庭での口数はそれほど多くない。母が発する言葉に対して、「うん、うん」と相づちを打っている場面をよく見る。
 
このバランスが2人にとっては丁度いいのかもしれない。もちろん、世の中にはお互いがおしゃべりの夫婦もいるし、黙っていても通じ合っている夫婦もいる。ただ私が見る限り、妻が楽しそうに話す様子を静かに受け止める夫、という図は、平和な家庭を体現しているように見える。
 
・夫婦の前に、カップルである
カップルと言っても別に、今でもお互い名前呼びとか、スキンシップが多いとか、そういう意味ではない。というか日本人の私としては、そういう両親の姿はできればあまり見たくない。やってもいいけど、見えないところでやってくれという気持ちだ。
 
じゃあどういうことかと言うと、例えば、荷物は全部父が持つ、お酌は必ず母がするなど、普段の何気ない行動の中に、2人はお互いを尊重し合う男女なのだと感じる行動が根付いている。
 
夫婦である以前に、カップルという期間を経た2人である。やっぱり根っこにはその関係性があって、お互いを信頼するとか、大切にし合うとかいう姿勢は、夫婦になっても続いていくべきなのだと思う。初志貫徹、初心忘るべからずというやつだ。
 
あれやこれやと推察してみたものの、両親とまったく同じことを試して、私がパートナーと30年夫婦生活を続けられるとは限らないな、と思った。
 
だから両親の姿はあくまで、数ある夫婦像の1つとして捉え、私たちは私たちなりに、円満でいられる温度感を探りながらやっていけば良いのだと思う。
 
きっと父も母も、そうやって自然体を獲得してきたのだろう。
 
ところで旅行好きの母はよく、「お父さんしか一緒に行く人がいないから、仕方なく2人で行ってくる」と言い、夫婦で旅行に出かける。そして、ちゃっかり2人で顔ハメパネルから顔を出したツーショットを撮って、私に見せてくる。
 
なんか知らんけど、今日も楽しそうでいいなと娘は思う。
 
 
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2019-02-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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