メディアグランプリ

休む勇気


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:清水陽子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 

2019年3月6日午前3時過ぎ、アレはやってきた。
 
「だから、うっ……痛い。アレで、そう頭が。無理。動けな……飲んだけど、遅かった」
これは、第1波が来てから、私が母にかけた電話だ。その時に、私の顔の右半分は、涙と、鼻水とよだれでぐちょぐちょだったが、それを拭く気力さえなかった。

アレというのは、「群発頭痛」という私の持病のことだ。
発症したのは、私が20代前半の時だった。
最初は、激しい痛みで、頭というより頬骨、おでこが割れるように痛く、目の奥の方に激痛が走って、本当に「死」を意識した。
フローリングの上をのたうちまわり、発作のような痛みが繰り返し続いた。
自分でも、これはちょっとおかしいと思い、「脳出血」「くも膜下出血」「脳腫瘍」なんていう病名が頭をかけめぐり、救急車を呼んだ。
ただ、いくら精密検査をしても異常が見つからなかったのだ。
 
病名がつかないというのは、結構不安なものだ。
総合病院では、どうにもならなかったので、脳神経外科の専門病院に行った。そこで、群発頭痛という病名が下された。まず、この病気は珍しいこと、死ぬことはないこと、禁酒、頭痛を誘発しやすい食べものを摂取しないこと、などが医師から告げられ、薬が処方された。
 
その後も何度か発作はあったが、常に薬を持ち運び、対処法を学びなんとか上手く付き合ってきたつもりだった。
発作を起こすと、母が献身的に看病してくれることも助かった。
 
もう3年近く発作は出ていなかったから、私も少し慢心していたのかもしれない。
仕事の疲れや睡眠不足、人間関係のストレス、季節の変わり目、それでも頑張らなくちゃいけないという呪いのような考え方。
トリガーは十二分にそろっていた。だけど、私は休むことを軽視した。というより、休んでしまう自分は弱くて嫌いだったのだ。
 
多くの人は、スマホを持っているだろう。出かける時に、スマホを忘れたりすると大変な思いをした方も多いのではないだろうか。
私だったら、アイツを失くしたり、壊れたら最悪な気分になる。
私は昔、iPhoneをご臨終させてしまったことがある。今思うと、あの時iPhone側からは何回も緊急メッセージが発せられていた。例えば、バグやフリーズが多くなってきたり、バッテリーの減りが急に早くなったり……。なんとなく、嫌な予感はしていたが、機種変しにいくのもめんどくさかったし、多くの写真をパソコンに移すのも後でやろうやろうと思いながら、そのままにしていた。
そうやって、なんとか綱渡り状態で使った結果、ある日どこのボタンを押しても、私のiPhoneは応答しなくなってしまった。
壊れるまで、酷使して使う人は少ないかもしれない。でも、オーバーヒートの経験はあるのでは?
オーバーヒートというのは、簡単にいうと、スマホでもパソコンでもキャパ越えすると機会が熱気を帯びてしまう現象のことだ。
これは、電子機器からの「声」だ。ここを無視して、オーバーワークを続けさせると故障を早めることは間違いない。それでも、私たちはその「声」を、軽視してしまう傾向にある。
 
それは、「人間の脳が案外だまされやすいから!」
 
私も、今回の群発頭痛の発作が出るまでに、体は機械と同じように、いやそれよりも必死に「こころ」に「声」を何度も発していた。
「今日はゆっくり休むこと!もう、すでにヘトヘトじゃん。休まないと、もっと大変なことになるよ」と。
でも、私は目の前のことしか見えていなくて、「大丈夫、大丈夫。このプロジェクト終わったらね」とか、「疲れて、めんどうだけど、一応知人の結婚式の二次会に顔だしておかないとさー」なんて調子でいたのだ。
そうやって、「声」を無視し続けると、おバカな脳は「なーんか、大丈夫ぽい気分」に陥ってしまう。だけど、本当はそうじゃない。自分が思っているよりも、断然キャパシティの小さい私の脳はオーバーヒートしてしまう。(風邪や知恵熱もこんな具合で起きているんじゃないか?)
 
だから、私は提案したい! みんな「休む勇気」を持とうと!
「嫌われる勇気」というベストセラーが数年前にあったが、それに「休む勇気」が加わったら、鬼に金棒だ。
 
もちろん、サボりを推奨しているわけではない。
だけど、日本人は国民性からして、とても生真面目な性分だと思うから、案外ラテン気質を見習うのもいいと思う。シエスタ(ラテン地方のお昼寝の習慣)を取り入れたら、効率がアップしてという会社もあるらしい。
 
自分が休むと穴があいてしまうという理由で、頑張ってしまう人も多い。でも、よく考えてみればオーバーヒート状態の脳ミソは多分あまり仕事には使いものにならないから、長期スパンで考えれば、少し休んだ方がコスパはいい。
機械でも人間でも、120%は論外だが100%の容量を全て使ってしまうと、効率よくサクサク機能しない。70パーセントくらいを目安にして、ちょっと空き容量がある方が力が発揮できるらしい。
 
そう考えると、丸々一週間寝込んでいた私は、迷惑をいっぱいかけたし、悔しい思いもたくさんしたけど、人生のコスパで考えたら間違いじゃないはず、だと信じたい。
今度は、身体からの「声」をきちんと「こころ」で聞いて、早めに対処するという教訓付きですけど。

 
 
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2019-03-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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