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メディアグランプリ

子は親を超えていくもの


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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髙山彩子
ライティングゼミ日曜コース

「実印押してほしいんだけど」
久々の息子からのラインはいろいろ足りていない。

いやいや、いきなり押せないし。何の書類に押すのか教えてよ。と画面に突っ込みながら、
「何に使うの?」
「友達とシェアハウス借りるから」
なるほど、不動産契約のためだったのね。ていうか引っ越すのね。話す順番もおかしいよね。大人になったと思っていたけどまだまだ子供だなぁ。

今年から寮を出てシェアハウスに友達と二人暮らしをすることにしたそうだ。そこからはそのお友達のおうちの方とのやり取りなど、サクサクと話が進み、いざ引っ越し。息子たちが住まうのは学生用とあって、洗濯機や冷蔵庫などの家電はあるし、スペースもまぁまぁ広い、ただものすごく古い、昔の「借家」のような作りの一軒家だった。

ままごとのような準備の仕方にニヤリとしつつ、彼らのプチ引っ越しを手伝った。まだまだ生活するには物が足りないので、2家庭で買い出しに。

荷物を持っていると、
「(車の)鍵、貸して」と、私の荷物をひょいと持ち上げて、すたすたと車に向かい、置いてくる息子。
ちょっとよさそうな方を選ぼうとすると
「もったいない、いらない」と息子。
なかなかいいところあるじゃない。子供だけど、ちゃんと成長している。彼なりに色々考えているんだなぁと感心した。

息子は私にとっては初めての子供。彼と経験することは、私にとっては親として初めて経験することばかりだった。「赤ちゃん=幸せ」の図式があった私は、子供を産んで、そんなの嘘だと思った。本を読んでも現実とのギャップに苦しむばかり。彼の子育てで嫌というほど自分の情けなさ、至らなさを知った。自分は子育てには向いていないと思った。自分以外の世の中すべての親が、素晴らしい立派な人間に見えた。自分だけが置いて行かれる感覚に悩んだ。子供をかわいいと思う心さえ疑った。真っ暗なトンネルを手探りで進むしかない、孤独な日々だった。そんな自分を知られないように心に鉄の鎧を着せた。平気なふりをしていた。
息子は私にあまりなつかなかった。その分、同居している両親や夫が息子をかわいがった。二人目に授かった娘は息子の分までと愛情を注いだ。同じように愛情を注いであげられない息子に、ずっと申し訳ないと思っていた。本当は、もっと優しいお母さんでいたかった。

幼稚園や小学校で、息子はとにかく人とぶつかった。学童に入った時、
「家でもいつもこんななんですか? お母さんは怒らないんですか?」
と言われた。

小4の時、
「僕は人に暴力を振るいません」
と書いた紙を、名札を隠すように貼って帰ってきたことがあった。そのまま1週間つけ続けていた。息子は指をかみすぎて、指先が真っ赤にすりむけていた。私は息子を抱きしめて泣いた。心がえぐられるようだった。

10歳の時、学校の「1/2(にぶんのいち)成人式」で息子に手紙をもらった。いつも怒ってばかりいるお母さんにどんな手紙を書くだろうと、内心ひやひやしていた。恐る恐る手紙を開くと
「いつも笑ってて、楽しくて明るいお母さん」
と書いてあった。目を疑った。いつもガミガミ怒ってばかりなのに。息子に愛されていないと思っていたのに。拒否されていると思っていたのに。

そんな時、仕事上「教育コーチング」を知った。私は私の「在り方」を見つめるようになった。息子の存在そのものをいとおしく感じられるようになった。いや、もともといとおしかったのだ。ただそれを感じることができなくなっていただけだった。「育てなければ」という責任感が、親としての自信のなさが、その邪魔をしていただけだ。

「人とぶつかってばかりいる子」は、正義感が強くてまじめな子、間違ったことが許せない不器用な子、理不尽なことをされている人を全力で守ろうとする子に、書き換えられた。
ふざけてばかりいて、楽しいことが大好きで、体を動かすことが好きな活発な子なのだ。

今でも息子は人とぶつかることがある。それでも私は彼を信じられる。甘やかしと言われることもある。悪いことは叱る。ぶつかるにはそれなりの理由がある。それをまず知りたいと思うようになった。何を考え、信じているのかを知りたい。
人とぶつかりながら、息子は育っているのだ。とてもあぶなっかしくてハラハラするが、大丈夫だと信頼すると、いろんなものが見えてくる。彼の体験を通して一番育っているのは親の私だ。

中学卒業後、進学で寮生活になった息子。そんなに早く息子を手放すと思っていなかった私は正直焦った。まだ早いと。ところが息子はあっさりとその不安を乗り越えた。

私たちは子供を育てているのではない。子供が親を育ててくれている。子供は自ら育っていくのだ。そして親を超えていくもの。
中学卒業から4年、引っ越しを手伝いながら、息子たちのこれからにワクワクした。
 
*** この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。 https://tenro-in.com/zemi/70172

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2019-03-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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