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フリーアドレスオフィスに変えたら何が起こったか?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:落合功男(ライティング・ゼミ日曜コース)

「フリーアドレスのオフィスって、あの浮ついたIT企業みたいなやつ?」
昨年から始まった働き方改革の目玉として、オフィスのフリーアドレス化を提案した時のT部長の反応がこれだ。
浮ついたIT企業って、どんな会社だよ。

「そもそもフリーアドレスって何だよ、どんなメリットがあるんだ?」
明らかに不信感いっぱいの表情のT部長に、丁寧に説明する。
「ええと、フリーアドレスはご存知のように、固定化した自分だけの席で働くのではなく、社員が自由に働く席を選択できるオフィススタイルです」
そんなの知ってるよ、とジロリと睨むT部長。
「これまでのオフィスでは、決められた机、閉鎖的な固定化した席で、毎日毎日、同じ部内の同じメンバーで業務をこなしてきました」
そう話しながら、学校の職員室のように薄暗く陰気なオフィスを指し示す。
「決められた作業を効率良くこなすには、それで良かったのかもしれません。でも、新しい価値を世の中に生み出すためには、部門を超えたネットワークを育み、役職や所属の異なるメンバーが、一緒に知的創造を行うオフィス空間が必要だと考えました」
「うーん、部門を超えたネットワークねえ……」
T部長は、地方都市の寂れた図書館のような我が社のオフィスを想像し、深くため息をついて目を閉じた。
ひたすら己の作業に没頭し、全くコミュニケーションの無い事務所。
うっかり話し掛けられない緊張感が漂い、これでは部門の垣根を超えた関係も生まれず、新たな発想など生まれてくる訳がない。

なんとかプロジェクトスタートの許可を得るが、諸手を上げて賛成する人ばかりではなく、なかでも一番の抵抗勢力は営業部だった。
鬼軍曹と言われる叩き上げのK部長が率いる営業部隊は、部下がバラバラになったら力を発揮できない、チーム力が落ちると言って大反対だった。
うちの部だけ今のままにしてくれと、強硬に主張する。
「もちろんフリーアドレス化が万能だとは思っていません。より良いオフィスにするために、アドバイザーとして、プロジェクトチームに入っていただけないでしょうか?」
営業部のなかでも、一番の抵抗者であるナンバー2のY課長も、初めは渋々参加していたが、去年配属されたばかりの新人社員、中途採用されたシステムエンジニアなど、いままで全くコミュニケーションを取ってこなかった他部門のメンバーとミーティングを重ねるうちに、頑なだったY課長の意識に少しずつ変化が起こってきた。
建設的な、熱意のある意見を交換し合い、内々のメンバーだけでは出ない発想や情報に接し、プライベートでのつながりも増えてくるにつれ、世代や部門を超えた新鮮な発見や驚きが増えていった。
「これが、この化学反応が、毎日オフィスで起こるかもって考えたら、楽しくないですか?」

フリーアドレスオフィスへの模様替えは、全員が退社した金曜の夜から工事を始めた。
当然、我々だけでは難しいため、フリーアドレス化のノウハウを持つ文具会社の力を借りた。
最適な書庫や専用棚の設計、出勤したら席がランダムに決まるシステムの導入、
ワークスペースの合間に立ったままミーティングができる立ちカウンターの設置、ホワイトボードを中心に座って打ち合わせができる隠れスペース。
意外にもスタバ好きなY課長の発案で、イスは全部違う色の北欧デザインのオシャレなソファーになり、グレーの事務机は美しい白木のカウンターに変更され、全体的にネズミ色だった事務所がインテリアのショールームに変身した。

日曜一日かけて書類廃棄からパソコンなどのセットまで完了した。
固定した自分の席が無いということは、いままで机の上に積んでいた書類や、引き出しの中に何年も眠っていた資料を置く場所も無くなる。
何年も何十年も誰も見ることのなかった書類、誰のものかもわからないため、誰も捨てることができなかった備品も思い切って廃棄することができ、オフィスの断捨離が格段に進んだ。

月曜の朝、不安げに入ってきた社員達の顔がパッと明るくなる。
「スタバで働いてるみたい!」
「反省部屋みたいに重苦しい事務所が嫌で、近くのカフェに逃げて仕事してたけど、ここなら出勤するのが楽しみになりますね」

フリーアドレスにした最初の変化は、紙の書類を持たなくなったことだ。
持ち運びができないから、必然的にパソコン内やクラウド上のフォルダに格納する習慣が根付き、印刷費が大幅ダウンした。
机の上を遮るものが無いから、自然とその日のメンバーと会話が弾む。
それまでは、他部門に用事があるときは、勇気を出してドアを開け、部外者をジロリと睨む不機嫌な社員達に怯みながら、居心地が悪い思いをしてようやく要件を話す有様だった。
でも今は、左右見渡すと、どこかの部の誰かがそばに居て、すぐに話し掛けられる。その人が担当ではなかったとしても、近くにいる同じ部の人が声を掛けてくれる。

もちろん好意的な意見ばかりではない。
一番の抵抗勢力だった鬼軍曹のK営業部長も、目の届く範囲に部下全員が揃っていないことが、やっぱり気に入らないらしい。
ただ、明らかに良くなった他部門との連携は認めているようだ。
 
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2019-03-21 | Posted in メディアグランプリ, 投稿

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