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「せっかくだから」は、魔法の言葉


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記事:與十田喜絵(ライティング・ゼミGW特講)
 
 
「せっかく長崎まで来たんだから、名物のちゃんぽんを食べていこう」
 
「せっかく松山にいらしたなら、坊ちゃん温泉に入っていってください」
 
「せっかくだから」という言葉がつくと、その場所、その状況のスペシャル感がぐっと増して、何か行動を起こす良い理由、動機となる。
 
同じ状況であったとしても、「せっかくだから」をつけると、物事の見え方がぐっと違ってくる。まるで「魔法の言葉」のようだ。
 
こう気づかされたのは、先日テレビで有森裕子さんのインタビューを見たときのことだ。
 
陸上女子長距離の名指導者、小出監督がお亡くなりになったことを受け取材に応じていた有森さん。涙をこらえながら語っていた言葉に「せっかくと思え」というフレーズがあった。
 
小出監督から指導を受けたマラソンで、1992年のバルセロナ五輪で銀メダル、1996年のアトランタ五輪で銅メダルをとった有森さん。かつて故障したときに小出監督からから「物事には意味のないものはない。だからどんなことが起きてもせっかくと思え」と励まされたのだそうだ。
 
アスリートにとって、故障は選手生命に関わる、もっとも避けたいネガティブな事件だ。そのネガティブな状況に対して、
 
「せっかく故障したんだから今しかできないことをしよう。せっかく神様が休めと言ってくれているんだからしっかり休もう」
 
と、「せっかくだから」という魔法の言葉によって発想を切り替えさせたのだ。
すごい。
 
有森さんはインタビューで、「監督からの一番の言葉」と涙を流しながら感謝していた。
私は、有森さんがこの言葉をシェアしてくださったことに感謝したい。
 
自分がいま置かれた状況をどうとらえることができるか。
思いがけず、自分の状況に変化があったとき、その変化をどう受け止めるか。
 
「せっかくだから」という魔法の言葉を思い出すことができれば、一見ネガティブに見える状況でさえも前向きにとらえ、行動を起こすことができるのではないか。
 
「せっかく与えられた人生なのだから精いっぱい生きたい、私はそう思う」
 
有森裕子さんが過去に語っていた、こんな言葉も見つけた。
 
「せっかく与えられた人生」というフレーズで、私の中でフラッシュバックのようによみがえった記憶があった。そういえば、私はあやうくこの世に産んでもらえなかった可能性があったのだ。
 
私の父は、結婚したのが遅かった。さらに、私は二人の姉からだいぶ遅れて産まれた。
 
母が私を妊娠したことが分かったとき、父は勝手に「今度こそ男の子だ」と思い込んで喜んでいたが、周囲からは眉をひそめられていたそうだ。
 
「もう年なのだから、少しは考えた方がいい。その子が成人するとき、いくつになると思っているのか。産まれてくる子がかわいそうだ」と。
 
母は、義理の姉から何度も「おろしてしまえ」とダイレクトに言われたそうだ。
 
もし父と母がそうした周りの反対を受け入れていたら、私はこの世に生を受けることができなかった。
 
幼いころから何度か笑い話のように聞いていたこのエピソードだったが、ある時にふと、「私が産んでもらえるかどうかは、けっこう危ないラインだったのかも……」と、感じた瞬間があった。
 
「私があんたのことをバカに産んじゃったもんだから…… 苦労をかけてごめんね」
 
いったいなぜそんな話になったのか記憶がないが、あるとき母が泣きながら私にこんなことを言ってきた。
 
「えー! ちょっ、お母さんどうしちゃったの? まあ…… 確かに人より不器用で苦労することもあるけど、別に不幸じゃないよ。だから、そんなふうに泣かないで」
 
そういいながら、気づけば私も泣いていた。
 
「産んでくれて、ありがとうね」
 
と、言ってあげればよかったのかな? と今ふりかえると思う。
 
有森裕子さんのように、選手生命にかかわる故障とまではいかなくても、生きていれば「なんでこんなことが起きてしまうのだろう」と落ち込む出来事にも遭遇する。
 
でも、それも文字通り「生きていれば」こそ、なのだ。
この世に生を与えられ、いまもなお生かされているからこそ見ることのできる情景、味わうことのできる経験、痛み、悲しみ、喜び。
 
どんな出来事も、時間を経て振り返ってみると「あの時のあの経験があるから、今の自分がある」と感じられる「糧」に変化しているように感じる。
 
「せっかく与えられた人生なのだから精いっぱい生きたい」
 
という有森裕子さんの言葉に、せっかく出会えたのだから、その魔法の力をフル活用して生きていこうと思う。
 
 
 
 
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2019-05-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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