メディアグランプリ

波乱万丈のその先へ。無限の可能性を教えてくれるCちゃんという人は。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Amy(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)
 
 
「夏休みにそっち帰るよ! またみんなで集まろうよ!」
 
 
「ごめん、私、今タイにいるんだよね!」
 
 
「タイ!?」
 
 
「マッサージを極めたくって!」
 
 
高校時代の友人にC子ちゃんという子がいる。
 
 
彼女は、2人きょうだいのお姉ちゃんで、両親はどちらとも学校の先生。学生時代は、学級委員と生徒会の常連というしっかり者。そんな彼女と私が友達になったのは、高校一年生のとき。同じクラスで、同じ部活に所属していた。
 
 
私たちが青春を捧げた部活は、放送部。「青春を捧げた」なんて言いながら、私の日課は、部室でおしゃべりしながらその日の宿題を終わらせることだったけど。
 
 
あなたは「高校の放送部」がどんな部活か知っているだろうか。
野球部のようにみんなで甲子園を目指したり、吹奏楽部のようにみんなで大会で良い賞を取ろうとがんばったり、そういう共通の目標がないのだ。全国の高校放送部の大会というものは存在している。だが、映像制作の設備も知識もなかった我が放送部では、大会に出ることはあっても、個人戦のアナウンス部門のみ。希望者が出場するというスタイルだった。
 
 
だから、というわけではないかも知れないが、あまり協調性のないメンバーが集まっていた。Cちゃんは、趣味も違えば、趣向も違う、共通の目標もない女子高生たちを、何人もまとめていたのだ。
 
 
そして、彼女は、私が宿題をしている時間にも、真面目に部活に取り組んでいた。体育館裏での発声練習に始まり、腹筋、そして、原稿の音読。さらには、他校との練習会にも毎回必ず参加していた。私は、
3年間で一度しかその練習会に参加しなかったというのに。
 
 
彼女は、部活だけでなく、クラスの学級委員も務めていた。確か、クラス替えもあったが、3年間丸っと学級委員だった気がする。そんな彼女は、先生たちから見ても、きっと真面目なしっかり者だっただろう。もちろん、同級生の私たちから見てもそうだった。
 
 
大学受験シーズンを迎え、卒業も近づいてきたある日、彼女は言った。
 
 
「受験はしません」
 
 
驚いた。
私たちはみんな、心底驚いた。当然、彼女は大学に進むものだと思っていたから。
 
 
そして彼女は続ける。
 
 
「しばらくバイトして、お金が貯まったら日本一周に出ます」
 
 
さらに驚いた。
 
 
そして彼女は、持ち前の真面目さを生かしてせっせと働き、本当にお金を貯め、本当に日本一周の旅をスタートさせたのだ。
 
 
出発から数ヶ月経ったある日、彼女は、京都にいた。
そして、私たちに宣言するのだ。
 
 
「勉強したいことができたので、京都の大学に進学します」
 
 
また驚いた。
 
 
ストレートで進学したメンバーから遅れること3年、彼女は大学生になった。
 
 
時は経ち、彼女は大学4年になった。
卒業まであと半年というところで、今度は「大学を辞める」と言った。本当に辞めた。
 
 
また驚いた。
 
 
勉強したいことを学び終えたという。「卒業するために大学に通ってたわけじゃないから」と笑った彼女は、誰よりもかっこよかった。私なんて、高校を卒業したら大学に進むものだと思っていた。大学に入れば、当然卒業するものだと思ったいた。そして、そのまま就職して大人になっていくんだと疑いもせず思っていた。そうではない人生を、想像することもなかった。
 
 
彼女は、そのまましばらく京都での暮らしを続けた後、地元に帰った。
 
 
そしてまた数年後、「東京に行くから会おうよ」と彼女から連絡がきた。待ち合わせたのは、池袋。東口のロッテリアで席に座った瞬間、「来週、沖縄に行くんだよね」と彼女は言い出した。
 
 
旅行の話かと思った。
でも、違った。
 
 
「沖縄に移住する」と言うのだ。
 
 
また驚いた。
 
 
「え!」と大きな声が出た。
シェイクを飲みながら、「寝耳に水」ってこういうことかぁ、と思った。
 
 
そして、彼女は、沖縄に引っ越した。
 
 
「手に職をつけたい」と話していた彼女は、マッサージ屋さんで働き始めていた。リゾート地にある、ホテルの中のマッサージ屋さんだ。マッサージ屋さんになってからの彼女の活躍は、facebookにシェアされるお店のブログから知るばかりになったけど、いつも楽しそうで、充実した暮らしをしていることが伺えた。
 
 
そんな彼女が、今度は、いつの間にか「タイにいる」という。
 
 
タイ。
タイ。
タイ!?
 
 
私の覚えている彼女は、どちらかというと英語も苦手なタイプだった。海外志向の私とドメスティックな彼女で対立することもあった。テストが近づくと、「古文の方が簡単! 日本語だからなんとな意味もわかるし、読めるでしょ?」という彼女と、「英語の方が簡単だよ! 古文なんで誰も使わないのに勉強する意味ないよ!」という私と、いつも部室で言い争っていた。大学時代も、就職してからも、彼女から海外旅行に行ったという話も一度も聞いたことがなかった。むしろ、旅行でも留学でも、ひゅっと日本を飛び出してしまう私の様子に、少し呆れているように感じたこともあった。
 
 
そんな彼女が、
いま、タイにいる。
 
 
なんとも言えない思いで、胸がいっぱいになった。
 
 
そして、本場のタイで、「マッサージの腕をもっと極めたい」と、彼女は言う。
 
 
その時々の自分の心と素直に向き合って、自分の足で自分の未来を切り拓いているCちゃんのことを、心から尊敬した。
 
 
同級生なのに、これからの日本はこういう人が支えていくんだな、と感じた。
同級生だから、大人になっても挑戦を続けるCちゃんに、いつも大きな勇気をもらう。
 
 
「大人になったから」と思い込んで、世間体や年齢を勝手に気にして、できないことが増えていく人が多い中で、「こうしなくちゃ」「こうするべきだ」という固定観念から解き放たれたCちゃんは、いま、誰よりも輝いている。まだ、私たちにできることの、「可能性は無限大」だと思わせてくれる。
 
 

こんな素敵な友達を持った私は、とても幸せだ。

 
 
 
 
 

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2019-08-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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