週刊READING LIFE vol.156

死ぬほど嫌だった自己PRがいつの間にか笑顔で言えるようになっていた《週刊READING LIFE Vol.156 「自己肯定感」の扱い方》


2022/02/08/公開
記事:村人F (READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
今、最も自己肯定感が必要な場面。
それは自己PRだろう。
就職活動で必ず問われるため、一度は戦う必要があるからだ。
そしてこれには相当の肯定感が必要である。
なにせ自分を宣伝しなければならない。
ちょっとやそっとじゃ200字の枠は埋まらないだろう。
 
私はこの自己PRが死ぬほど嫌だった。
履歴書を前にして色々と考えていたが、本当に書くことが無くて絶望していた。
 
まず自慢できる実績がなかった。
海外に行ってボランティア活動をしていたなんて華々しいエピソードはないし、学会で優秀な成績を収めたこともない。
そこらへんにいる普通の大学生だったのだ。
しかもコンプレックスが強かった。
自分の顔を鏡で見るのが嫌だった。
喋り方や緊張しやすい性格も同じである。
この状況で自分をPRするなんて、とてもする気にならなかった。
 
もちろん就活本を色々読んだから、ネガティブに思っている部分をポジティブに言い換えるといったテクニックは知っていた。
だが、それをしたところでどうなると思っていた。
まるで自分に嘘をついているようではないか。
そういうのもあって、本当に自己PRは苦行だった。
 
しかし就職して数年経った今、改めて考えてみるといつの間にか笑顔で言えるようになっていたことに気がついた。
すんなりと自分を宣伝できるようになっていたのである。
 
例えば、私の長所はフットワークが軽いことだ。
大学時代に巨人戦のため茨城と東京ドームの片道3時間の往復を年10回行っていた。
そして推しのライブのためなら海すら越える。
また天狼院書店のライティング・ゼミなど、なんでも挑戦する。
だから御社の新事業開発でも積極的に行動できるだろう。
 
こんな具合にサラッと自己PRを書けるようになっていた。
 
どうしてできるようになったのだろうか。
この要因で真っ先に思いついたのは、仕事が辛すぎたことだった。
就職してすぐの時期はとにかく怒られた。
なぜできない、もっと努力しろ、そういったことを結構言われたのである。
そのせいで、うつになったこともある。
だがこの経験がむしろ、自分をポジティブに見るキッカケになった。
 
なんせ、ただでさえ周りから否定されているのだ。
この状況で自身もネガティブに捉えたらどうなる。
落ちる一方ではないか。
ある時にこう気づいてから、いつの間にか自分を肯定的に見るようになった。
そうでなければ精神が持たないからである。
これが自己PRを上手くした1つの要因だろう。
 
そしてもう1つ思いついたのは、普段心がけていたことが知らず識らずのうちにトレーニングになっていたという説である。
 
例えば、生活の中で無駄だと思うことを削り取っていた。
代表はスマホゲームである。
大学時代、あの手のゲームが流行りだした頃は1年くらいプレイしていた。
ただログインボーナス欲しさに毎日起動していたある時、「こんなゲームごときに私のスケジュールを支配されてたまるか」と思ってしまったのである。
そこから一切プレイするのをやめてしまった。
おかげで、ガチャで数万円溶かすあるあるを経験せずに済んだ。
こんな具合に、自分が無駄と感じたことは生活から削るようにしていた。
 
一方、やりたいことに対してはブレーキを踏まなかった。
Nintendo Switchでやりたい新作があれば、1日10時間ぶっ続けでやれるようスケジュールを組んでクリアするようにしている。
推しのライブもプロ野球観戦も、できるだけ行けるよう日程に詰め込んだ。
これはスキルアップも同じである。
カラオケ教室も月2万円かけて3年ほど通っていたし、カラーコーディネーターの資格も取った。
天狼院書店のライティング・ゼミも同様だ。
とにかく興味を持ったことは、金の許す範囲で我慢せずにやっていたのである。
 
このような生活を続けた結果、肯定できる自分になったことに気がついた。
やりたいこと、スキルアップが行えたから自信になったのである。
 
そしてこれらを踏まえると、ある仮定が思いつく。
自己肯定はスキルではないかという説だ。
つまり鍛えられるということである。
 
そしてこれは、自己肯定感の低さで悩む人にとって朗報ではないだろうか。
なぜなら、一生変わらないものだと思われていることが多いからだ。
生まれ持った性分のせいだからどうしようもない。
私なんて努力したところで意味がない。
この具合に運命とされている場合が多いからだ。
 
しかし、自己肯定を能力と捉えると話が変わってくる。
改善できるものになるからだ。
この視点に立てば、トレーニング方法を考えられるようになる。
 
まず思いつくのは、生活に「好き」の割合を増やしていくことだ。
習慣を見直し、好きなことに触れる時間を多くするのである。
本でもいい。ゲームでもいい。手芸でもいい。
とにかくやりたいことを行えるようにするのだ。
 
なぜこれが有効かというと、自分を嫌になる要素が薄れていくからである。
普段の生活が好きに囲まれていると、ネガティブな感情が思い浮かばなくなるだろう。
幸せな気分になれるからだ。
そうすると、自分が嫌いだという思いも同時に消えていく。
よって生活を見直し、好きなことの時間を増やすのは効果的な手法となる。
 
この実現のために意識するポイントは、無駄だと思っている時間である。
例えば、スマホをなんとなく見ている時だ。
多くの人がこれをもったいないと感じているだろう。
これを好きなことに変換するのである。
 
どうすればよいか。
スイッチを変えるのである。
例えばSNSを眺めようとした時、スマホのスイッチを押すだろう。
これを自分の好きなことを起動するスイッチに変えるのだ。
ゲームならNintendo Switchの電源に、手芸なら針と糸を持つ、といった具合にだ。
 
これが結構重要なのである。
なぜなら始める気力の無いために行えない場合が多いからだ。
私の場合、ゲームがそうだった。
やりたい作品はいっぱいあった。
ただ、それらに手を出せなかったのは電源を入れるのがとにかく面倒だったからである。
やり始めた後の疲労を想像してしまったのだ。
寝るのが何時になるだろう、終わるまで何週間かかるだろうといった感じである。
そんなこんなで尻込みした結果、スマホに手を出すことが多かった。
 
しかし、この迷いはスイッチを入れれば消える。
そうすれば、10時間だろうがぶっ通しで取り組めるようになるだろう。
流れに乗ればどこまでもできるものだ。
 
他にも、コンプレックスを改善できないか調べるのも有力である。
世の中には同じようなことで悩んでいる人が結構いるものだ。
だから、それらを解決する手段も同じように転がっている。
例えば、文章が苦手なら天狼院書店のライティング・ゼミという具合にだ。
意外と改善できるものである。
 
このような生活を続けていると、自分を好きな割合が増えていく。
これがある値を超えた時、「好き好きスパイラル」という境地に達する。
自分をもっと好きになりたくなり、そのための努力を惜しまないようになるのだ。
習い事のレベルもワンランク上にしてみよう。
資格を取って専門家になろうといった気持ちになるのである。
 
そしてここまで来ると、仕事まで頑張ろうという気になる。
なぜならここで得られるのは他者からの肯定だ。自己ではない。
しかも給料が上がる。
最高の肯定感である。
これを求めて努力するようになり、より一層自分を好きになっていくのである。
こうなれば自己PRで5000字書き上げることすら容易になるだろう。
 
このように考えてみると、嫌いな自分は案外変えられることに気づく。
深掘りしてみると要因が見つかるからである。
これらを見直せば、活路が見えてくるのだ。
 
ただ最初の発火点を考えると、上記を信じて突き進んだわけではなかったように思う。
自分が嫌だった時代には、この未来が見えていなかったからである。
だから、キッカケはネガティブな感情だった。
自分が嫌いなことだった。
 
しかし、なぜこれがポジティブな流れに向かっていったのか。
それは負の感情をエネルギーとしたからである。
自分が嫌いである場合、このままではいけないと感じている。
これを原動力にしたのだ。
 
そして自分がよくなると思われる方向に、とにかく発散したのである。
資格取得や、習い事にだ。
 
もちろん空振りも多かった。
カラーコーディネーターなんて自己紹介のネタぐらいしか使い道がない。
ファイナンシャル・プランナーはなぜ持っているのに家計が火の車なんだと叫びたい。
ただ、そういうのを恐れずに色々やりまくったのである。
 
すると、いずれ何かにヒットする。
天狼院書店のライティング・ゼミかもしれない。
ゲームかもしれない。
推しのアーティストかもしれない。
やりたいと思えることが見えるのである。
そしてこれをスタートとして、自分が好きになる道筋に乗っていったのである。
 
この事実は自身を好きになる可能性が最も高いのは、自分を嫌う人間であることを示す。
嫌いな度合いが高いほど、逆にエネルギーを持っているからである。
つまり良くする方向にぶっ放す弾丸が多いのだ。
これを諦めずに連発していけば、自分を好きになるキッカケを見つけられる。
そうすれば、自分の人生をポジティブな方向に変えられるだろう。

 

 

 

人生は基本辛いものである。
生態ピラミッドが示すように弱肉強食だからだ。
こんな世界では自分が嫌になる場面も多々あるだろう。
 
だからこそ、自己肯定感を上手く扱うことが重要なのだ。
何もしなければ嫌いな方向になっていくのが自然の流れである。
だからこそポジティブな流れにするため意識的に行動する必要がある。
 
それこそ、自分の好きなことである。
これを繰り返せば、嫌な気持ちが減っていく。
好きになる理由が増えていく。
この結果、辛い人生を楽しく過ごせるようになるのである。
 
そしてキッカケはスマホのスイッチを押すのではなく、やりたいことの準備をするといったちょっとした行動である。
これだけでスタートできることも多いのだ。
 
そしてこの習慣を繰り返していけば、嫌いだった自分を許せるようになる。
そこに笑顔で自己PRができる未来があるのだ。
こうなればちょっとした悩みでうじうじする時間が少なくなる。
どうしようもないと思っていた人生も、結構いいものだと思えるようになる。
今が幸せなんだと感じるようになる。
 
そして周りが暗くなっている今こそ、好きなことに取り組むチャンスなのだ。
なんせネガティブな感情をたくさん持っている。
これをエネルギーにしてやれば大抵のことができるだろう。
 
この先にあるのが好きに囲まれた人生だ。
こうなれば嫌な自分も、世の中もポジティブに捉えられるようになるだろう。
 
この未来を信じて、楽しく努力を続けていきたい。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
村人F(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

名乗る名前などございません。村人のF番目で十分でございます。
秋田出身だが、茨城、立川と数年ごとに居住地が変わり、現在は名古屋在住。
茨城大学大学院情報工学専攻卒業。
読売巨人軍とSound Horizonをこよなく愛する。
2022年1月から、天狼院書店ライターズ倶楽部所属。
資格:応用情報技術者試験・合格、カラーコーディネーター検定 2級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325


■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」

〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984


2022-02-02 | Posted in 週刊READING LIFE vol.156

関連記事