週刊READING LIFE vol.164

人生の幸福度は自分次第《週刊READING LIFE Vol.164 「面白い」と「つまらない」の差はどこにある?》

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2022/04/04/公開
記事:丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「へぇ~、丸山さんって、一人でランチ行くんや」
 
そんなことを子どもが小学1年生の頃、周りのママ友に言われたことがあった。
娘が小学生の頃には、私は40代を迎えていた。
年齢を重ねたからではないが、私は比較的一人行動が平気だった。
平気というよりかは、その方がラクだと思うくらいだった。
気の合う友だちとはずっとしゃべっていたいし、ランチにも行くし、旅行だって行きたいと思う。
でも、気が合わないのに、無理に合わせて付き合うような友だちなんて、要らないと思っていたし、それならばむしろ一人の方が楽しいとさえ思う人間だった。
 
ママ友とのつきあい。
それは、子どもを授かり、育てる過程で繋がる関係性。
この関係性は、本当に不思議なものだと常々思っていた。
学生時代というのは、ある程度自分と似たような人たちとの付き合いだったように思う。
小、中学校は公立だったので、同じ地域に隅、似たような環境に暮らす友だちばかりだった。
高校は、公立だったけれど、同じ学力を持つ友だちが集まる訳だから、話題もびっくりするようなこともなく付き合えた。
短大も同じく、その学校を良いと思う生徒が集まったから、すぐに打ち解けあえ、一生の友だちも出来た。
さらには、就職も行きたい職種を選び、学力の試験を受けた訳だから、将来に対する夢や能力が似通った人たちが多かった。
 
ところが、結婚して、これまでと違う環境に暮らすようになって、これまでと全く違う人たちとの出会いを初めて経験することとなった。
たまたま、その地域に住居を構え、子どもが生まれ、近所を散歩したり、公園に行ったりすると出会うのもその地域の人たちだ。
その人が、どのような環境で成長し、どのような勉強をし、社会での経験を積んできたかはわからない。
そうなると、やはり考え方はそれぞれ、全く違うものとなることが多かった。
 
そんな中、子どもを持って子育てが始まると、ママ友とのお付き合いがこんなにも濃厚になっていくのかと驚いたものだ。
子どもが小さい頃、朝の家事が終わると、お天気が良い日には、たいていは公園へと連れて行った。
当時、「公園デビュー」という言葉が出来たように、近所の小さな公園なのに、そこに子どもを連れてゆくことは、なかなかドキドキするものだった。
そこには、小さいながらもしっかりとしたコミュニティがあったからだ。
そこには、まるで違う環境に育ち、考え方も違う人たちが集まり出会うことになる。
 
ある時、娘が砂場で遊んでいて、側にいた女の子のスコップを勝手につかんで使ったことがあった。
私はすかさず、「これはお友だちのでしょ、ありがとうって言って返そうね」と言って、そのスコップをその女の子に返して謝ったのだが、側にいた母親は知らん顔をしていた。
私だったら、そう、私だったら、「いえいえ、いいんですよ、良かったらどうぞ」なんて言いながら、周りのお友だちとのコミュニケーションを娘のために取ったであろうに。
 
また、ある時は、ちょっと仲が良くなったお友だち数人としゃべっていて、「今日は〇〇ちゃん、来ていないね」というと、「ああ、今日はおばあちゃんたちがお家に遊びに来るんだって」と別のママが言ったのだ。
他人の家の日々の予定までも熟知し合っているのかと思うと、びっくりしたのを覚えている。
 
さらには、私はいつも公園に娘を連れて行っても、必ずお昼前には帰ることにしていた。
それは、お昼ご飯のこともあったが、お昼ご飯を兼ねて、誰かのお家にみんなで行くというような習わしがそこではあったからだ。
朝から夕方まで、べったりのお付き合いなんてとんでもなかった。
しかも、短大時代や会社員時代のような気心が知れて、価値観の合う友だちとは訳が違う。
なので、毎日帰りたがらない娘を、「マックに行こうか」「ドーナツ食べる?」と、食べ物で釣ってでも連れて帰っていたのだ。
 
公園で日々繰り広げられる、子どもたちではなく、ママたちとのやりとり、そんな小さな一つひとつの出来事が、毎日カルチャーショックだった。
ある意味、私は子育ての時のママ友とのお付き合いが一番人生においての勉強になると感じた。
それは、大変だったというよりも世の中には色々な考えの人がいて、色々な人生を歩んでいる人がいるということを、初めて身近で知ることとなったからだ。
 
ママ友たちは、年齢もそれぞれなのが特徴だった。
32歳の時に初めて娘を授かった私だったが、22歳で2人目の子どもを育てているママ友もいた。
平均的に見ても、私よりも3~5歳ほど若いママたちが多かった。
 
そんな中、そのママたちを見ていると、一人ひとりはとても興味深いのだが、その性格もそれぞれだった。
いつも前向きで、困難に出会っても笑い飛ばして進んでゆく人。
何かが起こる前から失敗する方を予測して悩み始める人。
そこには、面白いことに年齢はあまり関係なく、その人のこれまでの環境や経験が大きく影響しているように思えた。
同じことが起こっても、何でもないことと受け取る人と、ツイていない自分を責め落ち込む人がいたりするのも、見ているととても面白いと思った。
そんなママ友たちの姿を見ていると、物事をどう受け取るかで、日々の暮らし、人生は180度違うのだということがなんとなくわかってきた。
ママ友たちとのお付き合いから、自分の行動も考えるきっかけを貰うことが多かった。
 
心理学において、「閾値(いきち)が高い、低い」という言葉を聞いたことがある。
それは、同じ出来事が起こった時のその人の受け取り方のことであるのだが、この閾値が
人によって、それを不幸と捉えるか、一つの経験と捉えるかという具合に違ってくるのだ。
ただ、自分が物事をどう受け取るかが、その後の人生を決めてゆくと思うのだ。
だからこそ、閾値が高い方が生きやすいとも言えるのだ。
 
それは、幸福を感じる度合いも同じだと思う。
これくらいのことがないと、幸せと感じないと、知らずそんな自分になっているのかもしれない。
幸せを感じる、感度が高ければ少々のことでは喜べない自分になってしまう。
例えば、プレゼントしてもらうならば、ブランド物のウン十万するようなモノだと嬉しいが、そうでないと喜べないというのでは生きてゆくのも大変だ。
人からの誠意ある行動に対して、感謝の気持ちを持つことを忘れてしまうと、ギスギスした気持ちで生きてゆくこととなり、なんとも味気ない人生を選ぶようになると思う。
もちろん、そこには人それぞれの価値観にもあると思うが、自分自身のこだわりと人からされることの受け取り方はまた別だと思う。
 
そんな私も、子どもの頃は、自分自身を見ることなく、友だちの良いところ、羨ましいところばかりに目が行ってしまって、人のことを羨ましく思い、いつも、「〇〇ちゃんはいいな」とばかり思っていた。
人生の経験を積んでゆくに連れて、物事や人のことを俯瞰して見ることが出来るようになっていった。
そうすると、人のことばかりでなく自分自身も冷静に見ることが出来るようになった。
すると、全く良いところ、好きなところが見つけられなかった子ども時代と違い、少しずつ、好きなところも見つけられるようになってきた。
完全でも完璧でもないけれど、愛おしいと思うところはいくらでも見つけられるものだ。
 
自分の人生が、様々な経験を積んできた今、辛いこともあったけれどそれらを振り返ると面白いと思えるのか、華々しいこともなくつまらないと決めつけるのか、それも自分次第だと思う。
一度しかない、限りある自分の人生なんだから、楽しくたくさんの経験ができるものにしたいし、それを喜んでゆける自分でありたいと日々思う。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

関西初のやましたひでこ<公認>断捨離トレーナー。
カルチャーセンター10か所以上、延べ100回以上断捨離講座で講師を務める。
地元の公共団体での断捨離講座、国内外の企業の研修でセミナーを行う。
1963年兵庫県西宮市生まれ。短大卒業後、商社に勤務した後、結婚。ごく普通の主婦として家事に専念している時に、断捨離に出会う。自分とモノとの今の関係性を問う発想に感銘を受けて、断捨離を通して、身近な人から笑顔にしていくことを開始。片づけの苦手な人を片づけ好きにさせるレッスンに定評あり。部屋を片づけるだけでなく、心地よく暮らせて、機能的な収納術を提案している。モットーは、断捨離で「エレガントな女性に」。

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2022-03-30 | Posted in 週刊READING LIFE vol.164

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