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READING LIFE

『カンブリア宮殿』藤井薫氏の1週間38万5千円のラーメン学校《READING LIFE EXTRA》

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ラーメンの極意を教える講座が、一週間38万5千円と聞いた時、僕は正直、ボッタクリだろうと思いました。

そのときは8人の生徒さんがいたので、一週間で300万円以上の荒稼ぎじゃないか、いい商売だな、と半ば鼻白んで観ておりました。どうも、昨今復活しつつある、ネットワークビジネス的な、情報商材的な、怪しげな匂いすら漂ってきたのでございます。

ところが、番組の終盤にまで来ると、いやー、38万5千円って妥当だな、いや、安いな、と思うようになっておりました。

はたして、僕は番組に洗脳されてしまったのでしょうか?

いや、そうではありません。

 

今回の主人公、藤井薫さんは川崎重工で戦闘機の設計をしていたという、バリバリのエンジニアでした。

藤井さんは、その技術力を使って、製麺機を作ったのでございます。「リッチメン」と名付けられた製麺機は1台200万円ほどするもので、この業界では40%のシェアを誇っているのでございます。

簡単にいってしまえば、製麺機を売るために、ラーメン屋の学校を開いている。

しかし、番組を観ていくに従い、そんな簡単な話ではないことに気づきます。

藤井さんはこう言います。

 

「この業界では毎年、3500店がオープンして、同じ数が潰れています。60点〜80店のラーメンを出すのではダメで、95点以上を最初から出さなければ生き残れない」

 

生き残らせるために、ラーメンの作り方と経営の仕方を教えているのだと。

ふと、僕は自分がいる業界を思いました。ラーメン屋と違って、書店は潰れている数は増えているのですが、オープンがほとんどない状況です。しかも、95点位上の書店が、全国にいくつあるだろうかと思います。語弊を恐れずにいえば、ほとんどの書店が60点から良くて80点なのではないでしょうか。つまり、ラーメン屋は実は高いレベルを求められ、その環境下にあるから強靭さを身につけていく一方で、それに比べれば書店の競争はそれほど激しくないので、やはり、ぬるま湯のような経営になってしまっている。激しい淘汰の中で、ラーメン屋は味もサービスのレベルも上昇し続けている。顧客が求める高いレベルに懸命に食らいついている。

藤井さんのラーメン学校は、徹底していました。

門外不出の繁盛店のスープも、秘伝の元ダレも、すべて教えてくれます。

しかも、味の決め方が変わっています。藤井さんはこう言います。

 

「どんなに複雑な機械でも設計図があれば作ることができる。これと同じで、どんなに難しい料理でもレシピがあれば作ることができる。そう考えて、すべてを数値で管理することをはじめた」

 

味を勘ではなく、「数値」にして残しておくことができれば、その日の体調や材料の出来不出来に左右されることもなく、一定の味をお客様に提供することができます。

藤井さんは、全国で2000食ほどのラーメンを食べあるき、これはと思う店のスープを密かに持ち帰り、ひとつひとつ数値化して、美味しさの秘密を解明したと言います。実に、技術者らしい方法です。しかも、その方法も徹底していて、計測も細かくしているのです。

まさに、「デジタル・クッキング」。

この他に、藤井さんのラーメン教室では、経営の方法を徹底して教え込みます。味と経営の両輪がなければ、ラーメン屋はうまくいかないからです。

この教室の卒業生は、今や600人。多くの繁盛店を排出しています。

こう考えると、38万5千円という金額が、実にいい設定だということにことに気付きます。

この教室は「一週間で人生を変える学校」であり、スクールの時間の長い短いは問題の本質ではありません。むしろ、一週間という短時間で人生を変えられるのなら、その方がいいに決まっています。

しかも、この金額がある種のスクリーニングになっているのです。すなわち、38万5千円を払う覚悟がある人しか、そもそも来ない。やる気を試すためにも、これは、製麺機で利益を取ればいいと安易にフリー戦略に転換して、ボランティアで教えてしまってはダメなのだろうと思います。そのリスクを負うからこそ、真剣に学ぶのでしょう。

藤井さんがすごいのは、生徒たちは繁盛するまで面倒を見るところです。

番組でも、急に客足が遠のいてきて、売上が落ちてきた生徒さんの店に、藤井さんが立て直しのために向かう様子が描かれていました。藤井さんは店の様子を見るなり、すぐに的確に指示を出し、味を見るなり、その地域にあった味に修正するように言って、風の様に帰っていきます。

一ヶ月後、その店には、客が戻っていました。

まるで、魔法です。あらゆる数値が頭に入っている藤井さんにとってみれば、おそらくそれは当たり前のことかもしれませんが、ほかから見たら、魔法にしか見えません。合理性を突き詰めて行くと、もしかして、魔法にしか見えなくなるのかもしれません。

やはり、とことん考え、研究を重ねることによってしか、答えは引き寄せならないのだろうと思います。

天狼院も、いつか、このように書店開業震源地になれればと夢想しながら、今日も書店を運営するための秘密の設計図「天狼院秘録」を綴るのでございます。

今回も、カンブリア宮殿、大変、勉強になりました。


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