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チーム天狼院

女が男友達のLINEにハートマークを送っても許されるのか問題《川代ノート》


「やっぱあそこでのハートは来てるっしょ」
「ハートは間違い無いわ、マジで」
「だよな!? あーもうこれ絶対いけるわ」

いやいけねーよ、と心の中でつぶやくも、どうも「俺にハートマークを送ってきた女は惚れている」という思い込みにとらわれて、逃げ出せなくなっているようである。ちょちょちょ、ちょっと待て! そんなに簡単に判断してもいいのか!? もしかしたら相手はなんとも思ってないかもしれないぞ、とカフェで隣に座っている彼らに言ってあげたいが、うわあやべえとかきたこれとか次俺行くわ! とか幸せそうにはしゃぐ彼らに水をさすようなことはとてもできない。

前から気になっていることがある。それは「女がただの男友達と思っているやつにハートマークを送ってもいいのか問題」である。

私は今24歳の女である。平成4年生まれ。私が小学生の頃から携帯電話が流行り始め、中学二年生になる頃にはもう、ほとんどの友人が携帯電話を持っていた。その頃は今のようにLINEやSNSなどもそれほど発達していなかったから、友達との連絡はメールで行うのが普通だった。

携帯を持ち始めたばかりの中学生の頃なんて、もう空いている時間全部メールである。ひたすらにメール。ギャル文字や絵文字などを駆使し、私はいかにかわいいメールを打てるかに心を砕いていた。メールをしすぎてパケット使用量が相当高くなり、親に怒られたのもいい思い出だ。今では考えられないけれど、あの頃はまあ暇だったし、メールボックスという限られた場所の中でいかに自分を輝かせてみせるかということを考えるのが、何より面白かったのだ。

大学生になり、LINEの登場によってメールをすることは少なくなった。メッセージを送るにもいちいち時間のかかるギャル文字なんて打たなくなったし、なるべく簡潔に、言いたいことだけをすぐに伝えることを心がけるようになった。

ただメッセージのやりとりだけだと味気なく感じてしまう時がある。短い文章を打つ場合はいかにニュアンスを伝えられるかが肝だ。たとば同じ「わかった」でも、「わかった!」と「わかった。」では全然違う。「。」がついていると「えっ、なんか怒ってるのかな?」と思わせてしまうかもしれない。ただのメッセージのせいで変な誤解を生むようなことはしたくない。

こういうときに便利なのがメール時代に培った「絵文字」使用力である。私は過去のデータから、どのような絵文字を使うと印象が変わるかを考えて絵文字を選ぶ。有効なのは「わかった(キラキラ)」か「わかった(ハート)」である。それをつけるだけでなんとなく「楽しみにしているよ」というニュアンスを伝えられる。……ような気がする。

だからこそ、「ハート送ってくるってことはきたな」という、カフェで隣に座っていた大学生くらいの男の子の言葉は衝撃だった。えっ、いやいや、普通に女はハート送るよ。なんとも思ってなくてもハート送るよ。ハート送ったからって別にあなたのこと好きとかじゃないよ? と言いたくなったのだが、彼は夢を見ているらしい。

どうして男はこんなに簡単に勘違いしてしまうのか。どうしてハートごときでこんなに喜んでしまうのだろうか?

ああ、そういえば、私も前の彼氏にこんなことを言われたことがある。

「あのときさ、さきからハートが来て、あーもうこれ行けたなって思ったんだよね」

ニヤニヤしながら彼はそう言った。

「えっ、ハート……送ったこと、あったっけ?」
「いやいやあったじゃんほら。まだ3回くらいしか会ってない時」

頭の中で走馬灯のように彼とのメッセージが流れていく。考える。考えろ考えろ考えろ。私はどんなメッセージを送った? どんな話をした? 思い出せない。えーと、どうだったっけ? 私なんて送ったっけ? ってかそもそも彼と何の話ししてたんだっけ? 私なんか「行ける」サイン出したことあったっけ?

全く思い出せなかった。記憶にないという方が正しい。私は彼にハートを送った記憶もなければ、彼に好きアピールをした記憶も無かった。
でも彼は都合よく解釈して「行ける!!!」と思い込んでくれたらしい。わからない。どういうことだ。なんなんだ。

つまり彼は私からのハートマークを「好きよ、告白してくれていいわよ」というサインだと受け取ったということか。私は頭が痛くなりそうだった。なんということだ。男はたったひとつのハートマークごときを「好き」サインだと受け取ってしまうというのか。

驚いた。本気で驚いた。世の中の女子はそれを知っているのだろうか? みんな知っているうえでハートを送っているのだろうか? それとも逆に私の彼氏がおかしいだけなのだろうか? 簡単に勘違いしすぎなだけなのだろうか? 頭の中にハテナマークが無限に浮かんでくる。

しかしどうやら、隣の見ず知らずの男の子たちの会話を聞くに、そういうわけではなさそうである。むしろ「男は女からきたハートマークを『私のことせめてもいいわよサイン』だと受け取る」と思っていたほうがよさそうだ。

男は単純だとはよく言うが、ここまで単純だとは。ハートマークが語尾についていただけで勘違いしてしまうとは。驚きの新事実である。たとえば次のデート前の段階での「うん♡楽しみ♡」というメッセージだけで「フォオオオオオ!! これはいけるっしょ!!!!」と思うのだろうか?   

もしこれを男性が読んでいるのなら申し訳ないが、これは「うん(好きよ)楽しみ(はやく告白して)」という意味では無い。「うん(なんかびっくりマークだけだと味気ないしハートでいいか……)楽しみ(めんどいからこっちもハートでいいや)」ということがほとんどである。たぶん。

いや、たしかに本当に「私の気持ちに気づいて!」という意味でハートをつける女子もたくさんいる。でも正直に言ってしまうと、私の友人でもハートにそこまでの意味を持たせる女の子はそれほどいない。

たいていの女の子は何もなくてもただの「記号」としてハートマークをつけるし、「なんか味気ないから」というだけの理由でハートマークをつける。「好きな人にはハートマーク送っちゃう」という友達を、私は今まで見たことが無い。

何度も言うが私の周りの人間がそういうタイプが多いだけで、実際にはもっとハートを有効活用する女の子もいるのかもしれない。でもよくよく考えてみると、本当に好きならハートだけでアピールなどするだろうか?「好きだという気持ちに気がついてほしい」という強い思いがある女の子なら、メッセージでハートをつけるだけじゃなくて実際に態度でハートを出すんじゃ無いだろうか? オンライン上のハートマークだけを過信するのはあまりに危険である。ただでさえ女は「告白されたカウント」をしたい生き物である。「この前告白されちゃったんだよね」「いや〜この前きもい男に告られてさ〜」ということを女子会のネタにしたいがために別に気の無い男にも気のあるアピールをする女もたくさんいる。私だってそうだ。別にその男と付き合う気が無くてもなんとなく隙がある女のふりをする。なんとなく「いけそう」な空気を醸し出す。よっぽどその人のことが「マジで無理!」と思わない限り、「押したらいけそう」な空気を出したくなる。そしてそんな空気を出してしまった後で気がつく。「あれ、自分は何をやっていたんだっけ?」と。そうだ。女は何も意識していなくても自然と相手に好かれるような態度を取ろうと振舞ってしまうのだ。女としての本能なのか何なのかはわからないが、可能性をちりばめておきたいと思ってしまうのだろうか。自分のことを気になっている男が複数いるという状況を確保しておきたいのだろうか。よくわからない。でもおそらく本能的に、「いこうと思えばいけそうな女」の方がかわいい、ということをわかっているのだと思う。

だって石原さとみだってそうじゃないか。あんなに顔がかわいいのにさらにその顔でへにゃりと微笑む。今にも「あなたのことが好き!」と言い出しそうな顔で微笑む。いろいろな表情をする。石原さとみの公式LINEをフォローしている人いますか? あれなんて本当ひどいですよ。石原さとみはどこまで小悪魔なんだと思うようなLINEですよ。なんでLINEまでかわいいんだと怒りたくなるほどのかわいさですよ。
でもそうなのだ。石原さとみはただ顔の美しさだけで勝負しているのでは無い。「可能性」も含めて勝負しているのである。別に石原さとみと本気で付き合えると思っているファンは少ないかもしれないが、それでも石原さとみがあれほど可愛く見えるのは、ほんの少しでも「可能性」を感じることができるからだ。石原さとみは「いけそう」な要素をちりばめるのがすごくうまいのだ。女としてのゆるさや、隙や、誰でも受け入れてくれそうな、あの感じ。親しみやすさ。あれも全部包括した「かわいさ」なのである。全く可能性のない人間よりも少しでも可能性を感じる人間の方を好きになる。よっぽどMの人間でない限りはそうだろう。

石原さとみみたいなかわいさを手に入れたいと思う女は今世間にたくさんいるのだからして、そういう「石原さとみ願望」がある女はきっと、自然に隙を見せる行動をとろうとしてしまうはずである。意識しているといないとに関わらず。

なので、女のことは、疑うべきである。疑って疑って疑うべきである。こいつは本当に俺のことが好きか? 本当に大丈夫か? 本当にいける女なのか? と今一度、考えるべきである。ハートマーク一つで勘違いして「何だよあの女なんでハートマーク送ってくるんだよおおお」と泣いてしまってはあまりに気の毒だ。疑え。疑って疑って疑って疑いまくれ。そしてとことん疑ったあとで告白すればいい。
大丈夫だ。もう少し様子を見ても大丈夫なはずだ。もっと戦略を練って女を落とすべきだ。大丈夫。LINEのハートではなく態度のハートを見つけるようにしなければ……。

「いや〜マジでもういけるっしょこれは」
「いけいけ! いったれ!」

隣に座る彼はウキウキと席を立つ。待って。まだだ。早まるな。もうちょっと待ったほうがいいんじゃ無いか?

そう言いたいけれど、彼はもう遠く。ああ、直接言うことなんてとてもできない。

できないから、だから、彼がどこかでこの文章を読んでくれることを、祈る。

ハートマークをやたら送ってくるらしい、相手の女の子に勢い余って告白してしまう、その前に。

***

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2016-12-19 | Posted in チーム天狼院, 川代ノート, 記事

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