チーム天狼院

25歳・プロの作家を目指している私が、夢を叶えるまでにあと何年かかるのか?リアルに検証してみて、衝撃を受けた話。《川代ノート》


こんにちは。天狼院書店スタッフの川代です。
「プロ」と「素人」の違いって、何だと思いますか?
お金をもらっていること。
頼まれて仕事をすること。
大辞林だと、「ある物事を職業として行い、それで生計を立てている人」とでます。
ふむふむ、なるほど。けれども、それ以外にも「プロ」として生活できる人と、「素人」の間には、何か圧倒的な違いがあるのではないかという気がしてなりません。

最近やけに「プロ」という言葉が耳に入ってくるようになりました。何かの運命なんじゃないかと疑いたくなってくるくらいには、「プロ」とは何か、という話題を頻繁に目にします。
近頃は、個人が発信力を持つ時代ということもあって、様々な職業を目にします。聞いたこともないような名前の職業の人もいる。たとえば10年前には、ブロガーやユーチューバーなんていう職業を聞いたことはありませんでした。時代が進化して、職業が多様化してきているのだなあと、ひしひしと感じています。
あるいは、私が今プロの作家を目指しているからそういった情報がよく目につくのかもしれませんが、そういった経緯もあって、「プロ」と「素人」の違いとは何か、ということについて、考える機会が増えました。今年に入ってから、そのテーマに触れる回数自体が増えたように思います。

 

とはいえ、正直に言ってしまうと、私は「プロ」になるということがどういうことなのか、ちゃんと理解できてはいませんでした。そこそこ頑張って、このまま進んでいけば、ある程度は食っていける「作家」になれるんじゃないかと、タカをくくっていたのです。
「プロの作家」として食っていくということを、舐めていたのだと思います。率直に言えば。

その事実に気がついたのは、先日行われた、ライティング・ゼミプロフェッショナルコースでの講義がきっかけでした。
今天狼院のゼミの中でも一番人気で、現受講生は300人以上、述べ受講者数は2600人以上にもなる、「ライティング・ゼミ」の猛者たちが集まるのが、このプロゼミ(長いので、私たちはそう呼んでいます)です。講師である天狼院書店・店主の三浦は、ライティング・ゼミではそれなりに優しいですが、プロゼミの方では、なかなか厳しいことを言います。まあ、プロゼミはプロになることが目的のゼミなので、厳しくないと意味がないのですが、それにしても、まあ、きつい。

で、前回のプロゼミの内容が、私にとっては、ある意味ここ最近で一番の衝撃であり、そして、ターニングポイントにもなる瞬間でした。
その日のテーマは、「本当にプロになるためには、どれくらい書かなければならないのか?」。
このテーマをプロゼミで触れたのは初めてだったのですが、三浦があまりに「みんな、簡単にプロになりたい、プロになりたいって言うけどさー、圧倒的に、書く量が足りないんだよ。とにかく、プロになりたかったら、ただ、書くしかないんだよ」と口を酸っぱくして言うので、だったら、実際にどれくらいやれば良いのかを計算してみましょうと、提案してみたのです。

店主の三浦は、今でこそ経営者、ライター、小説家、脚本家、エージェント、プロカメラマン(本当です)と数々の肩書きを持っているうえに、スキンヘッドにヒゲというなかなかインパクトのある出で立ちをしているので、端から見ると、いかにも派手な成金社長といった印象を与えてしまいがちですが、実は下積み時代が結構長いのです。二十代のほとんどは、アルバイトで食いつなぎながら小説をひたすら書き、ミステリーの賞に応募し続けるという生活を送っていたそうで、それでも結局10年やっても芽が出ず、小説ではなくライターとしての仕事をするようになりました。その後起業して天狼院書店をオープンさせてから4年経った、つい先日の11月9日にようやく小説家デビューをしたという、苦労人なのです。小説を書き始めてから、実に20年越しでした。
だからこそ、自分が死ぬほどやってきたからこそ、そうやって厳しいことを言っているというのはわかるのですが、それでもやっぱり、私の中にはどこかで驕っている部分があったのでしょう。「まあ、そんなこと言っても、別に、大丈夫。私には才能あるし」と無意識的に思ってしまっていたのだと思います。

そんな私の甘さをぶち壊したのは、その講義で行われた、ある検証でした。

「じゃあ、検証してみようか。僕が死にそうになりながら、小説家になるまで書いていた量を、さきが今書いている文章量で、割ってみよう」

つまり、三浦がプロになるまでに書いた量を基準に、私がプロになるまでにあと何年かかるかを、試しに計算してみたのです。

「えーと、原稿用紙100枚だから、これが……」と、次々にホワイトボードに書かれていく単純な数式に、はじめは面白がって聞いていたプロゼミ生たちも、青くなっていきます。
もちろん、私もそうでした。いや、まさか、と思ったときには、ある数字が、信じられない数字が目に飛び込んできたのです。15、と書いてありました。

「単純計算だと、こうなるよね。さき、ほら見て。これ、さきがプロになるまでに、あと何年かかる?」

「え……15年?」

ゾッとしました。

「違うよ。150年だよ」

ひゅっと、変な音が喉から漏れました。
え、いや、150年、って。

「ま、別に僕はいいけどね、150年後にプロになってればいいと思うなら、それでいいよ。あと、まあ個人差もあるから、さきは僕ほどの時間がかからない可能性もある。でもさ、さき、今年何歳になるんだっけ?」

「25です」そう言う頃にはもう、声が震えていました。

「僕さ、25の頃にはもう、新人賞の一次選考とか、普通に突破してたよ。気づいてないかもしれないけど、さきは、もう今の段階ですでに、過去の僕から遅れをとってるんだよ」
ってことは、どういうことかわかるよね、とでも言いたげに、三浦は私を見ていました。

舐めてました。
完全に、舐めてました。
本当に、ごめんなさい。
そう土下座したくなるくらいには、衝撃でした。

「プロになる」っていうことは、甘くない。当たり前です。
それはわかっていたはずなのに、まさか、150年だと言われるなんて、思ってもみなくて。
きっと心の奥底では、私だけは大丈夫と、自分の才能を過信する甘さがあったのでしょう。自分だけは特別だと、天才である自分に期待をして、三浦の言うことを素直に聞いてなどいなかったのです。
けれども、最近になってようやく気がつきました。

プロになるのは、甘くない。
私の周りにいる「プロ」として生きている人を見ると、誰しもが、冗談じゃなく、死ぬほど、本当に死ぬほど行動しているのです。

たとえば、今、私と一緒に働く演劇専門スタッフの中村雪絵。
彼女は、プロとして食べていくのが難しいと言われている演劇業界で、ちゃんとプロの演劇人として働いています。
演出家であり、俳優であり、子役の演技指導なども行っていた彼女は、普段明るく楽しげにしているのでなんとなく誤魔化されがちですが、本当に、プロ中のプロです。
11月26日に公演を控えた劇団天狼院の演出、脚本、舞台の準備と、何から何まで彼女が担当しているのですが、忙しい中でも、とにかく最高の演劇を届けようと、ストイックに自分を追い込んでいます。
毎日寝ずに脚本を書き、稽古をし、生演奏のためのバンドとの打ち合わせなどを行う中で、いかにも具合の悪そうな土気色の顔をして出勤をしてきたときもありました。

「中村さん、大丈夫ですか?」ちょっと休んだほうが、と私が心配して声をかけたとき、クマのある目をこすりながら言いました。

「いや、でもやらないと」

鋭い目が、ギラギラと光っていました。あ、これは、と私は思いました。

「だって、絶対最高のものにするって、決めたから」

そうだ、この目は、三浦さんと同じ目だ、と思ったんです。

三浦が、『殺し屋のマーケティング』の原稿を書いているときでした。青黒い顔をしながらも「こんなんじゃダメだ。絶対に面白いものを作る」と言って、何かにとりつかれたかのように無心にキーボードを打っていた時のことを、私は思い出したのです。
あのときの目と、全く同じ。ギラギラとして、本気で、絶対に自分が成し遂げられるということを、信じている。
そうだ、プロと素人の違いとは、これか、と私は思いました。

三浦と、中村の共通点。それは、自分を信じていること。
自分がこれまでにやってきた、努力の軌跡を信じているということです。

三浦はよく、口にします。

「僕には才能がない」と。そして、こうも言います。「さきは、僕より才能があるのに、どうしてやらないの?」
きっと、自分には才能がないと本気で思っているからこそ、彼は、彼女は、努力するのだと、そして、自分ほど、自分を追い込んでやっている人間はいないと信じているからこそ、プロとしてやっていけているのでしょう。いや、もうそこまでくると、自分を信じずにはいられないのかもしれない。
おそらく、人に面白いと思ってもらえなかったらどうしようという究極的な恐怖心を持てるかどうかが、プロと素人の違いなのだと思います。
そしてその次から次へと溢れてくる恐怖心を消すために、一つでも多く、つまらないと思われてしまう可能性を消す行動を起こす。それが、三浦を、中村を、あれだけのコンテンツメイカーへと押し上げているのだと思いました。

手前味噌になってしまいますが、今私は、ものすごい人たちに囲まれて仕事をしているのだと、日々痛感しています。
こうしてプロの人たちと一緒にいると、自分までもがプロになったような気がしてきますが、そうではない。私は、彼らのいる場所から、はるか遠くに立っているのです。
ならば、毎日、書かなければ。書かなければ。書かなければ。

あのプロゼミの講義があって以来、私の書く量は随分変わりました。現実を突きつけられて、さすがに、何かのスイッチが入ったのかもしれません。
あるいは、『殺し屋のマーケティング』の舞台が、あと一週間を切って、中村が修羅の如く稽古をしている様を、横でまじまじと見ているからかもしれません。
わかりません。原因はわかりませんが、ここ最近の出来事の中で、私に変化が起こりつつあるのはたしかです。
そんなわけで、今のこの熱い気持ちを残しておきたくて、この記事を書きました。

しかし、これで「さあ、今日は書いたぞ!」と満足はしていられません。私は今日このあと、さらに一万字書かなければならない課題が残されています。
正直に言って、ひい、と思います。こんなに忙しい仕事をやりながらさらに書くなんて、そんなことできるわけないだろー! と。

しかし、それでも、今このチャンスを与えてもらえていることを、心底感謝して、今日も書こうと思います。

書かずに死ぬわけにはいきません。

何しろ私は、プロになるまであと150年もかかるのですから。

 

 

 

「受注数世界一の、殺しの会社を創りたいんです」

女子大生、桐生七海は本気だった。

七海はそんな無理難題を叶えるため『最強のマーケティング技巧』を持つ西城に弟子入りする。

 

『営業』ができない。

『広告』も打てない。

『PR』なんてもってのほか。

 

世界一売りづらい『殺し』をどう売るか…。

話題の書店経営者が自ら実践するマーケティングメソッドを惜しみなく公開した渾身のマーケティング小説を舞台化!

感動しながら勉強できる、全く新しいエンターテイメント!

 

【原作】
三浦崇典・著『殺し屋のマーケティング』
※2017年11月9日、ポプラ社より発売

 

【脚本/演出】
中村雪絵

 

【CAST】
結城莉奈/林雄大/糸数恵那/中﨑正人
ナナコ/佐藤奈織美/熊本彩/岡本陽子

 

【公演日時】
2017年11月26日(日)
第Ⅰ部 14:00 開演
第Ⅱ部 18:00 開演

【チケット料金】
前売り券:S席 4,000円(前売り限定)
A席 3,000円
当日券:3,500円

【会場】
全電通労働会館・全電通ホール
住所:〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台3丁目6

アクセス:
JR中央・総武線・御茶の水駅・聖橋口出口徒歩4分/東京メトロ千代田線・新御茶ノ水駅・B3出口徒歩2分/東京メトロ 丸の内線・淡路町駅・A5出口徒歩3分

 

【著書プロフィール】

三浦崇典(Takanori Miura)

1977年宮城県生まれ。小説家。株式会社東京プライズエージェンシー代表取締役。天狼院書店店主。雑誌「READING LIFE」編集長。劇団天狼院主宰。映画『世界で一番美しい死体~天狼院殺人事件~』監督。ライター・編集者。著者エージェント。2016年4月より大正大学表現学部非常勤講師。

NHK「おはよう日本」、日本テレビ「モーニングバード」、BS11「ウィークリーニュースONZE」、ラジオ文化放送「くにまるジャパン」、J-WAVE、NHKラジオ、日経新聞、日経MJ、朝日新聞、読売新聞、東京新聞、雑誌『BRUTUS』、雑誌『週刊文春』、雑誌『AERA』、雑誌『日経デザイン』、雑誌『致知』、雑誌『商業界』など掲載多数。2016年6月には雑誌『AERA』の「現代の肖像」に登場。

 

【脚本/演出家プロフィール】

中村雪絵(Yukie Nakamura)

1985年福岡生まれ。脚本家・演出家・俳優。2002年に劇団ぎゃ。を旗揚げ。2014年解散まですべての作品の脚本と演出を手がけ、2014年以降はフリーランスとなり、放送局主催イベントや文化施設主催公演の演出など幅広く活動している。
(主な脚本・演出作品)
NHK福岡放送局主催「古代エジプトファッションショー」ショー構成・演出
アクロス福岡主催「 アクロス円形工房vol.17 Le Carnaval des Animaux~動物の謝肉祭~」脚本・演出
(主な出演歴)
ギンギラ太陽’s 2011~2015年までほぼすべての作品に出演
他九州圏内の多数の劇団・プロデュース公演に出演
(受賞歴)
E-1グランプリ2006 九州決勝大会 優勝 CoRich舞台芸術アワード!2007 第9位、福岡演劇フェスティバル FFAC企画 創作コンペティション『一つの戯曲からの創作をとおして語ろう!』Vol.1 観客賞

 

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◆第Ⅰ部/A席 14:00 開演




◆第Ⅱ部/A席 18:00 開演




 

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「天狼院のゼミ」をはじめ「部活」や「ファナティック読書会」など、様々な「体験」を提供しています。

 

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2017-11-20 | Posted in チーム天狼院, 川代ノート, 記事

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