チーム天狼院

40代ぐらいのおじさんが、女子大生のわたしより乙女だなんて


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記事:田岡尚子(チーム天狼院)
 
まさか、負けるとは思わなかった。
40代ぐらいの、正直身なりも地味な普通のおじさんに、まさかわたしが負けるとは。
子どもの世話をするのも好きで、中学生のとき職場体験先は幼稚園を選んだし、最近はアルバイトで塾講師だってしている。わりと子どもたちとは、話をする機会も多い。
なのに、それなのに。
もう降参です。むしろ、尊敬します。
わたしは世の中のお父さんたちを、見習おうと思います。
 
「これ、何のキャラクター?」
それは、住宅展示場のバイトの受付をしていたときのこと。
子どもの興味を引くために、受付に色んなキャラクターのお面や、鉛筆、タオルなどのグッズを置いている。「キキララかわいい~! おっピカチュウいいなぁ~」などと社員さんとお話ししていた。
その中でも、見たことのないお面があった。目がクリクリで、カラフルな、妖精みたいな女の子。きっと最近の女の子の間で流行ってるんだろうな。お面の後ろを見てみると、英語でなんか書いてある。
「り……りる、りる、ふぇありる?」
魔法の呪文のようだ。これがこの子たちのグループ名なのか。言われてみれば聞いたことはあるけど、この子たちだったのか。そう思っていたところ、ある女の子たちが、
「あ~! かわいい~!」
とこっちにやって来た。どうやら知ってるみたい。
「おぉっ、知ってるの~?」と聞くと、「うん! ○○って言うんだよ~」とキャラクターの名前を教えてくれた。へぇ~今の子たちの間ではこれが流行ってるのか~そっか~、なんて思っていたら、後から来たお父さんがぼそっと、
「あ、リルリルフェアリル」
そうそう。って、お父さん! そんなすらすら言えちゃうの? てか、知ってるの?! わたしでも知らないのに、40そこらのおじさんが知ってるの?!
……そりゃそうか。子どもがいつも家で見てたら、さすがに覚えてしまうか。と思うと同時に、負けた。と思った。やばい、22歳の女子大生より、40そこらのおじさんの方が今の女の子の流行りわかってる。なんだこの危機感は。いや、たまたま、このお父さんが知ってただけだよね。きっと意識高い系のお父さんだったんだ。キャラクターものなら、わたしだってそれなりに知ってるし、たまたま知らないやつだっただけだ。そう、自分の心をなだめた。
 
あれ、でもこんなこと、前にもなかったっけ。
あの先生も、そうだった。娘を溺愛している、40歳そこらのお父さんだった。「この前娘がね~」といつも嬉しそうに話すのが微笑ましかった。そんな先生が、「次は、このアニメがバズる!」と、授業中にも関わらず、スクリーンにYouTubeで、あるグループの女の子たちが歌って踊って変身する姿を映した。
「み、みらくる、ちゅーんず?」
聞いたことも見たことも無かった。そのアニメが放送されている日曜の朝なんて、大体まだ起きてない。
「歌もダンスもほんとに上手いんだよ!」などと熱弁する先生。娘だけでなくパパまで夢中にさせちゃうなんてすごいな、と関心した。いや、関心している場合じゃない。見なければ。これ以上遅れるわけにはいかない。そう思って、先生に教えてもらった通り、日曜の朝、わざわざ目覚ましをかけて起きた。これで起きる価値なかったら先生に文句言ってやる。なんて思っていたけど、「あぁ、もう終わってしまった」そう思うほどに夢中にさせられた。“小学生向けのアニメ”と勝手に分類していたわたしがバカだった。昔わたしが小さいころに見ていたものとは全く違った。新しかった。大学生のわたしがうらやましくなるほどに、「かわいい! なにこれ!」がつまっていた。
もう、降参です。負けを認めようと思います。おじさんに、女心なんてわからないだろう。歳が近いわたしの方が、上手く相手してあげられるだろう。そう油断していた。私よりおじさんの方が女子力高いなんて、そんなわけないと思っていた。
 
そういえばよく、塾で「先生、そんなことも知らないの?」なんて言ってくる小学6年生の生徒がいたけど。いや、今どきの男の子の流行りなんてわからないし、○○レンジャーとか、何がかっこいいのかさっぱりだし。「まぁ、そんなこと知らなくても、生きていけるから」「先生は大学の授業とかで忙しいから」そう強がって、大人ぶっていたけど。
そうじゃなかった、このお父さんたちを、見習うべきだった。新しくて、かっこいい、かわいい、おもしろいとか、そんなことがたくさんつまっているのは、子どもたちの頭の中なのかもしれない。子どもが好きそうなものなんて、と勝手に大人ぶっていたけど。まさか世のお父さんたちに、気づかされるとは。地味とか普通とか言ってごめんなさい。今度から、日曜の朝は少し早く起きて、アニメ見てみるのもいいな。最近何流行ってるのか、お店でチェックしてみよう。生徒にも、たくさん教えてもらおう。お父さんたちよりも、子どもたちよりも、目を輝かせて。そして次こそは、
「先生、そんなことも知ってるの?」
そう、言ってもらえるために。

 
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