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チーム天狼院

【天狼院書店暴露日記】なんか、しっかりしてますね


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:田中望美(チーム天狼院)

「なんか、しっかりしてますね」

「え!! ホントですか! いや、そんなことないですよ。まだまだ全然で……。でも、ありがとうございます、嬉しいです!」

この間、天狼院書店で働いていた時にこう言われた。
もちろん初めて会って、初めて話したお客様に、だ。

なんか、しっかりしている。
こう言われて喜ぶ人は、この世にどれだけいるのだろう、と私は思う。

私のこの時の喜び度がどれだけだったかというと、もう、とてもとても嬉しかった。超絶びっくりしたし、嬉しかった。そんなことないですよ、とかいいながら、内心お世辞でもそう言われたことが嬉しくて、笑みをこらえきれなかった。生まれてこの方、しっかりしていると言われたことが、記憶に無いほどなかったからだ。

「なんか、しっかりしている」

なんかってなんだ? と、よくよく考えれば突っ込みたくなるような言い方だけれど(笑)それでもこんなに嬉しいのは、私が異様に頼りない存在だからだ。

一人っ子の私は甘やかされて育った。
やりたくないことはやらず、やりたいことだけやりたい。
そんな考え方が根本に植えつけられていて、面倒なことは自分がやりたいこと以外、避けてきたように思う。例えば、相手方のバスケットゴールの前でチャンスボールを待ち、オイシイところだけ持っていくみたいな感じで。ディフェンスやオフェンスもやったほうがいいときはやるけど、基本ゴール下でチャンスボールを待ち、体力を温存しておく。仲間がボールをいいところまで持ってきてくれたら、それを受け取り、ゴールへ。皆でつなげたゴールだけれど、やっぱりゴールを決めた人が讃えられる。私はそんな子供だった。自分が得する方がいいに決まっている、と思っていた。

けれど、そんな話が通用するのはせいぜい中学生か高校生までで、それ以降は、全く通用しなかった。
別に誰が悪いわけでもなく、自分だけ得をしたり、得したいという下心があると、いい顔されなかった。逆にあなたはそれだけ得してるんだから、もう他のものはいらないでしょ、とでもいうかのように、理不尽な損をさせられた。そこで逆らえるほど、その時の私は強くなくて、でも、肝心な私の心の中は得したい気持ちで一杯で、私は急に周囲から「自分のことしか考えないヤツ」だとレッテルを貼られたように感じた。一度貼られたレッテルは、中々剥がすことが出来ない。もしかしたら、私のただの思いこみだったのかもしれないけれど、でも、いつも自分で自分のことをそう思っていた。

だから、大学のサークルの役割や、仕事、会議での意見は全くもって出来なかったし、何より自信がなかった。なんとか勇気を出して踏み出すと、空回りして余計に周りに迷惑をかけた。自分がやりたいと思うことは、自己満足でしかなかったのだ。自分が競技のレースに出れれば、結果はどうなっても構わない。それでチームに迷惑をかける。一度そんな体験をしてしまったら、それが怖くて自分のやりたい、を言えなくなる。私に任せてほしい、その一言が言えなくなるし、何も任せてもらえなくなる。どうせあなたは出来やしない。そう思われるに違いないと、どうしても思ってしまうのだ。

そんな私でも、時の流れには逆らえず、大学を卒業し、社会人になった。
人間関係や信用というものは、社会で生きていく中で、というか、人生を幸せに生きていく中でとてつもなく大切なことで、だけど、自分を押し殺してまで人の機嫌を取るというのもまた違う。そんなことに頭を悩ませながら、時に生きづらさを感じながら、日々過ごしていた。

そんな私をいつの間にか変えてくれた居場所がある。

それが天狼院書店であり、書くということだ。
天狼院書店は、お客様のことをいつも一番に考えている。
こないだも、店主である三浦に「恩を売って忘れろ」と言われた。
私は恩を売るのに見返りを求めてしまうし、何も返ってこないと、ムッとして、もうそんな奴には何もしないと思ってしまう。下手したら、何かしてくれた人にしか優しく出来ない、なんてことも無意識のうちにあるかもしれない。

けれど、天狼院書店の空気を一度吸うと、自分の心の中が一新されたかのようになるのだ。お客様のために。自分以外の誰かのために。
そのために必死になることが、どれだけ素晴らしいことかを教えてくれる。確かに経営していくための戦略はあるけれど、堂々と稼ぐためにも妥協せず徹底したお客様へのサービスを目指し、進化し続けている。
大きな事を言ったが、けれど、やっていること、求められることはとても地道なことだった。

お客様が初来店されたら、不安にならないようにご案内。
店内をいつも清潔に。
音楽が途切れないように。
本棚の整理。
そういった細かいところへの気遣いの積み重ね。

実際に意識して働いてみると、当たり前のことが当たり前にできていないことは、多いと思うようになった。うっかり忘れていたり、これくらい大丈夫だろうと思ってしまうこと。その積み重ねが大きなお客様への不安や信頼度に直結する。
そう教えられて、初めて気がついた。その少しの妥協が、自分のことしか考えていない証拠なのだ、と。

「しっかりしてますね」

その言葉の意味は、多分、私が少しだけ、お客様のためにすることが巡り巡って自分のためになるんだと思えるようになった証ではなかったかと思う。
そのために頑張っていれば、必ず見てくれている人はいる。
上司や先生や、友人、親や、そして何よりお客様に。

出会ってはじめての方だったけれど、私の心には今もずっとその言葉が残り続けている。なんでもない気持ちで言ったのかもしれないけれど、私にとっては、それはもう最高の褒め言葉だったのだ。その言葉で、私はまた少し自信を持てる。

そして、自信作りができるというのは、この天狼院書店で任されている実感があるからだ。
何もない私に任せてくれる。だから、自信作りができる。

気がつけば、絶対にされることのなかった重たい恋愛相談や、将来の相談。頼ってくれる人が、少しずつだけれど、現れるようになってきた。私の書いた文章を見て、感動した、自分はこう思ったとメッセージくれる人が現れた。

この歳では少し遅いのかもしれないけれど、ようやくしっかりとしてきたのかなと思える。だからこそ、そうやって頼ってくれたり、任せてくれるこの場所や人を大切にしていこうと思う。

目の前にいるお客様。
目の前にいる大切な人。
目の前にいる家族。

恩を売って忘れる、なんて中々難しくて出来ないこともあるかもしれないけれど、挑戦し続けなければ、成長もない。だんだんとそれができるようになった時に、多分、それが自分の為になることに繋がり、実感できるのだと思う。

舞台においてもそうだ。
私がコネを作ろうと、舞台練習後の飲み会に行ってもダメだった。偉い人に自分を良く見せようとすればするほど逆効果。選ばれるのは、そんなことなんかせず、自分の芯はしっかり持った上で、相手や作品のために、時には自分のことは構わず真剣にやれる人。いくら関係を作ることが出来たって、そこが出来てなきゃ、まるで無意味だったのだ。自分の浅はかな考えと実力のなさを思い知らされて、とても悔しかった。けれど、そこから学んだことは大きい。これからいくらだって、未熟な自分を逆転できる。

天狼院書店で起こったたった一つのお客様との出来事で、私はまた考えさせてもらった。
まだまだ理想とは程遠いけれど、こうやって奮闘し、少しずつ成長していきたいと思う。
いつも、ご来店ありがとうございます。

***

この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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