メディアグランプリ

顔の皮1枚剥がして、ひらけた世界


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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MIOKO(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「あれ? お母さん?」
接待飲みが続いたある日の朝、ぐったりしながら洗面所の鏡を見ると、母親が映っていた。
いや、違う。母親は一緒には住んでいないし、ここ数ヶ月会っていない。
まぎれもなく、私の顔……のはず。
でも鏡に映る顔には、ほうれい線と目尻に3本シワが入っている。
さらに眉間には、かつて母親が「あんたを怒りすぎて、怒りジワが出来た」と言っていたシワが、私の眉間にも縦に2本くっきりと主張している。
びっくりして目を大きく見開くと、今度はおでこに3本の横ジワが。
 
なんてことだ……。
 
人前に出ることが多い営業という仕事柄、これまで美容には気を使ってきたつもりだ。
化粧品にも、それなりにお金をかけてきた。
デパートのコスメカウンターで肌診断は定期的にやっているが、実年齢を上回ったことはない。
もしかしてこれはもう、化粧品ではどうにもならないレベルなのかもしれない……。
 
慌ててパソコンを開き、Googleの検索窓に次々とキーワードを打ち込む。
〝顔 シワ取り〟
〝ほうれい線 除去〟
〝ボトックス注射 福岡〟
……え? 整形になるのかな。それは怖いな。
ああ、また眉間にシワが寄ってきた……。
 
「何やってるの? 遅刻するよ?」
眉間の縦ジワを伸ばしていると、夫が話しかけてきた。
「いや、顔にシワがさ……。なんで皮膚ってたるむんだろうね?」
 
ちなみに、夫はボディビルダーだ。
ある冬の寒い日に、私が「寒い」と震えていると、
「筋肉が無いからだよ! 筋肉をつけてそこに力を入れれば、全然寒くなくなるよ!」と答える。
またある時にも、私が「肩が凝る。肩揉んでくれない?」と頼むと、
「筋肉が無いからだよ! 肩に筋肉がつけば、肩こりなんて無くなるよ!」と、言ったように、あらゆる問題を全て筋肉で解決しようとする。
いわゆる、筋肉バカってやつなのだ。
 
今回も例に漏れず、答えてくれた。
「筋肉が無いからだよ! 顔の筋肉を鍛えれば、たるみなんて無くなるよ!」
 
はいはい、またそれね。
苦笑しながらパソコンをパタンと閉じ、出勤の準備をする。
 
地下鉄の窓に映る自分の顔を見ながら、顔のたるみについてもう少し調べてみるべく、今度はスマホで検索してみると、こんなワードが目に飛び込んできた。
「顔のたるみは〝顔筋トレ〟で改善する!」
 
……!? お医者さんが言ってる!
今回ばかりは、夫の筋肉最強論もあながち間違っていないのかもしれない……。
 
さらに読み進めてみる。
「顔の表情筋は、頭蓋骨の上に乗っかっているだけなので下がりやすく、その表面にある皮膚もたるみやすい」
なるほど。
「ただ、顔の狭い面積の中に約60個あり、1つ1つが小さな筋肉なので変化しやすく、一日たった2〜3分、1〜2週間続けるだけで変化が実感できます」
 
ナニ!?
私は腹筋を割るのに、丸1年かかったのに、1〜2週間だと……?
 
そこから私の行動は早かった。
すぐに表情筋を鍛えるセミナーを探して通い、たったの90分で顔は劇的に変わった。「一度でこれだけほうれい線が薄くなって、口角が上がる美容法があるなんて……」
私はさらに深掘りして勉強したいと思い、インストラクター養成講座にも通うことにした。
ただ、1つ問題があった。
その講座は4日間缶詰で授業が行われるのだが、私は友達を作るのがそんなに得意ではない。当たり障りのない会話ぐらいはできるのだが、4日間も面識のない人達と過ごせるかが心配だった。
 
でも、いざ始めてみると、そんなことは全く心配する必要が無いことが分かった。
 
というのも、その講座ではいきなり、面の皮を1枚剥がした自分を人に見せないとならない。
顔の筋肉をどんどん動かしていく講座なので、変顔のオンパレードなのだ。顔が筋肉痛になるほど、ひたすら顔を動かす。
全員初対面のメンバーを目の前に、ムンクの叫びにそっくりな顔や、くしゃくしゃな顔をさせられる。
そしてそれを見た相手は、皮膚ではなく、その下にある筋肉がきちんと動いているか注目し、フィードバックしてくれる。
 
よく考えると日本語には、面の皮が厚い、とか合わせる顔が無い、とか顔がテーマになった慣用句が少なく無い。
私達はそれだけ、日々の生活で相手と接する際に顔を意識し、意識しすぎるがあまり自分でも知らないうちに、その場に合わせた仮面をかぶってしまっているのかもしれない。
 
大人になってから、友達なんてできないと思っていた。仮面を被らないでいられる友達なんて、幼馴染と学生時代からの親友の数名がいればそれでいい、と思っていた。
でも、私はその日、背追い込んでいた仮面を脱ぎ捨てた。
 
面の皮一枚脱ぎ捨てて得られたもの、それは一生いい笑顔で笑えるための顔ヨガスキルと、同じ志を持つ仲間だった。
 
最近、顔のたるみやほうれい線が気になってきた方。
目の下のシワのせいで、ファンデーションがうまく乗らない方。
全然怒っていないのに、部下に「何か怒ってません?」と聞かれたことがある方。
なんだか母親に顔が似てきた、と思う方。
そしていろんな顔を背負い込んで、うまく笑顔が作れなくなってきた方。
 
これからどんな顔で過ごすかは、自分次第。
楽しく表情筋を鍛えれば、変化はすぐに実感できる。
 
ちなみに顔ヨガインストラクターになった私の生徒第1号である夫は、今週末ボディビルの大会に出場する。
長い時間をかけて鍛え、絞ってきた体はもちろん、顔ヨガで表情筋をみっちり鍛えたいい笑顔で、きっと最高のパフォーマンスを残してくれる事だろう。
 
これからどんな顔で生きるのかは、自分次第。
だったら、私は自信に満ちた笑顔で過ごす事を選択したい。
 
 
 
 
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2019-10-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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