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『凪のお暇』は、なぜ2019年のドラマ最高満足度を記録したのか


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:和田凪(ライティング・ゼミ秋の9日間集中コース)
 
 
TBSのドラマ『凪のお暇』(なぎのおいとま)がサイコーに面白かった。
9月に終わったのだが、まだ余韻が消えない。
 
コナリミサトさんによる原作漫画は、累計200万部、複数の漫画賞を受賞している。
その原作の良さをうまく引き出していた。
いや、原作を超えていたという声もある。
コンフィデンス誌のドラマ満足度調査「ドラマビュー」では、現時点で、2019年放送ドラマ最高となる99Pt(100Pt満点)をマーク。異例の満足度の高さで終わったのである。
 
主人公の大島凪は、周りの空気を読みすぎる、内気なOL。いつもOL仲間たちのマウンティングにビビりながら、とりあえず「わかるー」と同調するのが癖になっている。自分に全く自信がない凪だが、営業部のエース我聞慎二と内緒でつきあっていることだけが心の支えだ。
ある日、凪は、OL仲間に仲間外れにされたことを知る。さらに「アッチがいいから付き合っているだけ」という慎二のゲス発言を耳にしてしまう。ショックのあまり過呼吸で倒れてしまう凪。彼氏も会社も家もSNSも捨てて、ボロアパートに引っ越し、人生を一からやり直そうと決意する。
アパートの個性豊かなご近所さんたちや、ハローワーク通いでできた親友、オープンマインドな隣人との交流を通じて、もがきつつも成長していく凪の“お暇”の様子がコミカルに描かれる。
 
なぜ、満足度が高かったのか?
私は、視聴者の心を揺さぶるポイントが二つあったと考える。
 
一つめは、高橋一生演じる元カレ慎二の存在だ。
ツイッターでは「慎二やべぇ」がハッシュタグで流行したほど、強烈な印象を残す登場人物だった。「慎二やべぇ」とつぶやきながら、何度もらい泣きしたことか。それはもう、慎二の切なさが「やべぇ」ほど伝わってくるのである。
 
空気をよみまくる凪に対し、「空気って自分で作るものでしょ、読む側になったら負け」と考えている慎二。
会社のプロジェクトを仕切る、同僚との会話を盛り上げる、家族の問題を解決する……。あらゆる場面で気配りができる慎二は、みんなの期待に過剰に答えてしまう。何事もうまくこなすのだが、幸せかというとそうではない。つねに「自分が率先して空気をつくらねば」と考える慎二もまた、プレッシャーを抱え、凪と同様に生きにくさ感じている。その鬱屈したエネルギーが、モラハラ(暴言)となって凪に向かうのだ。
 
ドラマでは、慎二の二面性が原作以上に濃く描かれる。
凪のことを愛しているのに、顔を合わせればモラハラ発言ばかりしてしまう慎二。
別れた後も凪が育てていた豆苗やぬか床を大事にとっておくほど一途なのに、「貧乏くせぇ女」と表現してしまう慎二。
本当はよりを戻したいのに「もう彼女できた」と言ってしまう慎二。
そして、凪の見ていないところで顔をくしゃくしゃにゆがめて号泣する慎二。
慎二、慎二、慎二……! とにかく慎二が切ないのである。
視聴者は、愛情を屈折した形でしか表現できない、不器用すぎる慎二の姿に胸を締め付けられる。モラハラは許されるものではないが、高橋一生の演技が良すぎて、慎二を憎むことが全然できない。視聴者全員、慎二のとりこである。
 
うまく立ち回っているように見える人が、必ずしも幸せなわけではない。
誰にでも抱えている闇がある。人間って多面的なものなのだ。
慎二をみていると、そんなことが伝わってくる。
 
もう一つの見どころは、「母親との対峙」だろう。
凪が空気をよみすぎる性格になった理由は、母親の存在にある。
いわゆる毒親だ。
 
台風の被害を心配した凪が、北海道の実家へ帰ったときのこと。
居間のテーブルの上には、これみよがしに、リフォーム代60万円と書かれた見積もり書が置かれていた。リフォーム代を払ってほしいという、母親からの無言の圧力だ。
それを察した凪。
「やりたいことがあって、そのためにお金が必要だから今は払えない」と一度は断る。
すると母親は「わかった。お母さん周りに頭下げてお金借りる」と、ねっとりした口調で言う。「頭を下げて」に悪意がこもっているのはおわかりだろう。凪の罪悪感をあおる、母親の常とう手段だ。女手一人で育ててくれたという負い目もあり、凪は母親の願いを断れない。
結局、凪は新しい仕事を始めるために必要だった60万円を母親に渡してしまうのだった。
 
私たちは、油断すると、誰かにとって都合のよいストーリーを生きようとしてしまうところがある。
「親が悲しむから、いい子にしよう」
「友達にバカにされたくないから、おしゃれしよう」
「彼氏に嫌われてくないから、黙っていよう」
誰かの顔色をうかがい、誰かのいいなりになる。
そんなことばかり繰り返していると、やがて思考停止になり、自分が何者かわからなくなる。
空っぽの自分が待っているだけだ。
だから、凪の苦しみが痛いほどわかる。
 
ドラマの最終話、凪は母親と決別することを選ぶ。
「嫌い。お母さんが。罪悪感あおって言うこと聞かせようとするところとか、外ではいい人ぶるところとか、自分ではできないようなことを私に期待するところとか」
初めて母親の前で本音を口にするのだ。
 
「期待に応えない自分の方が生きてて楽しい」
 
あなたがあなたらしく生きられないのなら、会社も彼氏も友達もSNSも全て手放していい。たとえ親でも、手放して良いのだ。
 
何かを手放すことがへたくそな日本人の私には、そんなメッセージが突き刺さった。
だから、このドラマは共感を呼び、最高満足度を記録したのだろう。
誰かの都合で生きるのではなく、自分のために生きればよい。
自分の人生は自分で決める。
『凪のお暇』は、当たり前すぎる真理を教えてくれる。
 
 
 
 
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2019-10-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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