メディアグランプリ

「書く」という散歩にでかけてみよう


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:北 花音 (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
天狼院書店のライティング講座に申し込むのに、随分の時間を要した。
Facebookに時々届く謎の講座であったが、ぼんやりと眺めていたある日、「人生を変えるライティング」という文面が目に飛び込んできて、キューっとひきつけられている自分がいた。
キューっとひきつけられたらすぐに行動に移せばいいものの、自他認める優柔不断である私はうじうじと迷い始めることになる。
 
3人の子どもの母親になってから、結婚前にしていた保育士という職にパートで戻った。
それは次男が1歳の誕生日を迎える頃。長女は5歳、長男は3歳。私は「早く働かなければ」という圧力を猛烈に自分にかけはじめた。
主婦業と、まだ母乳を出しながら育児をする中、慣れない土地で就職活動と保育園探しを必死にし、見事、職と子ども達の預け先をゲットした。
 
北陸の女性の兼業主婦率は全国でも上位である。
専業主婦の絶対数は少なく、「ただ飯食い」「ごくつぶし」と言われる風習が昔からある事から、肩身の狭い思いをしている場合が多いように感じる。
そんな扱いはひどい!と思いながらも、北陸うまれ北陸育ちの私の心の底ではその地域性DNAがうずいていたのだろう。
私も例外ではなく、「家事も子育ても上手くこなしつつ、ちゃんと収入もある」そんな女性に憧れ、なりたいと思っていた。……と思う。
 
新しい職場で保育者として子ども達と出会い、年下の職員の子達との楽しい交流があった。
身体を動かす仕事ゆえの肉体的な充実感があり、金銭的余裕ができた。
それらは間違いなく自分の中の何かを満足させていた。
 
自分の子ども達もそれぞれの生活に慣れ、保育園や幼稚園、学童保育に嫌がらずに通ってくれていた。
病気の時には焦ったものだが、職場近くの病児保育に早朝から連れて行ったり、夫と半日ずつ休暇をとったりして何とかやりくりしてしのいだ。
 
そして5年半という月日を駆け抜けた時。
 
ふと「もう嫌」になってしまった。家庭の事情を理由に「えい!」退職願を出してしまったのだった。
 
職場ではキャリアアップし、ボーナスももらえるようになったのに。子どもの行事にも快く休暇をもらえる環境でもあったのに……。
 
職場の人間関係や日々の多忙さが原因ではあったが、結局は私の「逃げぐせ」が出たのだと思う。
 
そもそも自分はなぜこの職についているのだろう。保育士になりたいっていつ思ったのだったか。
そんな疑問を持ち、自分に問いかけている時間がある事に気づいたのはもう随分と前だったような気がする。
 
この道に進んだいきさつは色々あり、決して仕事の内容は嫌いではない。また、充実感を感じられる、素晴らしい職業であると思う。
しかし、思い返してみるといつも「なんとなくやっている保育士という仕事」という思いが私に張り付いていて、「いつ辞めてもいいな、自分には他にもやりたいことがあるかもしれないな」と思いながらこの職業を続けているのであった。
なんと失礼な事か。
 
そして、職場であてにされ責任が増えてきた時、年齢的にもいよいよこの道一筋で生きていく覚悟をしなければ、と思ったとたんに「いや、まてよ」と自分自身にストップがかかってしまった。
フラフラした気持ちのままで、世間でいう働き盛りの40代に突入してしまっている自分がみすぼらしく思えて仕方なかったが、迷った末「一度リセット」という決断をしたのだった。
 
社会人たるもの、多くの人がそうかもしれない。「自分にはもっとやりたいことがあるような気がする」と思いながら日々を懸命に生きているのかもしれない。
それでも歯を食いしばって誰かの為、労働する事が理想であり、乗り越えた先に新たな世界が待っているのかもしれない。
 
ありがたいことに、私には、「どうせならやりたいことをじっくり考える機会にしたらいいよ」という理解を示してくれた夫という存在があった。恵まれた環境である事に、感謝の気持ちは忘れるべからずと自分に言い聞かせている。
 
さて、これからの人生どうしよう、とまるでモラトリアム期のような中年主婦になった。そして「今こそ、これかもしれない!」とまず思い出したのが天狼院ライティング講座であった。
 
今こそと思っていながらも、さんざん悩んでやっとたどり着けた申し込みだったのは、私の性格上仕方がないとして、初めて講座の存在を知ってから約半年後、ついにポチっと申し込みの手続きをしたのだ。
入金手続きをし、後に戻れないところに自分を追いやってみた。
「仕事辞めて何してるの?」「新しい事でも始めたの?」等の元同僚や友達からの問いにまだ胸を張って言えることはなにもない。
 
ライティングの投稿も、自分にとって「まだ早い、無理!」と思っていた。が、挑戦しない事には何も始まらないと自分を奮い立たせてみる。
不思議なことに、書いてみると徐々に自分の胸の奥底にひそんでいたものが溶け出し、吐き出される気がしてきた。そして何よりワクワクしている自分がいることに驚きを感じている。
 
いい歳をしていつまでたっても地に足がつかない自分。未だに自分ってどんな人間なのかと霧の中をさまよっているような感覚に陥ることがある。
「書く」ことで、そんな自分って何なのかを見つけ、次なるステップに進めるのではないかという気がしてきている。
ワクワクした気持ちのまま、「書く」という散歩に出かけてみよう。
さりげない野の花や知らなかった路地を見つけるように、ひとつひとつ「自分」というものを発見し、自覚していきたい。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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