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メディアグランプリ

日本の伝統文化を伝える、着付け師という仕事


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:テラダサオリ(ライティング・ゼミ 特講)

 
 
新宿駅のような人混み、雑踏の中でも、和服を着ている人がいるとついつい目で追ってしまう。
凛とした佇まいで、颯爽と現れるえみこさん。彼女は、着物の着付け家であり、私が通う着付け教室の講師でもある。彼女がどのようにして着物と出会い、そして現在の道へと繋がってきたのか。彼女の言葉とともに紐解いていきたいと思う。
 
「実は、自分が着物を着たいというよりも、人にきれいに着せてあげたいという思いの方が先でした。でも、実際にやってみたらとても奥が深くて。まずは自分がきれいに着られないと、相手にも着せることができないということがわかったのです」
そのため、まずは自分がきれいに着られることを目標に着付けを習い始めた。50歳のときのことだった。
「20歳くらいのころにも一度、半年ほど着付け教室に通ったことがあって。でも、当時の経済力、仕事や家事との兼ね合いから、途中で教室に通うことを諦めてしまいました」
それでも着物は好きだったので、当時は人に着付けてもらって結婚式などに呼ばれたら必ず着物を着て行くようにしていた。
 
そんなえみこさんが再び、着付けを学び始めたのが今から10年ほど前。きっかけはひょんなことからだった。
「知り合いの結婚式に呼ばれていたのですが、ちょうどその日、着物を購入した呉服屋さんでは着付けができないと言われてしまって……どうしようかと思っていたときに、お店の方に『着付けを習ってみたらどうですか?』と言われたのです」
お店の人に新たに教室を紹介されたのが8月に入ったころで、9月初旬にある結婚式まではすでに1ヶ月を切っていた。
「もうとにかく必死で。週に何度も教室に通い、どうにかこうにか自分で着られるようになって。無事に結婚式にも出席できました」
 
その後も、その教室で継続して着付けを習うように。基本的な長襦袢の着方から帯の結び方など、細かいことを習得する過程で、頭で分かっていても体に染みついて“自分のもの”にするまでが苦労したそう。
「自分が満足に着られて、着付け家として人に着せることができるようになるまでは2年以上かかりました。人に着せるときは今でもとても神経を使います。せっかく着物を着ても、着物が嫌いになってほしくはないので。着られる方が苦しくないように着せることと同時に、襟元、帯、裾の乱れなど着崩れないことは絶対。その塩梅が難しいところです」
 
着付けの魅力は、着せ終わって、鏡に映った自分の姿を見て「わあ、きれい!」と声を上げ成人式へ向かう女の子の姿や、年配の人でも「ああ、やっぱり着物はいいわね。着物って思っていたより楽ね」と言ってもらえることなんだそう。
「着物って帯があるでしょ。あの帯をきゅっと締めると姿勢がぴんと正されて。自分で着て出かける際も『さあ、いくぞ!』とスイッチが入るんです」と話す声は、心なしか弾んでいる。
 
そんなえみこさんも、もともとは着物を仕事にするつもりはなかったそう。
「教室に通い始めて2年ほど経ったころ、私の師匠でもあった先生が結婚式場や着付け教室に私をアシスタントとして連れて行ってくれました。その期間は、先生の技を間近で見ることのできる機会でもあってとても勉強になりました。その後、成人式の時期に美容室の方から個人的に声がかかり、1人で担当するようになったのはここ2〜3年のこと。同時に、教室を持ったのも3年前くらいかな。いろいろなタイミングが合って、流れにまかせてきたような感じです」
 
しかし、夫が急逝した数年前に一度、もう着物は辞めようと思っていた期間があった。
「あのときは気持ち的にも沈んでいたしご近所の目もあり、しばらくお休みをいただいていました。本当にこんなことをしていていいのだろうかと。そうして半年ほど経ったころ、ちょうど成人式の前撮りの時期になり、再び美容室からご連絡をいただいたんです、『先生、辞めちゃうの?』って。これはもうやりなさい、ということなのかもしれないと。覚悟を決めました」
こうして、えみこさんは再び着付け家として、また、講師として仕事を再開するようになる。
 
今年1月に行われた着付け教室の新年会で、印象的なできごとがあった。
全国の同じ流派の講師仲間、生徒、着物関係の取引会社などが一同に会する新年会。その会である1人の女性が壇上に上がり、着付けを始めた。その女性は3年ほど前から教室に通っている、全盲の生徒だった。
「そばについている先生は道具を渡すサポートだけ。その場にいた300人がしんと静まり返って、食い入るようにステージを見つめていました。彼女は測ったようにきっちりと着付け道具を並べ、手の感触だけで道具を使い分ける。着方も基本が何ひとつ狂っていない。感覚が研ぎ澄まされている。本当に驚かされた体験でした。そして、彼女の着付けが終わると涙が止まらなくなり。ふと周りを見渡すと、私と同じように涙を流す多くの人がいました」当時のことを思い出しながら話すえみこさんは、少し目が潤んでいるようだった。そして続ける。
「本当に、私は運が良かったのだと思います。何かとタイミングが合って。これからは人の役に立って、いただいてきた恩を返していきたいと思います。そうだ! こんど4月のはじめに地元の伝統的な神楽があって。その巫女さん役の女の子たちのお披露目のときに、着付けを頼まれているんです。よかったらぜひ見に来てくださいね」そう、未来を話す彼女の表情は、とても生き生きとしていた。
 
和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたことや、2020年に東京オリンピックが開催されることから「日本のもの」によりいっそう世の関心が向いているように思う。
近年では、和装婚人気や、入学式や卒業式に着物を着る若いお母さんも増えていて、若い人が着物に興味を持ってくれることは本当に嬉しい、とえみこさんは言う。
年齢に関係なく、1人でも多くの人が自分の生まれ育った国の魅力を伝えられるよう、着物も和食と同様に、再び見直されてきている日本の文化なのかもしれない。だって着物は、脈々と受け継がれる日本の民族衣装なのだから。
 
 
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2018-03-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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