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メディアグランプリ

北海道の人は、考える力がすごい


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:唐土大毅(ライティング・ゼミ日曜コース)

「全然動けない!」
年末、埼玉県にあるスポーツ施設で大学時代の友人とサッカーをした。すぐに息が切れた。思わず叫んでしまった。

大学を卒業する間際まで、週2回は必ずフットサルをしていた。卒業してから1年も経っていないからまだそれなりには動けるだろうと思っていた。久しぶりに会う先輩たちのお腹は、少し出ている。この人たちはきっと動けないだろうから、自分がその分走り回ろう、と心の中で意気込んだ。

全然だめだった。先輩たちの分まで走ろうとか驕っていた自分が恥ずかしくなった。密かに落ち込んでいる私に一人の先輩が言ってきた。
「これからどんどん走れなくなるよ」
私は思った。これが“老い”なのか?

スポーツをしている人間には、少しは共感してもらえると思う。動けなくなる自分になることへの恐怖を。年末の出来事はただの運動不足かもしれない。というよりはきっとそうだろう。しかし、老いとはこういうことだろう。できたことができなくなる。それは運動不足で動けなくなるのも、年を取ったから動けなくなるのも同じだ。少しだけ、老いというものが近く感じた。

できたことができなくなっていて、自分が嫌いになりそうだった。でも老いというのは生きるという行為の中で、必ず付きまとうもの。当たり前。でも、正直耐えられない。生きていく気力をなくしてしまいそう。運動できなくなるのを気にする私以外にも、しわを気にする人もいれば、薄毛に悩み始める人もいる。はたまた物覚えが悪くなり、久しぶりに会う人の名前を思い出せなかったりもする。歯が悪くなり、食べたいものも食べられなくなってしまうかもしれない。考えれば考えるほどに、老いというものに負のイメージが強くなる。

そんな当たり前だけど嫌なものは、他にもある。北海道の冬の寒さだ。私は今年初めて北海道で冬を越す。北海道が寒いのは、周知のとおり。こっちに来るまで具体的な気温は知らなかったが、最高気温が氷点下の日なんてざらだ。雪も降る。車道の白線は見えない。それくらい雪が降る。道路脇に積まれた雪の山は、優に2メートルは超える。それくらい雪が降る。もともと北海道で生まれ北海道で育ってきた人も、「この季節はやっぱり寒いね」と言っている。「雪かき面倒くさいな」とも。いくら北海道の人でも、寒さと雪、この二つは苦手らしい。北海道で暮らす人たちからしたら、当たり前だけど嫌なものはその2つだった。

しかし北海道の人は、私とは違った。そんな当たり前だけど嫌なものを、乗り越える強さを持っていた。

私の職場の方々は、
「今度の休みはスキーしよう」
「仕事終わりにカーリングするのが北海道民でしょ」
と冬を楽しんでいる。
街の中にも楽しそうな光景がある。そりに子供を乗せて運ぶお父さんや雪合戦する子供たち、イルミネーションに出かけるカップルもいる。
これだけではない。
小学校の校庭に水を撒いて、凍らせて、自然のスケートリンクをつくる地域がある。小学校の冬の体育はスケートだそうだ。
部屋の暖房をつけて室温は常時25度とかに保ち、アイスを食べる。わざわざ部屋を暖かくして冬にアイスを食べるなど、関東に住んでいたころには考えもしなかった。北海道で暮らす人の冷凍庫には一年中アイスが入っているそうだ。そのため冬のアイスの消費量は、北海道が全国で一番。

気付いた。北海道で暮らす人たちは、自分の身について回るものは寒さでも雪でもしょうがないと割り切っている。じゃあどうしたら楽しめるか、ということを考える力が北海道で暮らす人たちには備わっている。

その考える強さは人が老いていく過程にも必要なんじゃないか? 体はだんだん動かせなくなっていく。これは避けられない事実だ。じゃあいっそのこと割り切ってサッカーはあきらめる。サッカーほど動かないスポーツに力を注いでみる。ゴルフでも何でもいい。ボウリングならサッカーほどの体力はいらないだろう。それか、身体を動かさなくても楽しいと思えることを探す。映画やミュージカルなど観賞するコンテンツはたくさんある。写真を撮るでもいい。いろんな場所へ行って景色をカメラにおさめたり、旅先で会った人々を撮ったりするのもいいだろう。とにかく自分が楽しいと思えるものを見つけること。これが一番大事なのではないか。

今は少し運動できる体力が減っただけ。行きたいところに行けるし、食べたいものを食べることができる。本当に自分が何もできなくなるまで、おびえながら過ごすのではもったいない。本当に自分が何もできなくなるまで、楽しく過ごしたい。そう考えられるようになると、一瞬一瞬が大切にできる。

きっと、どうしたら毎日を楽しく過ごせるか、を考える力がないから私は北海道に来たのだろう。もう2度と「早く帰りたい」と愚痴はこぼさない。「せっかく北海道に来たのだから、ここでしか味わえない体験をしてから帰るぞ」と今なら思える。

*** この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。 http://tenro-in.com/zemi/66768

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2019-01-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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