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人見知りに効く麻酔とは?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:けんもつ(ライティング・ゼミ土曜コース)

社会人4年目。いい歳して、人見知りが治らない。
自分から話しかけるのが苦手だし、話しかけてもらっても、気の利いた一言が返せなくて会話がすぐに終わってしまう。

だけど私は、自分が人見知りだということを忘れさせてくれる麻酔を見つけた。
それは、一眼レフカメラだ。

一眼レフカメラを購入したのが約2年前。撮った作品をSNSに上げているうち、友人が「結婚式の前撮りを撮ってほしい」と言ってくれた。
嬉しかったけど、焦った。なんせ私は人物写真をほとんど撮ったことがない。

お願いされたからには全力で応えたい。そんな思いで、2人組の人物写真を練習しようと決めた。
そこで思いついたのが、道行くカップルに声をかけて、写真を撮らせてもらおうという作戦だった。
今思えば、知り合いにモデルを頼めば良かったのだが、あの時は張り切りすぎて、すっかり周りが見えなくなっていたようだ。

具体的な作戦はこうだ。ターゲットは酔っ払い。ほどほどに酔った人たちなら、見知らぬ女に「写真を撮らせてください」と言われても快諾してくれるだろう。それに、こちらとしても変に緊張しなくて良いから気が楽だ。
決行は金曜日の新宿。酔っ払いが街に繰り出すことは明白だ。ドリカムも、決戦は金曜日と歌っていたし。

こうして、暖かくなりはじめた4月の金曜日、仕事終わりにカメラを携え、いざ新宿へと繰り出した。

東口を出ると、既に人で溢れかえっていた。
目的地は決まっていた。ゴールデン街。有名な飲み屋街だし、何よりサブカルチャーに寛大なあのエリアは、きっと私の作戦を受け入れてくれると思ったからだ。

靖国通りを渡るため、信号を待っていると、怪しいお兄さんが声をかけてきた。

「こんばんは〜。今なんのお仕事されてますか〜?」

いつもなら無言で小さく会釈して終わりだが、なぜかその日は変に気が大きくなっていて「ニートでーす」と大嘘をついた。
「お金、いっぱい稼ぎたくないですか?」と言われ、「ぜんぜーん」とこれまた大嘘をついた。今日の私ってば、なんかいつもと違う。
調子に乗って、「あ、そうだ、お兄さん撮らせてくださいよ!」とまで言い出す有様だ。
お兄さんはノリノリでピースをしてくれた。お兄さんのノリの良さとは裏腹に、写真はブレブレでイマイチだった。

21時、ゴールデン街に着いた。そろそろ酔っ払いたちが盛り上がってくる頃だろう。カメラを持つ手に力が入る。

だけど、思わぬ誤算にぶち当たった。

誤算1、ゴールデン街は外国人だらけだった。見知らぬ人にモデルを頼むこと自体、ハードルが高いのに、母国語以外でコミュニケーションするなんて、とても無理だ。

誤算2、カップル達は「誰にも邪魔をさせない」とばかりにアツアツだった。これから2人の甘い時間を過ごそうという雰囲気の中、カメラをぶら下げて「すみませーん」と割り込む勇気は無かった。

作戦変更。モデルはカップルに限らず、誰でもオッケー!

手始めに、喫煙所の男性1人と女性2人の3人グループに声をかけてみた。
すると、なんと皆さん写真関係のお仕事をされていて、うち1人はカメラマンとのこと。私はなんて運が良いんだ。人物写真のコツをレクチャーしてもらいながら、写真も撮らせてもらった。

すっかり気が大きくなった私は、どんどん声をかけていく。

中国人の留学生女子2人組。大学生とのことで、日本語がペラペラだった。

ベロンベロンに酔っ払ったお姉さん2人組。
「え〜女の子にナンパされたんだけど〜!」
「酔っ払って顔崩れてるからムリ〜!」
モデルにはなってもらえなかったけど、楽しそうで何より。

路地に立つ学生らしき可愛い女の子。声をかけたら「すみません、今この方のお仕事のお手伝いをしていて……」と隣にいたコワモテのおじ様に目配せしていた。すっかりビビって、もうここでモデルを探すのはやめよう、と引き上げた。おそろしや、魔都・新宿。

その後、東口近辺まで戻ってからが好調だった。
ナンパで声を掛けてきたお兄さん。
会社の同僚だという新入社員女子2人組。
とうとう最後には、付き合って2年のカップルを撮ることができた。当初の目的達成だ。

カメラを持っている間、自分が人見知りだということをすっかり忘れてしまった。
「すみません、友人の前撮りの練習で、写真を撮らせてもらいたいのですが……」と、臆せず話しかけることができたし、モデルさんたちの気持ちを盛り上げようと「あっ! 今すっごい良い感じでした!」だの「2人はいつから知り合ったんですか?」だの、積極的に声をかけている自分がいた。

まるで、手の中にあるカメラが、私の人見知りに麻酔をかけてくれているみたいだった。

冒頭の写真は、私が撮った友人カップルの前撮りだ。
前撮りが無事に終わり、「ありがとう」とお礼を言われたけど、こちらこそ、人見知りを解消するひみつ道具を教えてくれてありがとう。

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2019-01-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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